あらすじ
古代において、内陸アジアを東西にむすぶ交易の要衝として栄えたガンダーラ。仏教の開祖・釈迦牟尼仏陀を史上初めて人間の姿で表したこの「仏像発祥の地」には、一見するとおよそ仏教的ではない、男女の飲酒饗宴や交歓の様子を表した彫刻も残されている。仏像が生まれた国の破戒的・異端的な彫刻は何の目的で制作され、何を意味しているのか。仏教経典や130点超の図版をもとに、美術史と東西文化交流史の蓄積から丹念に検討する。
...続きを読む感情タグBEST3
Posted by ブクログ
田辺理「ガンダーラ仏教美術の謎」(光文社新書)
今のパキスタン北部にあるガンダーラで仏像が始まったと言われている。それまで古代インドの仏教では釈迦を絵や像にするのは避けられていたが、アレクサンダーの遠征後、ギリシア人の影響を受けた同地方で、ギリシア美術の影響を受けて仏像や仏画が描かれるようになったらしい。著者は、仏教寺院を飾る彫刻の中に仏教の教えに反すると思われる飲酒や男女交歓を描くものが多い理由を解明しようとする。これまでは仏教の教えとは関係ない単なる装飾で済ます傾向が多かったという。
著者は、これらはディオニュソス信仰に基づく画像の由来するとしている。ただしギリシア神話の信仰がそのまま残っている訳ではなく、仏教寺院を寄進した当時の在家信者にとっては、涅槃や解脱よりは天界への転生を願う(日本でいう極楽往生)ので方が現実味があること、その天界の生活の楽しさを表現する手段として酒宴や男女交歓のイメージが使われたと主張している。