【感想・ネタバレ】キミトピアのレビュー

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Posted by ブクログ

ネタバレ

書き下ろし3編を含む短編7編。
いずれも相変わらずのスピード感で、ほどよい読み応えもあり、面白い。最近の舞城の描く世界は、何気ない日常が、ふとしたことでどんどん逸脱していって、その逸脱を収束させようと頑張って思考する、という1つのパターンがある。この「逸脱」が、「やさしナリン」だったり「穴食い虫」だったり、「気持ちの搾りかす」だったり、人と人との関係性の中で顕在化するちょっとしたズレにスポットを当てて独特の言葉でその本質を追究していく感じがとても面白い。

 冒頭の「ユートピア=YOUTOPIA」についての記載が、昔あった「ぴあ」の「はみだしYou とぴあ」を連想した人も多かったんじゃないかと思うが、ここにある言葉

 どんなにバカップルのぼわーっと間の抜けた言葉に聞こえようとも、僕はキミトピアを信じていて、そこに住み着くつもりなのだ。
  
っていう境地ってすごい心地よい。

 「ンポ先輩」で出てくる「怪談っぽい世界」。言葉や感情が内包する嘘や間違いから生まれる心の穴に気づいてあげられれば哀しみが減る。
 すべての小説世界に共通して流れているのは、こういう「人と人がすれ違うもとになる目に見えないモノ」であろう。それを「怪談っぽい」と表現する。舞城の小説の中には、解離性同一性障害であったり、強迫神経症だったり、明らかに精神疾患を意識した人物がよく登場すると思うのだが、作者は、これら1編1編の作品の中で、その得体の知れないモノに名前を付けて「気づきやすい」ようにしてくれている。

 だからこそ、この人の作品は妙にポジティブな読後感を与えてくれるのだろう、とそう思う。

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2013年02月10日

Posted by ブクログ

ネタバレ

表題・個々の題名が良い。

【やさしナリン】
人の不幸に対してパニックになってしまい、自分の安全が確保できないほど相手に親切にしてしまう。(お金をあげてしまったりなど)
そしてそれに対して「人に優しくすることの何がいけないの?」とう態度を取る夫。

【添木添太郎】
「神に愛された子」の周りにいると、自然と彼女を助けるように「何か」に利用されてしまう

【すっとこどっこいしょ。】
将来を決められなくて、何にでもなれるように理系も文系も勉強したりしている高校生の主人公。
人生は目標を決められなくても進んで、そのために新しい選択肢が出たりすることもある。友達の彼女の浮気を問いただしたら腹をさされ、それがきっかけで出会う人もいるように。
「なめた高校生」のアピールがすごくて、主人公を全く好きになれない。

【ンポ先輩】
ショックで心に空白ができる。その「空白」が主人を乗っ取って、自分は何者なのかと親しい人につきまとう。

【あまりぼっち】
毎日、「昨日の自分」が自分を訪ねてくるようになる。
何もする気が起きなかった主人公だが、明日もやってくる「これからの自分がつくる昨日の自分」の存在の為に、生きて働いて行こうと思うようになる。

【真夜中のブラブラ蜂】
子供が独立したのを機に、夫から「グダグダしてるの見るのもやだから、なんか始めてみれば?」」と言われて始めウォーキング。
次第に「単にブラブラしたいんだ」と気付き、ついには離婚して世界中をブラブラするようになる話。
アメリカで偶然(子供に言わせればブラブラの運命めいた理由)出会った事件の犯人の描写が怖い。
複数の60代男性の血まみれのチアリーダー姿。

【美味しいシャワーヘッド】
まあいいや、どうでもいいや、みたいな適当な態度では見失うものや見過ごしてしまうことが多すぎるのだ。
気を付けるというのは、言葉通り、気を張って相手に、対象に、寄り添うということだ。
そうせずにいて見失い取り戻すこともできない、それが自分のそばにあったということを知ることもできない

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2013年11月25日

Posted by ブクログ

ネタバレ

第148回芥川賞候補作「美味しいシャワーヘッド」を収録した中短編集。
舞城王太郎さんの作品は初体験。かなりクセのある文体の作家さんだというのは聞いていて、初めてならこれがお薦めと何人から言われたので手に取りましたが……うーん、文体よりも物語にクセがあるなぁ。

7編の物語とも物語が向かう方向に意外性があって、言葉の選び方一つ一つが特徴的。現実の世界で、あまりウチの周りにいないタイプの登場人物でその違和感が時々、イラッとさせられます。

「やさしナリン」は夫婦の物語。人の可哀想に異常に反応してしまう夫とその妹に振り回されながら、関係を再構築していく過程が伺えます。
「やさしナリン」という言葉の選び方が単純に凄いなぁと思いつつ、突き放した見方に同調仕切れず消化不良。

「すっとこどっこいしょ。」「ンポ先輩」「真夜中のブラブラ蝶」は登場人物に受け入れづらい方が登場するので、読んでいると結構苦痛。

一番好きなのは「あまりぼっち」かなぁ。
ある日突然、自分の目の前に現れる"昨日の自分"。別居中の妻子の元に向かうも、その日の晩には"昨日の自分"は消えてしまう。
SFな設定ですが、他人に興味のない今の自分と、消えてしまう不安を抱えた昨日の自分との対比が面白いですね。

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2013年10月14日

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