あらすじ
なぜ、中国では産業革命が起きなかったのか?
習近平・中国が直面する衰退の危機とは?
中国の強大さと弱さを歴史から解き明かす壮大な野心作。
城山智子(東京大学教授)氏解説。
『フォーリン・アフェアーズ』誌 2023年ベストブックス。
中国史の通説を覆し、現代中国の可能性と危うさを解き明かす。
■なぜ中国は、古代以来、人類史上画期的な発明を西欧に先駆けていくつも生み出しながら、経済成長や産業革命に結びつけることができなかったのか? 一方で、現代の中国共産党も歴史上の帝国も、なぜ長期にわたる安定的な専制体制を築くことができたのか?
■本書は、国家の規模、均質性、統治イデオロギーの画一性を意味する「スケール」、行動、思想、政策運営の範囲、不均質性・多様性を意味する「スコープ」というコンセプトを軸とし、試験(Examination)・専制(Autocracy)・安定性(Stability)・科学技術(Technology)という4つの視点「EAST」にもとづき、古代から現代に至るまで、中国の国家としての強大さと弱さのメカニズムを明らかにする。
■また、中国の科学技術史と帝政期の政治にかかわるデータベースに基づく分析を交え、実績主義(メリトクラシー)と経済・技術発展の関係や、専制政治の安定性、多様性と経済発展の関係について読み解く。
■オリヴァー・ウィリアムソンのM型企業・U型企業論、ゴードン・タロックの理論に基づく権力継承問題の分析、儒教とプロテスタンティズムの果たした役割の比較、英国のヘンリー8世と明の万暦帝の君位継承の比較などを通じて刺激的な仮説を提示、中国の盛衰を左右する要因を浮き彫りにする力作。
【内容構成】
はじめに
序 章 EAST(試験・専制・安定性・科学技術)の構成
第I部 試験(EXAMINATION)
第1章 スケール化の道具としての科挙
第2章 中国と中国共産党の組織化
第II部 専制(AUTOCRACY)
第3章 社会なき国家
第4章 専制体制という平均への回帰
第III部 安定性(STABILITY)
第5章 中国の専制がかくも安定しているのはなぜか
第6章 タロックの呪い
第IV部 科学技術(TECHNOLOGY)
第7章 ニーダム問題の捉え直し
第8章 支配の共和国
第V部 EASTモデルの未来
第9章 習近平の中国共産党
第10章 EASTモデルからの脱却?
解説 城山智子
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Posted by ブクログ
科挙、専制、安定性、科学技術=EAST この4つの視点とスケールとスコープの観点から中華圏を理解できる。
スケール(統一=安定の条件)とスコープ(多様性=革新の前提)のバランス
インドは選挙がスケール化の道具。アメリカも多様なスコープが存在するが、選挙でスケールを維持している。
広大な支配領域を統治するには、スコープの最小化とスケールの最大化が必要。これが過去も現在も中国が抱える問題。
科挙は、スコープを縮小して、スケール化を可能する道具。科挙はだれにでも門戸を開き、国家の求める人材の登用を果たした。結果としてスケールに成功したが、代償として優秀な人材が、商業や独立した知的活動よりも国家に適応する道を選択した。
現代中国では科挙は存在しないが、GDPで測られる実績主義(メリトクラシー)を評価の指標とすることで、社会全体をスケール化している。地方分権と中央の統一性を組み合わせた形。
科挙による人材の国家による吸収が、国家を制約する勢力を制御し、専制が続いた。
改革開放期には、権力分散や政治的多様性が生まれたが、天安門事件で、歴史的な専制的構造への回帰が起こった。国家による資本主義の始まり。
中国の専制が安定しているのは、官僚制度へ人材が向かったことと、価値観の共有があったから。
ニーダム問題=中国は早くから科学技術の優位があったのに、なぜ産業革命が起きなかったか。科挙が始まった隋代から発明力が低下していた。スコープの縮小がもたらしたのではないか、という仮説を検証した。
現在の中国で科学技術が発展しているのは、スケールの優位性によるものではなく、海外のスコープの導入によるもの。海外留学や国際共同研究への参加、香港の法制度や金融制度の利用、などによる。
現代中国が抱える問題点は権力継承の危機。歴代王朝の長子相続を採用することは難しい。権力継承のための装置がない。後継者指名の失敗(毛沢東と劉少奇、鄧小平と胡耀邦)から国家主席の2期10年という任期を定めたが、習近平はこれを無視した。実質的には後継者指名の先送り。現職の指導者を強くする措置は、権力継承の装置を弱めている。
米中対立で、中国からのアメリカ留学はハードルが上がった。習近平政権が過去の成功モデルから逸脱して、制度的な組み合わせが変化しているのではないかつつあるのではないか。国家が社会の自律性を抑え込みすぎない関係が必要。
Posted by ブクログ
EAST =試験 専制 安定性 科学技術
秦 短命 スケールとスコープの複雑さ
科挙=官僚機構 →反対派が減少 政治的競争や領土競争も頓挫 →科学技術の遅れ
現在の中国 14億人の思想 価値観 行動の均質化 実績主義 ≠専制≠民主制
中国は政体を装った組織 共産党員9600万人 民間企業に党支部
中国 M型経済 事業部型・情報過多克服 地方自立 ソ連U型 機能的専門化・効率化
中央集権的人事システム GDP寄与度 階層化と手順 少ない規範
専制 組織宗教なし ブルジョア階層なし 大衆の高い識字率
新しい考えや自然現象の探求よりも儒書の吸収
紀元前のシステムの継続 レームダック
大きさがかかわるものへの優位性 AI は手作業と単純作業の上に成り立つ
規模の拡大 質 迅速さ 鉄道 健康コード 監視カメラ
共産党の安定=公理としての正当性と心理的服従
GDP目標より 腐敗の撲滅 成果から行動へ指標の変化 官僚の均質化
民間企業への弾圧 国家統制への脅威
後継者争い 軍事治安機関の介入 環境=経済成長鈍化
権利とは 中国:大多数の最大善 西洋:少数者の保護 自立性