【感想・ネタバレ】にせものラバーズフラット【電子限定おまけ付き】のレビュー

あらすじ

会社員の観月は、誕生日であるイブの夜、路上ライブでバースデーソングを歌う吉野に運命を感じた。会う度に元気をくれる彼に惹かれていったある日、吉野がアパートの立ち退きで街を出るという。どうしても彼の側に居たい観月は、親所有の高級防音マンションの家賃額を安く伝え、ルームシェアの約束を取り付けた。隠し事に罪の意識を感じつつも吉野との生活は毎日が新鮮で慣れない節約も楽しい観月。一方、吉野は観月と対等でいたいのに自分の為に一人頑張りすぎる姿が心配で…!?貧乏ミュージシャン×お坊ちゃま会社員の片恋デイズ!

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Posted by ブクログ

〝ヨシノに触られたい。ギターを弾くキレイな手で(観月)〟

Eros度★★

おやおや。嘘という不純物を一滴落とした共同生活から、これほど純度の高い恋が結晶するとは。実に興味深く、愛らしい観察対象です。

誕生日をひとりで過ごしていた観月は、路上で歌う吉野に救われます。「ヨシノと過ごす時間は僕にいろんなことを教えてくれる」という独白は、音楽の楽しさと恋の芽生えを同時に伝えるもの。やがて住居を失う吉野を引き留めるため、観月は親所有の高級物件の家賃を安く偽ります。善意でも、吉野が望む対等さを損なう嘘。その矛盾を抱えながら「もっと節約。もっともっと節約」と励む健気さが可愛く、胸を締めつけます。

一方の吉野は、生活力と関西弁の柔らかさを備えた世話焼き攻め。観月の行動がすべて自分への好意だと気づき、「あーあ。すっかりこの笑顔に絆されてもうた」と認める変化がたまりません。友達の境界を守ろうとしながら、喜ぶ観月を抱きしめたくなる。欲望を露呈した観月に手を差し伸べ、自分も「どハマりしすぎや」と自覚する展開は、身体が心より先に本音を採取してしまったようで素晴らしい。

しかし幸福な日常ほど、観月の罪悪感を増殖させます。「僕の一言で壊れるんじゃないかずっと怖い」、そして「ただ僕がヨシノと離れたくなかっただけだ」。嘘を正当化せず、弱さまで見つめて謝ろうとする姿には、対等な相手になろうとする成長が表れています。

吉野も隠していた恋心を明かし、「お前のことが好きや」「恋人としてお前と暮らしたいねん」と告げます。観月の「僕も帰りたい。ヨシノと離れたくない」が、二人の望みを鮮やかに一致させるのです。濡れ場でも「してほしいこと全部言うて」と願いを優先する吉野に、観月は「ヨシノが僕にしたいこと全部されたい」と信頼を返す。この甘い応答こそ、二人が辿り着いた対等さでしょう。

偽っていたのは家賃だけ。共に笑った時間も、触れたい願いも、帰りたい場所も本物。片恋と同居とすれ違いを重ね、仮初めの部屋を恋人たちの家へ変える構成に、惜しみない祝福を捧げたい作品です。

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2026年09月16日

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