【感想・ネタバレ】中学生の君におくる哲学のレビュー

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Posted by ブクログ

ネタバレ

 著者は慶應大学文学部教授で、去年まで系列の中学校の
校長先生を兼任していた哲学者。
難しいことを噛み砕き、心を尽くして
子どもたちに語りかけてきた数年間の記録です。
人生を輝かせるために「本当の自由」を手に入れなさい
と繰り返し語られています。

 とっかかりとなる題材は「短すぎるスカート丈」
なぜ勉強するのか」「いじめはなくならない?」など。

『スカートを短くしたい君はなぜそうしたのかな?
他人にかわいいと思われたいからかな。
(略)ゆくゆくはパートナーの彼に出会いたいからこそ、
君はスカート丈を短くしたんだ。
(略)赤ちゃんを産み、育てるのは、
人類の存続のための「命令」だ。
「スカート丈を短くしたい」という君の思いは
そもそも君の自由に属するものでなく、本能の命令によって君はそう思わされていることにならないだろうか』

と、この話は、自由が本物の自由なのかはいつでも疑いうるということ、また自由の及ぶ範囲が自由自身にまで広がっている、という途方も無い問いかけにつながっています。
始業式にいきなり「君のスカートが短いのは本能の命令だ」と聞かされた中学生たちの反応を考えると(笑)

現在の自分の状態で特に心に残ったのは以下です。

『あまりにつらい体験は、消化することもできないまま、
異物のようにそこにありつづける。
それでも、それらとともにしか私たちの人生はないのです』

『ほかの何ものからも命じられたわけではないことを、
自分自身の力で実現する。そうやって自由を手に入れる
プロセスこそが学ぶこと。それはいつか必ずや失われる人生を輝かせるための方法』

 言い回しに独特の味わいがあります。知的刺激を受けると同時に温かい気持ちになる本です。こんなお話が聞ける中学生たちがうらやましいと思いつつ、一度聞いたきりで理解できた中学生はほとんどいなかったのでは、と心配にも。
 文字で出版されたことでお話をじっくり味わい、なぐさめを得たり、勇気を思い出したりするひとは多いと思いました。
また、宇宙のおわりはどうなってるの?といったことを考える仕方を教えてもらえたのも収穫。

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2013年02月28日

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