あらすじ
小学生の頃から各団体に履歴書を送るほどプロレスラーになりたかった竹下幸之介は、念願叶って現役高校生レスラーとしてデビューし、現在は日本とアメリカの団体所属となり、今や日本のマットのみならず、世界から注目されるプロレスラーとなった。2025年で30歳を迎える竹下を、プロレスとの出会いから、小学生の履歴書に唯一返事をくれたDDTとの関係、そして現在までの軌跡を追いながら、彼の激動の半生と「竹下幸之介」という人物を紐解いていく。
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Posted by ブクログ
読んだ感想を噛み砕いて自分なりに考察すると、本書はまさに「人生の教科書」です。
人によって受け取るものは違うと思いますが、特に人生の進路を定めている最中の人や、普段プロレスを見たことがない人にこそぜひ読んでほしい一冊です。
本書の中で、個人的に特に心に刺さったのが以下の2点です。
- 逆算の人生
- 主観的な孤独と客観的な孤独
「逆算の人生」がもたらす圧倒的な行動力
小学生からの夢と実現に向けたステップ
まずは「逆算の人生」についてです。
竹下選手は小学生の頃からプロレスラーになるという夢を抱き、卒業時にはプロレス団体に履歴書を送るほどの行動力に満ち溢れていました。その時は直ぐに叶わなかったものの、中学生の頃には陸上競技で結果を残し、現役高校生としてプロレスラーデビューを果たすという偉業を成し遂げました。「プロレスラーになるためにはどうすればいいのか」を常に逆算し、行動し続けてきた結果です。
25歳での転機と世界への挑戦
特に印象的だったのは、25歳の時に占い師から「プロレスラーとしての全盛期は32歳」と告げられた際のエピソードです。
普通の人であれば、「あと7年もあるから、とりあえず頑張ってその時を待おう」と守りに入ってしまいます。
しかし彼は、「それまでに自分を高めなければならない」と捉え、そのタイミングで積極的に海外へ飛び出しました。国内のDDTから単身武者修行に出て挫折を経験しつつも結果的にアメリカのメジャー団体AEWと契約。さらに日本の新日本プロレスにも逆輸入という形で参戦し、史上初となる主要3団体同時所属という前代未聞の快挙を成し遂げました。
プロレスをよく知らない人にとっても、この「日本から世界、そして国内最高峰へ駆け上がる」というスケールの大きさと行動力は圧倒されるはずです。
「主観的な孤独と客観的な孤独」
ジェーン・スーさんの表現から読み解く「視座の違い」
もう一つの「主観的な孤独と客観的な孤独」は、本書を読んで私が独自に考察したポイントです。
竹下選手が新日本プロレスのシングル最強決定戦「G1 CLIMAX」優勝後のドキュメンタリーで孤独について少し語っていましたが、ここまで深くその内面を明かした姿は初めて見ました。
もともと「孤独」とは、周囲から孤立している人や、文字通り「1人で生きている状態」を指す大雑把なものとして捉えがちです。
しかし、この本を読んでその見方が少し変わりました。
ジェーン・スーさんとの対談の中で、スーさんは竹下選手について「一般人の持つプロレスへの視力が1.5だとすると、竹下選手は3.5ある」と表現していました。ファンから見れば、竹下選手は身長190cm近くの巨体に筋肉隆々、国内外でのめざましい活躍や圧倒的な存在感から「スケールの大きい選手」と映ります。しかしスーさんは、それを単なる体の大きさではなく「視力が良い人」と表現しました。
孤高の道を切り拓く竹下選手の姿
彼が見ている世界は、他の選手とも、ファンとも違います。圧倒的な「視力の違い」があるのです。
逆算の人生を歩み、人生の節目を自分で設定しては達成し、またさらに遠くのピリオドを置いて達成する。誰も経験したことのない道を1人で切り拓き、孤独の中で戦い続けているからこそ、彼はそこまで見えているのだと強く感じさせられます。
竹下選手の孤独は、単なる寂しさではなく「物事を見る解像度ゆえの孤高」です。
前人未到の世界で闘い続けるアスリートの覚悟と、その裏にある底知れない孤独に触れることで、物事に対する視座やアプローチの仕方を深く考えさせられる一冊でした。