あらすじ
父の影響で過剰にきれい好きになった日下部朝陽は、東京の民間清掃会社で契約社員として様々悩みを抱えながら働いている。ある日、隣の部屋に住む佐野友笑の部屋がゴミで溢れかえっていることに気がつき、驚く朝陽。物を捨てられない友笑は、ゴミを集めてはアート作品を作っていた。二人の距離はいつしか縮まり、目の前に立ちはだかる壁をひとつひとつ乗り越えていくが――。片付けたい男と片付けられない女。正反対の二人の、未来に希望がじんっと灯る成長物語。
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Posted by ブクログ
区から業務委託を受けて家庭ゴミの回収を行う民間の清掃会社で働く日下部朝陽は、育った環境のために神経質といえるほどのきれい好きで、自身が住むマンションの部屋を極度にモノのない清潔な状態に保っている。
ある日朝陽は、隣室に住む佐野友笑の部屋がゴミを集めて溜め込んだ"ゴミ部屋"であることに気づく。
人が生きていくうえで欠かせない"ゴミ"のこと。
捨てられた"ゴミ"に執着してしまう友笑と"清潔さ"に囚われすぎた朝陽の"ゴミ"への向き合いかたや人生への向き合いかたに考えさせられた。
人は、"ゴミ"を出さずにはいられない。"ゴミ"に対して無責任になるのではなく、"ゴミ"を回収してくださる職員の方々へのリスペクトを忘れてはならないと教えてくれる一冊だった。
亡くなった妻が愛用していたマッサージチェアをゴミにだした男性へ、朝陽の職場の同僚が語った一言にジンときた。
ー「日本人って、よく物にも魂が宿るって考えるじゃないですか」賢人が手に作業用のグローブをはめながら、旦那さんに言った。「それってあながち嘘とも思えなくて、我々作業員は、捨てられる物とかゴミに、よく表情があるよねって話をするんです。長年、ゴミに接していると見えてくるんですよ、自然と」
旦那さんがうなずきながら、チェアの背もたれに手をかける。この人も、つい最近奥さんの骨を拾ったのだろうと朝陽は思った。
「気休めで言ってるんじゃなくて、このマッサージチェアはとっても安らかな顔をしてますよ。ここまで大事に使ってもらって、感謝している表情です。丁重に運ばせてもらいます」
(p .255)
Posted by ブクログ
孤独と向き合うきっかけを与えてくれる小説。
そして、誰もが心に響く内容がこの小説にあリます。
自分の育った環境を王国と例えるのがとても新鮮でした。
また、自分の国を作り民をどのように扱っているか、独裁国家になっていないかなど面白い表現でした。
ゴミアートの作品も魅力的で心にグサっと刺さります。
正直、MVを観てみたいとさえ思います。
自分自身、ミニマリストですが、モノとの向き合い方に共感もします。
とにかくこの本からたくさんの気づきや改めて大切なことを学んだ気がします。
正直、全ての人に読んでもらいたい小説です。
何より心が温かくなります。
Posted by ブクログ
孤独を埋めるための方法は、人それぞれ。真逆の存在だと思えた2人の部屋も、実はどこか似たような境遇が土台となっていることに気づき…。自分も他人も否定しないことで、新たなスタートラインを見つけた登場人物たちにエールを贈りたくなる一冊です。
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そこそこに片付いた部屋で生活したいけど、油断するとものが増える。よくよく考えて持ち込まないと捨てるのが大変なんだよね。相反する二人のようで抱えているものは似通っていたのかも。それを理解した上での付き合いなら長く続けられそう。
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ごみ収集の仕事に就いていながら、自宅の部屋はチリひとつ落ちていない潔癖症・ミニマリストの朝陽と、不用品を次々と部屋に持ち込んで半年足らずで汚部屋にしてしまった友笑が、アパートの隣同士であることが判明する冒頭。
普通ならばお互い関わりは持ちたくないはずだけど、小説なので、どうして2人ともそうなったのか、半生が語られます。少しずつ歩み寄る中で、特に汚部屋の解消に近づいていく過程が描かれます。ほとんど想定内のストーリーですが、何故読んだかというと、わたしの部屋も友笑さんほどではないけど、汚部屋だから。
でも、結局参考にはなりませんでした。
2人とも、やはり両親の影響が大きくて、潔癖症も汚部屋も、孤独な何かを埋める作業の様な気がするのです。わたしと全然違います。
ただ、「ゴミの出し方が人格を形成する」という指摘にはビクとしました( ºωº; )。
‥‥‥‥きちんと使うかどうか先のことを考えて物を買って、なるべくゴミを少なくして、しっかり分別して、朝起きて出してっていうさ、そういうすっきりした日常を送れることが、心の健全さにもつながる‥‥‥‥
反省します。頑張ります୧(・ᴗ・*)୨⁾⁾
Funyaさんのレビューで本書を知りました。ありがとうございます♪
Posted by ブクログ
ゴミ収集の大変さは、想像以上だなと感じる。尊敬しかないのに、悪態をつく住人に腹が立つとともに、小学生からゴミ収集の大変さをもっと教えるべきだと思った。
粗大ゴミの問題は人ごとでなく、ソファーを買い替えたいと考えているが、リサイクルできないゴミになるかなと躊躇してしまう。
Posted by ブクログ
主人公はゴミ回収の作業員。潔癖症の男性。
隣の部屋は汚部屋で、住人は女性。彼女がゴミを拾ってきて部屋に溜め込むようになった事情が悲しい。
終盤に、主人公以上に潔癖症な父親が家出した妻を迎えに行き
「いっしょに、粉をまきちらそう」
と言うところが良い、と思った。
Posted by ブクログ
お仕事小説かと思いきや、
そんな単純な話ではない。
でも、ゴミと人間の関係、
身につまされました。
ゴミって、人生の縮図だな。
出るものは仕方がないが、
捨て方は考えないとなあ。
Posted by ブクログ
読み始めて真っ先に感じたのはゴミ清掃員の方々への感謝。
今日からゴミを減らす事を心掛けようと思った。
本作の主人公は、ゴミ清掃職員として働く日下部朝陽。
朝陽は超潔癖症で「片付けたい男」。
だが隣の部屋に住む佐野友笑は「ゴミを拾って来る女」。
部屋はゴミで溢れかえり足の踏み場もない。
そんな真逆な二人がゴミをきっかけに自分自身を見つめ直していく。
外からは窺い知れない二人の生い立ちと苦悩を知ると、簡単に潔癖、ガサツとは言えなくなる。
少しずつ歩み寄り、距離が近づく二人の様子が微笑ましかった。
ゴミ問題にも警鐘を鳴らす一冊。
Posted by ブクログ
潔癖症のゴミ清掃職員朝陽と、深夜のコンビニ工場で働きゴミだらけの部屋に住む友笑、二人の再生と成長の物語。
現代人の抱える孤独や寂しさが描かれていて、当初思っていたよりずっと重みのある話だった。
正反対の部屋に住む二人が、少しづつ踏み出し変わっていく姿に、応援する気持ちになり、ラストは掃除後のようなスッキリした気持ちになった。
みんなが違う価値観を持っていることは当たり前だと思いながらも、パートナーとはどちらか一方の価値観に合わせるもの、という矛盾している考えを持っていることに気付いた。
Posted by ブクログ
初読み作家の朝倉広景さん。
表紙にほっこりしつつ、内容は重めだったけど、
サラッと読むことが出来ました
私も友笑に近い感じで、汚部屋だったけど
少しずつ捨て活しました!
小説を読んだ後、更に捨て活意欲が高まりました
朝陽のようにミニマリストにはなれないけど、
お部屋を過ごしやすいようにしたいと思う…
Posted by ブクログ
ゴミ清掃を美化した感じですね。
片付けれない人の理由を考えると現実的では無かったと思いました。
小説ですね。
それで全てが、許される気がします。
Posted by ブクログ
私もどちらかというと片付けられない側の人。確かにいったん物を家にいれると愛着ができて捨てられない。片付けたい側の気持ちを知るという意味で興味深かった。
物を買う、捨てるということをあらためて考えさせられた。
Posted by ブクログ
潔癖症で片付け魔の男とホーディング障害で整理整頓ができない女。相容れない2人がアパートでお隣さん同士になってしまった。
ひょんなことから親しくなった2人だったが……。
正反対の2人が、互いに関わり合うことで自己を見つめ直し、やがて過去の自分と訣別するまでの姿を描く、ハートウォーミングな成長物語。
なお物語は、主人公の日下部朝陽の視点で展開する。
◇
住宅街を走る収集車から飛び降りてはゴミ袋を車体後部のプレス投入口に投げ込む。朝陽が週5日行う作業だ。同じ曜日に同じルートで行う収集作業。勤めてまだ1年の朝陽でも、無限ループの世界に入ったような気になってしまう。
午後4時。仕事を終えアパートに帰り着くや、朝陽は靴を靴箱にしまい、部屋はルンバに走らせる。さらに薄めたハイターに作業着を漬けると浴室に直行。頭も身体も念入りに2回洗う。ゴミの臭いをわずかでも残したくない。そして風呂から上がり作業着をすすぎ洗いしてから洗濯機に放り込み洗剤を投入してスイッチオン。
予定通りの行動に満足しながら、朝陽は清潔な服を着てエコバッグを手に夕食の食材を買いに行く。これがルーティンだが、この日はいつもと違った。
玄関ドアを開けるとガラガラと大きな音がする。見ると、隣室の佐野さんが台車を押してアパートに帰ってくるところだった。
佐野さんは名を友笑と言って、半年前に隣室に越してきた若い女性だ。丁寧に菓子折りを持って挨拶に来てくれたし、夜も静かな暮らしぶりで好感を持っていた。
けれど今、彼女が押す台車には不審なものが積まれている。ひび割れたPCモニター。外側がドロドロに溶けた電気ケトル。他にも使用不能としか思えない生活家電がいくつもある。極めつけは大きなゴミ袋に詰め込まれたたくさんのペットボトルだ。
朝陽の怪訝な視線に気づいた佐野さんは、「あ、これ、ゴミです」と言って無邪気にゴミの説明をしたあと、それらを部屋に搬入するべく自室のドアを開けようとしたが……。
( 第1章「隣の汚部屋」) ※全7章。
* * * * *
潔癖症の人は身の回りにも結構います。
物は決まったところにきちっと片付いていないと気になる。外から帰ったら ( たとえ職場であっても ) まず手洗いしなくては気がすまない。毎朝、自分のデスクをきれいに拭いてからでないと仕事をする気にならない。そんな少し神経質かなと感じるような人たち。
朝陽はそれよりも強い潔癖症です。
人と同じスリッパは履けない。人と同じ鍋や皿の料理は取り箸が用意されてないと食べられない。食べ物カスや飲み物の雫などがテーブルや床に落ちることに耐えられない。
病的とまではいかないのですが、その一歩手前ぐらいではないかと思えるほどです。
また、物を捨てられない、整理整頓ができないという人も同僚に何人かいました。デスク上やその周辺がすごいことになっていて、作業スペースを作るのに毎日とても苦労していたのを覚えています。
佐野友笑はそれだけでなく、さらに不用品まで拾ってくるという末期的な状態で、ホーディング障害と呼べるレベルに来ています。
朝陽と友笑の部屋は2階建てアパートの1階にあり、ベランダの代わりに専用庭がついています。隣の庭との境目には目隠しの塀があり、朝陽でも背伸びしない限り覗けないようになっています。
けれど、友笑のゴミ搬入を手伝って玄関の中を見てしまった朝陽は、隣室全体が気になって仕方ありません。彼が目にしたのは奥の方から玄関近くまであふれるゴミ。
壁一枚隔てた向こうに大量のゴミが詰め込まれていると思うと、潔癖症の朝陽は居ても立ってもいられないのです。
ついに我慢できなくなり友笑宅の庭を覗いた朝陽が見たものは ⁉
と序盤からなかなか衝撃的な展開で、先を読まずにはいられません。また、ゴミ処理についてのリアルも詳細に描かれていてとても勉強になりました。
さて、朝陽と友笑についてです。
2人に見られる、通常から少しばかり ( かなり? ) 逸脱した行動。それはとりも直さず精神的な偏りからきています。その生育過程で培われた強い観念に2人は縛られていると言えます。その束縛から解放されるための行動が後半の中心テーマでした。
解放に向けてポイントになるのは朝陽と友笑の共闘です。1人ではどうにもならなかったことでも2人なら立ち向かう勇気が湧く。清潔に対するスタンスが正反対の2人を結びつけたもの。それは……。
思いも寄らない展開でしたが「なるほど」と思ってしまうところもあり、気づけば夢中で読んでいました。
共闘の甲斐あって朝陽の超潔癖症と友笑のボーディング障害は、それぞれ緩和されたでしょうが、それでも2人の清潔観がピタリと合うところまではいっていないと思います。
おそらく結ばれることになる朝陽と友笑。これからも互いに受け入れあい譲りあいながら幸せを築いていってくれることを願っています。
Posted by ブクログ
潔癖の家庭で生まれるも反発するかのようにゴミ回収の仕事についた男性とゴミの中から発見され、ゴミ屋敷で生活する女性がひょんなことから出会い、生活するように。互いのこれまでの人生から訣別を果たす。
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あめつちのうた、やエールはすっごく良かったですが今回はどうしてかパーツが雑に散らかってて、伝えたかったことが伝わってこないようなもどかしい展開が最後まで続く。何一つ決まらないままの終章で残念です。
Posted by ブクログ
朝陽、友笑、ミント、三人が不器用ながら関係を深めていく青春物語。
あるいは、子どもたちが「生まれた家」、家族の環境を一度壊し、再生していく物語?
一応そんな風にまとめられるだろうか。
主人公の朝陽は清掃会社に勤務している。
しかも、育った家庭環境のために、極度の潔癖症なのだ。
なかなか異色な設定だ。
けれど、これがとても面白い。
人が暮らす限り、ごみは排出される。
しっかり分別している人もいれば、ひどい状態のごみを平気で出してくる人もいる。
それを感情を殺して清掃している人がいる。
お疲れ様、とねぎらう人もいれば、暴言を吐いたり、ああはなりたくないと聞こえよがしに言ったりする人もいる。
朝陽やミントたちが働いている描写を読んでいると、ごみを出さないではいられない私たちの暮らしって何だろうと思えてくる。
清潔の国の朝陽と対極にある友笑。
彼女は不倫相手に捨てられた母親から、捨てられるという過酷な生い立ちを持っている。
そのせいで、町中に捨ててあるごみに感情移入する。
それを拾い集めて「ゴミの国の住人」を作っていく。
さみしい人の家はごみ屋敷になるのだろうか。
物語では、友笑もアーティストとして自立して汚部屋を脱していくような方向が見えてくるが…。
実際はどうなのだろう。
全体としてはやさしい心の登場人物が多く、温かいトーンなのだが、何かチクリと心に残るものがある。