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Posted by ブクログ
面白かった。
珍しく中小企業診断士が活躍する物語。一般的には中小企業診断士というよりコンサルティングといった方が伝わりやすいと思うが、あえて中小企業診断士とすることに作者のこだわりを感じる。
取っても食えないとバカにされがちな中小企業診断士の資格であるが、その仕事ぶりがわかるお仕事小説。純粋に中小企業診断士が活躍する話はほかで読んだことなかったので、素直に嬉しい。
物語は3つの短編からなる。それぞれに問題を抱えた会社が舞台になっている。後継者を長男にするか次男に悩むパン屋、無能な部下しかいないと悩むバックメーカー、先代社長の急逝により外資系企業に買収された包丁製造業。型やぶりな中小企業診断士である北川が、ちょっとしたアドバイスを与えながら、それぞれの問題の解決の手助けをしていく展開の仕方である。ただし、直接的な解決策の提案はしない。こんなことをやってみてはどうですか?とアドバイスするが、それにより、社長や社員自らが大切なものを気づいていく。結果的に課題の解決につながっていく。
今まで見えていなかった自分の子供たちの能力や得意な部分、無能だと思っていた社員の会社への熱き思い、自社の誇るべき職人の技術、社員の誇りなどなど。一面的な見方により気づいていない良い部分に、別角度の見方により見えてくる大切なもの。それに気づかされていく展開が、読んでいて心地よい。
そう、中小企業診断士は気付きを与える仕事なのだ。面白い。
中小企業診断士の北川が型破りの提案を行なっていく展開はいくらでも描きようがあるので、続編を期待したい。
全中小企業診断士が読むべし。良書。