【感想・ネタバレ】私労働小説 ザ・シット・ジョブのレビュー

あらすじ

「あたしのシットはあたしが決める」
ベビーシッター、場の夜間作業員にホステス、社食のまかない、HIV病棟のボランティア等。「底辺託児所」の保育士となるまでに経た数々の「他者のケアをする仕事」を軸に描く、著者初の自伝的小説にして労働文学の新境地。

「自分を愛するってことは、絶えざる闘いなんだよ」
シット・ジョブ(くそみたいに報われない仕事)。店員、作業員、配達員にケアワーカーなどの「当事者」が自分たちの仕事を自虐的に指す言葉だ。
他者のケアを担う者ほど低く扱われる現代社会。自分自身が人間として低い者になっていく感覚があると、人は自分が愛せなくなってしまう。人はパンだけで生きるものではない。だが、薔薇よりもパンで生きている。
数多のシット・ジョブを経験してきた著者が、ソウルを時に燃やし、時に傷つけ、時に再生させた「私労働」の日々、魂の階級闘争を圧巻の筆力で綴った連作短編集。
■声を出さずに泣く階級の子どもがいる。
■水商売では年齢と美醜で判断されて、失礼な言葉や態度を許容することでお金を貰う。失礼を売り、失礼を買う。失礼は金になるのだ。
■何かを感じたり、ムカついたりする主体性のある存在として認識しない者は、相手の賃金だけでなく、人間としての主体性さえ搾取している。
■革命とは転覆ではなく、これまでとは逆方向に回転させることなのかもしれない。

【目次】
第一話 一九八五年の夏、あたしたちはハタチだった
第二話 ぼったくられブルース
第三話 売って、洗って、回す
第四話 スタッフ・ルーム
第五話 ソウルによくない仕事
第六話 パンとケアと薔薇
あとがき
※本書は「小説 野性時代」2021年4月号、22年1月・5月・9月号、23年1月・5月号に掲載された作品を書籍化したものです

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Posted by ブクログ

ネタバレ

どういった経緯でこの本をリクエストしたのか記憶がないが、面白かった。
英国は階級社会だという事がよく分かる。
貴族とレイバーは明確に線引きされ、差別が横行している。差別が残っている限り、英国の未来は明るくないと思う。
企業の弁護士は、企業の役に立つけど、人の役に立つとは限らない。
書類やコンピューターや電話を相手にして仕事をしていると、人間を相手にした仕事がしたくなるんだよね。人間の仕事というか、人間にしかできない仕事がね。

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2024年05月05日

Posted by ブクログ

ネタバレ

なんか急に核心をついたりするので、驚いた。

〈第三話 売って、洗って、回す〉
何も考えず、何も感じない。
それは全体のPIECE(欠片)になることによって得られる究極のPEACE(平和)。

〈第五話 ソウルによくない仕事〉
あなたが自分を愛してないのが仕事のせいなら、やめたほうがいい。自分を愛するってことは、絶えざる闘いなんだよ

自分のソウルによくない仕事はやめるべき

〈第六話 パンとケアと薔薇〉
ケアというのには双方の人間が必要なんだ。ケアする方とされる方、双方の人間がいてポジティブな精神的電波が生まれる。この電波こそが、人間が今日まで生き延びてきた原動力になったというは人もいる

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2024年02月03日

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