【感想・ネタバレ】レトロ喫茶おおどけいのレビュー

あらすじ

東中野の商店街にひっそりと店を構える〈喫茶おおどけい〉。昭和レトロなその喫茶店には、今日も悩みごとを抱えたお客さんが、偶然訪れる。元気で優しい老店主ハツ子と物静かな孫のハヤテ、二人のあたたかな接客に後押しされて悩みを打ち明けると、店の大時計が不思議な鐘の音を響かせ、店内の時が昭和時代へ巻き戻る。クリームソーダ、オムチキンライス、ミルクセーキ……絶品喫茶メニューと大時計がつなぐ過去が、生きづらさを感じるお客さんたちに前を向く力をくれる。懐かしくてほっとできる、五つのあたたかな物語。

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感情タグBEST3

Posted by ブクログ

大好きな1冊に仲間入り。
読んでるだけでホッとして、前向きになれるようなお話だった。
それぞれの主人公たちの悩みが絶妙に共感できるものばかりで、それも没入できた要因かも。
いいな、東中野の喫茶おおどけい、行ってみたい。
ハツ子さんみたいな行き方をしたいと思った。

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2025年07月05日

Posted by ブクログ

涙が出るほど、胸に染み渡る言葉がたくさんあった。
喫茶店の雰囲気、とびきり美味しそうに想像されるメニューの数々、ハツ子さんの過去の物語が人々の心に気づきや光を灯していて、読んでいて幸せな気持ちになった。心にストンと落ちてきて、涙が溢れた言葉があった。もう一度、何度でも読もうと思いたい、だからあえてその言葉は何にも明記しない。
わたしの不安も、焦りも、息苦しさも、包んでくれる一冊だった。

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2025年03月17日

QM

購入済み

表紙のかわいいこと!!!
そして中の話も最初は気づかなかったけど、読み進めていくうちに「あれ、そういうこと??」みたいな笑
おもしろかったー!!

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2024年09月25日

Posted by ブクログ

可愛らしい表紙に思わず手が出た笑
内容はファンタジーな感じだけど、身近にある悩みや生きづらさを抱えた人達が喫茶店で不思議な体験をする。体験後は問題解決という訳ではないけど、そっと背中を押してくれる優しさがかえっていいと思った。

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2024年05月21日

Posted by ブクログ

ネタバレ

この本を読んでいるわたしは現代にいるのに
まるで自分が過去にタイムスリップしているかのような体験ができる本です。
本の中に出てくる喫茶店のメニューも
いただいてみたいと思いました。

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2024年02月10日

Posted by ブクログ

読み終わった今は、胸がぽかぽかするような気持ち。
悩める人を助けてくれるおおどけい。
こんな人に寄り添いのできる喫茶店にいつかわたしも巡り会いたいな。
ミルクセーキがとっても気になってしまった。

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2024年01月25日

Posted by ブクログ


 疲れた心にほっとするひとときを。レトロ喫茶おおどけいは、悩みを抱えた人々が引き寄せられる癒しの場だ。昭和レトロなメニューが最高だ!不思議な力を持つフロアークロック、タイムスリップ、そして店主のハツ子さん、孫のハヤテがいいキャラだ。「幸運のお茶とお菓子」がお気に入り。『栄一』さんの活躍が気になる。

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2025年08月11日

Posted by ブクログ

悩みを抱えた人達が訪れる不思議な大時計のある喫茶店のお話。
ハツ子さんの人柄、こんな喫茶店あったら訪ねたいなぁと思います。
色んな悩みを抱えた人達、その人達の思い出の料理。
読んでいても、うわー、いいなぁ。美味しそうって思ったり、料理っていいですよね。
心を癒してくれるし、思い出の料理なら尚…


ー記憶は無くしても、気持ちは忘れずにいる

夢は自然に湧き上がってくるものだと思います。だから‪”‬‪ないときはない”‬ でいいじゃないですか。

人間は往々にして自分のことしか考えていない。でも、自分以外の人のために一喜一憂できるってとびきり幸せなことなんですよ。

わたしの心に響いた言葉です。

この本を読んだら、なんだか背中を押してもらってホッと温かいコーヒーを飲みに立ち寄った気持ちになりました。

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2025年07月15日

Posted by ブクログ

あなたは、”昭和レトロ”が好きでしょうか?

“昭和時代の生活や文化を彷彿とさせ懐かしい気持ちにさせてくれるようなデザインやアイテム、スポット全般”を指す”昭和レトロ”という言葉。人は少し昔の時代をどこかバカにするようなところがある一方で、それより少し時代を経ると今度は『レトロ』という言葉で再評価するようなところがあります。『レトロ』という言葉に秘められたどこか懐かしい響きは心穏やかにさせる効果もあると思います。

さてここに、そんな『四半世紀ほど前の昭和のまま時が止まったかのよう』な『レトロ』な『喫茶店』を舞台にした物語があります。

 ・『CD大の黄金色の振り子が左右に規則正しく揺れ』る『海老茶色のフロアークロック』

 ・『壁際の棚やピアノの上に雑多なものがたくさん並べられ』た店内

老店主と孫がお店を営むそんな『レトロ』な『喫茶店』が登場するこの作品。そんなお店を5人の悩める人たちが訪れることから始まるこの作品。そしてそれは、『喫茶店』を訪れた客たちが思わず『いいなあ』と呟いてしまう”昭和レトロ”な『喫茶店』にまさかの”タイムスリップ”を見る物語です。

『おめでとう、睦美。とってもきれいよ』と『キャンドルサービスで回ってきたジューンブライドに声をかけ』ると、『ありがとう、亜希。今日は楽しんでいってね』と『輝くばかりの笑み』で返されたのは主人公の吉住亜希(よしずみ あき)。『”こじんまり”と聞いていたのに参列者は五十人もい』る会場の中で『新婦のほかに知り合いのいない亜希は、逃げ出したい気持ちを堪え』ます。そして、『私は睦美の”同志”なんだから、きちんとしていなければ』と思う中、『スクリーンに映像が映し出され、新郎新婦の生い立ちが紹介されてい』きます。そんな中に『麹町の有名なカフェの前で二人で揃って立』つ写真が映るも『それきり自分の姿が映ることは』ありませんでした。
『小さいころから目立たない子だった』という『亜希は平凡な顔立ちと大人しい性格が相まって、いつも後回しにされたり忘れられたりし』てきました。『華やかな女子大生になれるかも』と夢見るも叶わず、働き始めても『損な役回り』ばかりという中に生きてきた亜希。そんな亜希には『唯一ともいえる特別の楽しみがあ』ります。それが『週末におしゃれなカフェで大好きなスイーツを食べること』でした。ある日、『お気に入りのひとつ』という『住んでいるマンションの一階にできたカフェ』で『特選お楽しみクリームソーダ』をオーダーするも『売り切れ』と告げられた亜希は、『いつものクリームソーダを頼』みます。そんな時、同じく『売り切れ』と言われた女性と会話するきっかけが生まれ、やがて睦美と名乗るその女性と親しくなった亜希。『物静かで話下手の亜希に、明るくおしゃべりな睦美は相性がよ』く、『以前よりも快活な人になれたと感じ』る亜希は、『こんな時間がずっと続けばいい』と願います。しかし、『出会ってから四年余りしたとき』、『あたし、結婚することにしたの』という睦美の言葉の先に変化が訪れます。『私はもともと一人。これからも変わらない生活を続けていくしかない』という中、マンションの建て替え連絡が入り、お気に入りだったカフェも閉店となりました。また、仕事でも相性の悪い上司に冷たい視線を送られる状況にもなった亜希は、『助けて。誰か助けて…』と『路地にあった木製ベンチに、よろめくように座り込』みます。そんな時、『足元に何かがパシャッ、と飛んでき』ました。『ごめんなさい。濡れてしまいましたね』と『細面の青年が大きな目に心配そうな色を浮かべて見おろしてい』ます。『拭きますので、店に入ってください』という青年は『喫茶おおどけい』と書かれた『ベンチ脇の茶色い電飾看板を指』します。青年に言われるままに店内に入ると、『すぐ左側に』『亜希の背より高い海老茶色の』『大時計が鎮座してい』ます。『CD大の黄金色の振り子が左右に規則正しく揺れてい』るという中、『いらっしゃいませ』と、『小柄な老婦人が、丈の長いメイドエプロンを着けてちんまりと立って』います。『四半世紀ほど前の昭和のまま時が止まったかのよう』という店内に戸惑うものの、『スタンドグラスのテーブルランプの光には、心惹かれるあたたかさを感じ』る亜希。そんな中、青年が『打ち水をかけてしまっ』たことを老婦人に説明すると、『ごめんなさいね』と謝る老婦人は、『お詫びに、なにか召し上がっていただきたいわ』と言うと『茶色いカバーのメニューを開』きます。そこに『クリームソーダのイラスト』を見つけ、『あのときクリームソーダを頼まなければ睦美と親しくなることもなく、こんなふうに虚しさを覚えることもなかった…』と思い『堪えきれず落涙』した亜希。『差し支えなかったら、お名前をお伺いしてもいいかしら』と訊く老婦人に『素直に名乗』った亜希は、『メニューのなにかが引き金になったのかしら』と言われ、躊躇するも、思い切って自分の気持ちを話し始めます。『引っ込み思案で友達がおらず、環境の変化に弱いことを自覚し、淡々とした生活を続けてきた』中に睦美と出会うも、彼女の結婚に打撃を受け、『自分も変わらなければと焦るも』のの上手くいかないという日々を語る亜希。そんな話を聞いて、『ハヤテさん。二番目の引き出しにあるレシピでクリームソーダを作ってくださいな。私の分もお願い』と青年に依頼する老婦人。やがて、『お待たせいたしました』と、『濃厚な赤い液体で満』たされたグラスの上に『バニラアイスが載っ』た『クリームソーダ』がテーブルに置かれます。『トマトジュースよ。私が発明したの。十四歳のときに』と語る老婦人は、『昭和十六年。ちょうど今日みたいに暑い七月の下旬だったわねえ』と続けます。『大時計の鐘が”ボウワワァァ~ン”と鳴』る中、『そのころは日中戦争のさなかで…』と語る老婦人の一方で、『亜希の視界がぼやけて』きます。『時計音は何度も続』く…という中に『音の振動が身体全体に響き、まるで綿の中に身体が沈んでしまう』、『目が、開けていられない…』という亜希。そんな亜希は…と続く最初の短編〈不変のクリームソーダ〉。この作品の摩訶不思議な世界観を上手く紹介してくれもする好編でした。

“東中野の商店街にひっそりと店を構える〈喫茶おおどけい〉。昭和レトロなその喫茶店には、今日も悩みごとを抱えたお客さんが、偶然訪れる。元気で優しい老店主ハツ子と物静かな孫のハヤテ、二人のあたたかな接客に後押しされて悩みを打ち明けると、店の大時計が不思議な鐘の音を響かせ、店内の時が昭和時代へ巻き戻る…絶品喫茶メニューと大時計がつなぐ過去が、生きづらさを感じるお客さんたちに前を向く力をくれる。懐かしくてほっとできる、五つのあたたかな物語”と内容紹介にうたわれるこの作品。続編も刊行されている内山純さんのファンタジーな人気シリーズの第1作です。

そんなこの作品は、私が”起点・きっかけもの”と分類するタイプの作品です。この方面で最も有名なのは青山美智子さんだと思います。「お探しものは図書室まで」、「月の立つ林で」、そして「リカバリー・カバヒコ」などの作品はまさしくそのものズバリです。何かしらの悩みの中にいる主人公が、ある”起点・きっかけ”によって再び顔を上げ前を向いて歩き出す…という青山美智子さんの物語は私の大好きな作品群です。一方で、このパターンを”食”と結びつけた作品も多々あります。古内一絵さん「マカン・マラン」、標野凪さん「今夜も喫茶ドードーのキッチンで」、そして望月麻衣さん「満月珈琲店の星詠み」などです。”食”を取り上げた作品はこの方面の需要の高さもあっていずれもシリーズ化されている人気作です。しかし、この形態の作品はそれなりに巷に溢れていることもあって、もうお腹いっぱいです!という方もいらっしゃるかもしれません。それもあって作家の皆さんもそこにさらなる工夫を加えていらっしゃいます。例えば上記した望月麻衣さんの場合は、

 “起点、きっかけもの” × “食” × “占星術” × “猫” × “ファンタジー”

と幾つもの要素を組み合わせられて唯一無二の世界観を作り上げられています。人気シリーズを生み出すのも大変なのだと思います。そんな人気作品ひしめく戦場にあって、内山純さんはこの作品で禁じ手とも言えるまさかの要素を組み合わせられています。

 “起点・きっかけもの” × “食” × “昭和レトロ” × “タイムスリップ”

“昭和レトロ”も興味深いところですが、それにも増して”タイムスリップ”というまさかの言葉に一気に心をもっていかれます。そうです。なんとこの作品は”タイムスリップ”を描く作品なのです。私は2019年の暮れから読書を始めて今までに950冊以上の小説ばかりを読んできました。そして、その読書の目的は、”タイムスリップ”を扱った作品を掘り起こすことにあります。今までに20冊を超える作品を掘り起こしてきましたが、まさか「レトロ喫茶おおどけい」といった書名で、かつ漫画チックな表紙のこの作品が”タイムスリップ”を扱う作品だとは思いませんでした。ということで、複数の要素が詰まったこの作品の魅力を順番に見ていきましょう。まずは、”食”です。この作品の舞台は『おおどけい』という『喫茶店』です。では、〈不変のクリームソーダ〉の短編で見てみましょう。『お待たせいたしました』と『底に丸みのある背の高いグラス』がテーブルに置かれたのを見る主人公・亜希は目を瞠ります。

 『グラスは濃厚な赤い液体で満ちていた。その上に、月みたいにまん丸なバニラアイスが載っている。
 「真っ赤ですね。これは、イチゴ?」』

なんと、中身が『トマトジュース』というまさかの『クリームソーダ』です。『私が発明したの。十四歳のときに』と老婦人に説明された亜希は、そんな老婦人が『嬉しそうにストローをグラスに挿すと、少し吸い込』む様を目にします。

 『赤いジュースが揺れて、アイスとの境目に白い波模様がまったりと広がる。濃厚な液体の中でいくつもの小さな気泡が、あたかも”リズムにのってステップを踏む”かのようにダンスするのを、亜希は心躍る思いで見つめた』。

『トマトジュース』の『クリームソーダ』という意表を突く飲み物の登場の先に、こんな風にその見た目が表現されていく様はなかなかに興味深いものがあります。後で記す通り、この”食”が物語の舞台を”タイムスリップ”に導いていくのですが、それが、特別なメニューではなく、この短編の『クリームソーダ』、他の短編の『プリン・ア・ラ・モード』や『ミルクセーキ』といった誰もが知るものというのが上手いと思います。展開的に”食リポ”は登場しませんが、間違いなく”食”の魅力を感じる作品だと思いました。

では、そんな物語の舞台となる『喫茶店』を見ておきましょう。

 ● 『喫茶おおどけい』ってどんなお店?
  ・『茶色い電飾看板』に『喫茶おおどけい』と書いてある
  ・『ドアは上部がカラフルなステンドグラスになっており、中央には振り子時計の模様が描かれている』
  ・『店内のすぐ左側に本物の大時計が鎮座』、『亜希の背より高い海老茶色のフロアークロック。古びてはいるが大層美しく、威厳がある。ガラス面は大きく、CD大の黄金色の振り子が左右に規則正しく揺れていた』
  ・『大小合わせて五台のテーブル』
  ・『四半世紀ほど前の昭和のまま時が止まったかのよう』
  ・店主の羽野島ハツ子が孫のハヤテと店を営む

いかがでしょうか?『昭和のまま時が止まったかのよう』という『喫茶店』の雰囲気感がこの作品のもうひとつの特徴です。また、上記で触れた『クリームソーダ』などの古典的なメニューも作品にぴったりです。この雰囲気感の良さもこの作品の魅力のひとつだと思います。

そして、なんと言っても外せないのが”タイムスリップ”です。この作品では本文中に”タイムスリップ”という言葉が6ヶ所に使われており、各短編に登場する主人公たちが実際に”タイムスリップ”を体験します。”タイムスリップ”を描く作品には世界で最も有名な”タイムスリップもの”である「ドラえもん」のようにタイムマシンが登場してわかりやすく時間を超えるものがあります。一方でこの作品の場合はぼやっとした雰囲気感の中にまるで夢を見ているかのごとく”タイムスリップ”が生じます。〈不変のクリームソーダ〉を元に少しだけ見てみましょう。

 ・老店主が『十四歳のときに』『発明した』という『トマトジュース』ベースの『クリームソーダ』が登場
   ↓
 ・『大時計の鐘が”ボウワワァァ~ン”と鳴』ります
   ↓
 ・『亜希の視界がぼやけてくる。頭が重い。さっき激しく泣いたせいだろうか。首を小さく振ってみたが、ハツ子の顔が三重にもぶれていた』。
   ↓
 ・『音の振動が身体全体に響き、まるで綿の中に身体が沈んでしまうような、いや、ふわりと宙に浮き上がるような…』
   ↓(タイムスリップ!)
 ・『私、小さい子供になっている?』

こんな感じでしょうか?随分と端折っていますのであくまでイメージということになりますがそれでも間違いなくこれは”タイムスリップ”です。

 『昭和十六年の夏。日中戦争が長引いて日本の物資が不足しはじめていたころ』

まさかの戦前へと”タイムスリップ”した主人公はそこでその時代の人々の生き様を目にします。ここでもう一つのポイントは、”タイムスリップ”した先は主人公自身の身体ではないということでしょうか?そもそも”タイムスリップ”先はこの短編では『昭和十六年』ですから、主人公は影も形もありません。そして、主人公たちが”タイムスリップ”をした先で見るものが一つの”起点・きっかけ”を得ることになるのです。

そうです。上記に記した通りこの作品は”起点・きっかけもの”でもあります。それは、何かに悩み、何かに苦しんでいる主人公たちが何らかの”起点・きっかけ”の先に立ち直っていく様を描く物語です。そして、”食”の名前と組み合わされた各短編のタイトルで朧げながらに見えてもくるものです。キーワードのひとつとなる主人公たちの心の声と共にまとめておきましょう。

 ・〈不変のクリームソーダ〉
   → 吉住亜希『変わるって、どうしたらいいの?』

 ・〈不恰好なプリン・ア・ラ・モード〉
   → 武藤詩織『そうだ。しっかりせねば』

 ・〈包むか包まれるかオムチキンライス〉
   → 芦田理央『もう無理なんです。ボクには才能なんかない』

 ・〈若き日のミルクセーキ〉
   → 小田和代『母がこんなになるまでは、私の人生もそこそこ順調だったのに』

 ・〈幸運のお茶とお菓子〉
   → 妹尾太雅: 『俺って二十年間、なんのために生きてきたんだろ』

それぞれの短編にはそれぞれの短編内で主人公となる人物が登場し、さまざまな経緯で『喫茶おおどけい』を訪れることで物語は動いていきます。そして、”昭和レトロ”な雰囲気の中に、”食”が登場し、”タイムスリップ”の瞬間を見る主人公たち。『喫茶おおどけい』を訪れる前にはさまざまな思い悩みの中にあった彼らが、そんな場で”起点・きっかけ”を得た先に見るもの、感じるものが描かれていく物語はそれぞれに清々しい思いを読者にも見せてくれます。上記した通り、そんな物語が醸し出す雰囲気感は独特です。そして、この作品では『喫茶おおどけい』を営む側にも視点が移ります。このことによって、客を受け入れる側の優しさが伝わってもきます。そんな物語が至る結末、そこにはこの先も悩みのある人たちに”起点・きっかけ”を与え続けてくれるであろう『喫茶おおどけい』の懐の深さを感じるゆったりとした時間の流れる物語が描かれていました。

 『時は、前にしか進まない。そして人は、しばしば後で悔やむ。だけど、だからこそ、自分から前に進んでいかなければならない。でないと置いていかれてしまうから。  
  そんなことを、この店は時々教えてくれる気がする』。

圧倒的な存在感を放つ『大時計』が物語の雰囲気感を終始リードするこの作品。そこには、”昭和レトロ”な雰囲気感に包まれた『喫茶おおどけい』を舞台にした物語が描かれていました。提供される”食”が”昭和レトロ”な雰囲気感にぴったりなこの作品。まさかの”タイムスリップ”がそこに描かれていくこの作品。

“お悩みごとを抱えたあなた、お気が向いたら、ぜひどうぞ”という本の帯の誘いに、思わず自分も『喫茶おおどけい』を訪れてみたくなる、そんな作品でした。

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2025年05月26日

Posted by ブクログ

喫茶店でタイムスリップみたいな話
なかなかタイムスリップ先の状況を掴むまでに
毎度時間がかかるけど、
そんな設定にしては読みやすいかも。

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2024年11月11日

Posted by ブクログ

これ結構好きだな。
シリーズ化してくれたら読みたい。
タイムスリップ系だけどまどろっこしくなくて、サクサク読めて、それでいてほんわかする。
登場人物の悩みなんかもあるよねーわかるわーって感じで親近感が持てるし。
でもおじいちゃーん、会いにいってあげてーって思う。
それができたら苦労はしないだろうけどさ。
でも、そこをなんとか!って思っちゃう。

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2024年11月10日

Posted by ブクログ

レトロ喫茶おおどけい名物のおおどけいに導かれて過去に行き(?)、食べ物を口にすると悩みが解決したり気持ちが軽くなったりする不思議なお話。
人が健やかに生活していくためには、やっぱり食って大事なんだよなぁ。

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2024年11月05日

Posted by ブクログ

おおどけいがある喫茶店には、もしかすると不思議な出会いがあるかもしれません。

レトロな喫茶店に興味がありましたが、行く勇気がなかったので、これを機に行ってみようかなと思いました。

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2024年08月27日

Posted by ブクログ

表紙がかわいくて読みたくなった
ずっと柔らかい雰囲気の小説です。
ほっこりします。おだやかな気持ちになれます。

導かれるように立ち寄るお客さんは、育児だったり、介護だったり、その他にもいろんな人々が人にはなかなか相談の機会がないいろんな悩みを抱えてる。
その悩み自体に共感だったり、考えさせられたりしました。

店主も癒されます。タイトルの意味も最後じわ〜っとあたたかい気持ちになれます。
わたしもおいしいメニューを食べてまた頑張ろうと思えるここの喫茶店に立ち寄ってみたいです。

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2024年08月09日

Posted by ブクログ

ほんわかする本
悩みを持った人がこの喫茶店でタイムスリップする事で解決していくストーリー
内容的にはちょっとありきたりで先が読める所もあるが、ホッとする設定で安心感がある
こんな喫茶店が近くにあったら行ってみたい

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2024年04月28日

Posted by ブクログ

ネタバレ

喫茶おおどけいが不思議な音を奏でて
時を知らせるとき。
過去と今が喫茶店のメニューでつながる。
古くない懐かしい味。
その味に触れるとき、
心の中の悩み事に光がともる。

そんな感じです。
誰もが「あるある」と思っても
黙って通り過ぎていたかもしれない。
私も喫茶おおどけいの不思議な音に
出会いたくなりました☺️

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2024年01月11日

Posted by ブクログ

悩みあるお客様が喫茶店に迷い込んで不思議な事を体験して美味しい物を食べて飲んで少し前向きになる、そんなお話。ほっこり系。私もこの喫茶店に迷い込んで前向きになれたらいいな。

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2025年09月26日

Posted by ブクログ

ネタバレ

助けてほしいとき喫茶店のおおどけいが過去に飛ばしてこれからを生きるヒントをくれる話。
オリジナルアレンジお菓子が気になります。

ハツコさんには長生きしてもらって、続きを是非。

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2025年09月25日

Posted by ブクログ

レトロな喫茶店は貴重。悩める人たちをそっと寄り添ってくれるようなハツ子さんやハヤテがいい。私が訪ねたら、どんな展開になるのかなと思いながら読んだ。

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2025年07月05日

Posted by ブクログ

悩みを抱えた人がレトロな喫茶店にたどり着いて、不思議な体験をします。
その不思議な体験から戻って、美味しい食べ物や飲み物を味わったら、ちょっと元気になって、前を向けるようになる、というお話。
出てくる食べ物飲み物が美味しそう。
そして、昭和をのぞき見できたのが楽しかったです。

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2025年06月17日

Posted by ブクログ

大きな古時計がこの喫茶店を訪れる悩める人の悩み解決に丁度良い昔の場面に連れて行ってくれる。
でも、誰でもじゃなくて悩めるお客様と店主の孫息子のみ。

温かいもてなしやエピソードにほっこり癒されました。

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2025年06月09日

Posted by ブクログ

初めての作家さん。
★2.5くらいかな。
大時計の不思議な力によって店主ハツ子の人生に沿った過去に戻るという設定は「何でやねん」と思わずにいられないけど、こういうお悩み解決不思議カフェ系に理屈を求めるのはナンセンス…と自分に言い聞かせる^^;笑
メニューは確かに美味しそうではあるけど、タイムスリップした時の昭和の時代背景とかミルクセーキとかいまいちピンと来ず……自分が昭和世代ならもう少しハマれたのかな?

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2025年06月02日

Posted by ブクログ

ネタバレ

「喫茶おおどけい」を営む祖母のハツ子を手伝う孫のハヤテ。そこにある大時計は悩みを抱えて訪れた人たちを過去の「喫茶おおどけい」にいざなう。彼らはそこにいる一人になり、出来事を体験し、それを通して自分の問題に向き合うのだった。

戦時中から戦後まもなく、そして現代へと続く「喫茶おおどけい」の時間。いちばん現れてほしい人が現れない。
ハツ子の大らかさを裏打ちするしなやかな強さが好もしい。

「不変のクリームソーダ」 取り柄のない、地味な亜希。変化を嫌う彼女は、理解者だと思っていた友人が結婚し、行き場のない思いを抱えていた。トマトジュースのクリームソーダが登場。
「不格好なプリン・ア・ラ・モード」 計画通りに完璧な生き方をしていた詩織。ところが、結婚し、子どもを産むとなにもかも思い通りにならなくなり、落ち込む。産後うつ状態だった彼女を店に招く。
「包むか包まれるかオムチキンライス」 バイオリンの才能がありながら道を断たれた母の期待を一身に背負う実際の理央。全てを犠牲にする生活が辛くなり、レッスンをサボる。公園で自分を傷つけようとしていた彼に出会ったハヤテは彼を店に招く。
「若き日のミルクセーキ」 認知症になり、自分に当たり散らす母親に振り回される和代。散歩に出て振り回され、疲れた彼女をハツ代が店に招く。
「幸運のお茶とお菓子」 やりたいことがなく、流されるままに生きてきた太雅。久しぶりに会った旧友に頼まれたアルバイトに気が進まないでいたとき、喫茶おおどけいを見かけて入る。店員と話すうちに、心がほぐれる。お菓子はドーナッチョ。

温かい連作。誰にでもほっと心を休ませる場所があったらいい。ハツ代さんの大らかさの奥にある寂しさが切ない。会えたらいいのに。

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2025年05月06日

Posted by ブクログ

古色蒼然とした“ 昭和の喫茶店”「喫茶おおどけい」。悩みを抱えてその店を訪れた人は不思議な現象を体験し、悩みを解決して去っていく。
大時計がトレードマークの古い喫茶店を舞台にした、いわゆるタイムスリップもので、一話終わるごとに時代が少しずつ進んでいく。
訪れる客はバイオリンを続けるかどうか悩む少年や、育児ノイローゼの母親など。
一話ごとに店主の人生が描かれていて、面白かった。

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2025年03月22日

Posted by ブクログ

ハツ子さんやハヤテのように、だれかにそっと寄り添える存在でありたいと思った。タイムスリップして大切な人に再会できるなら...と想像しながら読むことで、私自身も救われた。

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2025年02月04日

Posted by ブクログ

レトロな喫茶店で起こる、不思議で心温まる物語。
癒し系カフェを題材にした作品は最近の喫茶店ブームもあってかよく見かけますが
ハツ子の経験したエピソードを知ると、切ない気持ちでいっぱいです。
そんな中でも、「おおどけい」を続けてきた彼女の信念に勇気づけられた気がしました。

出てきたメニューの中では
トマトジュースのクリームソーダがすごく気になりました。

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2024年12月08日

Posted by ブクログ

東中野の商店街にひっそり佇む喫茶おおどけい
ちょっとおせっかいで面倒見の良いハツ子さんと
孫のイケメン癒し系、ハヤテ君
彼らの接客に癒されつつ
それぞれの人生のステージで悩みを抱える
お客様がやってきて、いつのまにか、ウトウト…
昭和へトリップし、懐かしのメニューを楽しみ
そして彼らの心もほぐれてゆく…

主役はやっぱりハツ子さんを見守るおおどけい
なんだろうな、ハヤテ君が優しくて癒されるなぁ
こんなお店あったら行ってみたい
甘いドリンク飲みたくなってきた(笑)

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2024年11月23日

Posted by ブクログ

東中野にある小さな喫茶店。
訪れる人がほっと一息つける。だけでなく不思議な体験ができる場所。
店主のハツコお婆さんと孫のハヤテさんのあったかさそして不思議な体験が悩めるお客さんを癒してくれる短編仕立てのお話。
ゆるりと気を抜いて読みやすい作品だった。

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2024年10月26日

Posted by ブクログ

子育て、介護、将来が見えてこない…現代ならではの迷いや悩みがある人たちが『喫茶おおどけい』にやってきて、ハツ子さんが生きてきた怒涛の昭和にタイムスリップして、昭和当時の人たちのエネルギッシュな熱量を受けて前を向いていく。

私は昭和生まれでも平成で生き抜いた方の時間が多いけれども、昭和戦前戦後・高度経済成長期の人たちはエネルギッシュでどんなことがあっても怖さ知らずで前を向いていってることは、あまり知らない。

この物語を読んでいくうちに感じたのは、得る情報も今と違って限られてるから、工夫して情報を得るし仲間意識が高いなぁと。
今は便利で繋がりやすいけど、他人は他人という方が強いですし。。。
そんな昭和戦前戦後の人たちが、今と同じような悩みをかかえててどう生き抜いてきたかを改めて、自分たちも時代に合わせた生き方からもう少し人に優しく…と感じました。

ハツ子さんが過去に行きたがってるのになぁ。なんで行けないのか…そのあたりが謎で。もう少し深く掘り下げても良かったような…?

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2024年09月14日

Posted by ブクログ

昭和初期から中期、大変な時代の中で活き活き魅力的に過ごすハツ子さんに元気をもらった。
自身の日々を振り返ってみると、疲れただとか小さな不満だとかに占領されている気持ちの方が大きいように感じる。
毎日の生活って代わり映えなく過ぎていくことの方が多いようにも感じるので、そんな中でどういう気持ちで過ごしていくか、どんな気持ちで過ごすか…
気の持ちようによって、日々を振り返った時に過ごしてきた時間の印象が変わっていく気がする。
疲れた印象の記憶よりも、ワクワクする何かを見つけて過ごした印象の記憶になるようにこれから過ごしたいな。

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2024年01月21日

Posted by ブクログ

〈喫茶おおどけい〉は、その名の通りお店に不思議な大時計があって、悩みを抱えたお客さんが、引き寄せられるように訪れ、老店主ハツ子さんと孫のハヤテと話している最中に昭和時代にタイムスリップしてしまう。
眠りから醒めたような気分と同時に悩んでいたことも些末なことだと感じて前向きになる話。

時計は、救いを求める人を察知するという…。
5話の短編集。

喫茶だけにもちろん食べ物もあって、それが昭和な感じ漂うのも懐かしくてホッとなる。

最近、こういう喫茶関係のほっこり系の短編小説が多くなってきたような気がする。
この著者さんは、初読み。



・不変のクリームソーダ
消極的で前に進めず、変わらない自分に嫌気が。

・不格好なプリン・ア・ラ・モード
完璧な故に思い通りにならない育児にノイローゼになって…。

・包むか包まれるかオムチキンライス
バイオリンのレッスンが苦痛な少年。

・若き日のミルクセーキ
認知症の母の世話に疲れて。

・幸運のお茶とお菓子
はっきり自分を伝えられない彼は…。



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2023年12月15日

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