あらすじ
「絶対に東大合格しなきゃ許さない」――両親の熱烈な期待に応えるため、高校三年生の高志は勉強漬けの日々を送っていた。そんなある日、クラスメートの星という少女から、自身をとりまく異常な教育環境を「虐待」だと指摘される。そんな星もまた、自身が親からネグレクトを受けていることを打ち明ける。心を共鳴させあう二人はやがて、自分達を追い詰めた親への〈復讐計画〉を始動させることに――。教室で浮いていた彼女と、埋もれていた僕の運命が、大学受験を前に交差する。驚愕の結末と切なさが待ち受ける極上の青春ミステリー。
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Posted by ブクログ
親に縛られる高校生2人が、自由を求めて『復讐劇』を起こす話。
教育虐待、ネグレクト、親への依存。それら全部ひっくるめて『復讐劇』に立ち向かっていく2人の姿に、ページを捲る手が止まらなかった。
いったいどんな復讐をするんだと読者に限界まで期待させて、それらを超える痛快なラストだった。
辻堂ゆめさんの他作品も見てみたいと思える。
Posted by ブクログ
教育虐待を受けている男子生徒の描き方が印象的だった。別の虐待を受ける女子生徒とどう共謀し、どういう結末に落とし込むのか全く想像できず、興味深く読み進めることができた。
最後は良き着地であった。
Posted by ブクログ
小学校受験、中学受験に失敗した高校3年生の染野高志は、東大に入ることだけを目指して勉強漬けの毎日を過ごしていた。
東大出身でエリートの厳しい父、そして父の言いつけに従い、厳しいスケジュール管理を行なっている母親。成績が少しでも落ちると、激しい罵倒、暴力、そしてペナルティをかされる。それでも、「すべてはあなたのため」といわれ、できない自分が悪いのだと、それが普通のことだと思っていた。
クラスメイトの星愛璃嘉は、休みがちで、またクラスに馴染むことなく、浮いた存在だった。
そんな彼女が、ある日、時々発作のように気分が悪くなってトイレに駆け込む高志に声をかけた。
最初は、彼女のことうるさがっていたが、彼女が、今までに彼に起こった身体上の傷を一つ一つ問いただすと、それに対して言い訳をする高志。それを『虐待』ていうんだよと彼女は指摘する。
彼女自身は、母子家庭で育ち、母は娘に依存しながら生きてきたが、それが虐待に当たると外部の人間に言われるまでわからなかった。そんな彼女だから、高志の状態を見て自分と同じ側の人間だと気がついたのだ。
「これが普通」っていうのは、育ってきた家庭環境、つまり身近な人の価値観がとても大きな影響を与えるが、それだけでなく社会生活の中で、様々な価値観を持つ人と接することや、情報を取り入れることで、学んでいくと思う。
しかし、彼らのように異常な環境の中で、親以外のコミュニケーションも絶たれていたら、それが普通だと思ってしまう。
自分たちが異常な環境に置かれていることに気がついた時、二人はそれぞれの親への復讐計画を練り、時間をかけて行動する。
ただ殺人という安易な方法でなく、最も効果的な方法で。そしてそれを遂げた時、自分たち自らの意思で未来を切り開いていく。
特に高志への虐待の場面は辛かったが、二人が潰れてしまうことなく、正々堂々と自分たちの手で未来を勝ち取っていく最後はよかった。
Posted by ブクログ
染野と星。高3の教室で浮いていた2人。
共通点がないようにみえるこの2人だったが、
虐待を受けている共通点からある復讐を企てた物語。
裕福だが東大に入ることを当たり前とされ勉強漬けで厳しく管理され成績が落ちるものなら殴る蹴る、特訓という名の睡眠を削って勉強させる、門前16時という染野と、
貧乏で家事もバイトのお金もシングルマザーの母からとられ母は男をつくっては貢ぎ精神的にもあなたしかいないからと束縛されている星。
星がパニック発作を発症している染野を同類だと見て話しかけたことから、お互い異常な家庭環境だと認識するようになった。
この話をみて環境が人をつくるというのを感じ、子供が親からうける影響は多いと思い、特に何不自由なく外野からはみれる染野の環境は恐ろしかった。
東大受験に失敗し引きこもりの姉がいやがらせの犯人であることは途中でおおいに予想できたが、
2人の復讐は親と同じにはならない、期待をさせておいて落ちる絶望を味合わせるというのが結果的には成功してよかったと思った。
(叔父さんの援助なしではなりたたないと思ったので)
受験というサクラサクサクラチルという時期の自発的な行動による一歩はとても大きなものであったと思った。