あらすじ
新聞記者である私は、美貌の女性が機関車に轢かれる様を間近に目撃する。思わず轢死体の身元を改めると、衝撃の事実が続々と明らかになって……。読者を魅了してやまない、文壇の異端児による絶品短編集。
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Posted by ブクログ
やはり夢Qワールドは至高
ところどころドグラ・マグラを彷彿とされる構成。
白菊がお気に入りである。
とにかく、夢Qの書く女性は淑女で上品ながら耽美であり、実際にそんな女性がいたら傾国間違いなし。
美しい
Posted by ブクログ
本作は全8作品からなる短編集である。(”いなか、の、じけん”と”怪夢”はショートショート集であり、さらに細かく作品数は分かれる)
本当は他の本を買う予定で本屋に行ったのだが、残念ながら目当の本が無かった。ぼんやりと小説コーナーをうろついていた時、ふと目に留まった。
久しぶりに作者の独特な世界観にヒタルのも悪くないと思い、購入し読むことにした。
全8作品のすべての感想を記載してもいいかもしれないが、冗長的になるし、読んでいてこの作品すごい!と思えるものと、正直少し俺とは合わないかなと思う作品があってイチイチ書くのもつまらない。
ここでは、表題作の「空を飛ぶパラソル」の感想だけしるして、あとはザっと記載にして終わりとしたい。
「空を飛ぶパラソル」
本作はある新聞記者が新聞のネタを狙うあまり、その対象の事を配慮せず、対象者を死なせてしまった結果、自己の良心の呵責に悩まされるという話だ。
元々、新聞記者をしていたという作者らしく、新聞記者の心理描写が鮮明に描かれているのも特長だ。
現在でも、マスコミ関係の過度な取材や捜索がその被害者の精神面や肉体面に大きな負担を強いることが問題視されることが多々ある。本作の主人公の新聞記者も、過度な取材や暴かなくてもよい事実を暴いてしまったために、第三者を自殺に追い込むなどしてしまうう。いつの時代もそうなのだが、被害者やその関係者の心理というものは一番に考えるべき点であるのに、なぜかその部分が軽視されている。今では、少しは改善されてきたようにも思えるが、マスコミ以外でもSNS等を通じて情報が垂れ流される結果、被害者心理の軽視というものはなかなか改善を見ないように思える。本当に必要なこと以外は被害者はそっとしておかなければならないはずだ。
しかし、マスコミ関係者である新聞記者も食べていかなければならない。記事が書けないとその記者が今度は生きていけないことになるかもしれない。そう考えると非常に難しい。特種を書き食べていくことが大切か、被害者感情を配慮することが大切なのか。この問いは人によって答えは変わると思う。
仮に、職業的に記事を書かなければならない事情があったとしても、列車に飛び込む女性を見殺しにするのは論外である。この点は職業意識云々というよりも、人としてどうなの?という話になる。人にはそれぞれの倫理観や価値観があるが、絶対に人を見殺しにするような行動は慎むべきだ。
この報道の姿勢という事に関して、作者はこの新聞記者に二重の罰を与えて話を締めくくってりる。この罰は強烈であり、作者が何を主張しているのか明白だと思う。
ここまで書いてきて、主張性が強い作品で夢Qらしくない気がするような感想になってしまったが、もちろん本作はきちんと作者の幻想的な世界観にはヒタルことができる。轢死した瞬間のパラソルの動きや、色の落ちたこいのぼりが飾られている墓場、祖母の死にざまなどは、夢Qらしい感じがした。
その他の作品においても、「復讐」の女が夜そっと起きるシーンや、「怪夢」のそれぞれの話のオチ、「白菊」の子供の話など、そのほかにも挙げればキリがないが、夢Qは幻想・怪奇的な世界へと俺を連れて行ってくれた。面白かった。
Posted by ブクログ
短編集だが、それぞれの作品を読み終えてから、どういうことだったんだろうと首を傾げるものが多い。ただ、読んでいる間はどれも奇妙な情景が頭に浮かんでいる。その情景を楽しむ作品なのかなと思う。ホラー、猟奇、血の色、「ホホホ・・・」と笑う不気味な女性。夢野久作の奇妙な世界に飲み込まれた気がする。
『空を飛ぶパラソル』、『ココナットの実』、『キチガイ地獄』が気に入った。
『いなか、の、じけん』は数ページ程度のとても小さな話がいくつも続く。田舎で起こった奇妙な事件が、それぞれ場面の関連なく矢継ぎ早に出てくる。これもどういうスタンスで楽しめばいいのかと戸惑ったけど、この奇妙で後味の悪い感覚を楽しむのかなと思った。新感覚。
Posted by ブクログ
名だたる傑作群を放った夢野久作であるが、さすがにすべての作品が傑作と称されるわけではない。「キチガイ地獄」は好みの作品だったし、意外と「老巡査」が正統派で良かった他は、なるほどこういう作風か、と認識させられることはあっても、さほど惹かれるものは感じることができなかった。しかしそれでもツンと澄ました人間の醜さを暴き出すかのような物語と言葉遣いは、抗いようがないニコチンの魔力に似ている。夢野久作は癖になるかもしれない。