【感想・ネタバレ】ブラックスワン回避法のレビュー

あらすじ

「損をして、得を取る」オーストリア学派の道教的迂回戦略
オーストリア学派の投資家が老子と孫子とクラウゼヴィッツから学んだこと
もし孫子やクラウゼヴィッツが株を買うとしたら「老子、孫子、クラウゼヴィッツ」と「メンガー、バヴェルク、ミーゼス、ハイエク」と投資

当代一流の悲観投資家であるマーク・スピッツナーゲルが、「失うことで手に入れ、手に入れることで失う」という彼の道教的・迂回投資戦略を描いていく。これはオーストリア学派の投資法とも呼べるもので、150年にわたるオーストリア学派の伝統を引く、一見、直感的には理解しにくいが、実績ある戦略である。いつの時代も色あせないものであると同時に、今こそ学ぶべき戦略である。

本書では、ヘッジファンドのマネジャーであり、テールヘッジの先駆者でもあるスピッツナーゲルが魅力的な旅に読者を誘う。それは、CBOT(シカゴ商品取引所)のピットに始まり、寒帯針葉樹林を経て、古代中国の戦国時代からナポレオン時代の欧州、さらには産業的に急成長するアメリカまで底通する規範的な戦略へ、そして19世紀オーストリアの偉大なる経済思想家たちを通じて、彼の投資戦略となるオーストリア流投資法へと至るものである。目の前の決戦に勝つことで勝利が得られるのではない。むしろ、直接的な結果よりも、間接的な手段を獲得することを目的とした優位性(彼はこれを「勢」と呼ぶ)を狙う「迂回」アプローチこそが勝利をもたらすのだ。重要なのは、時間のとらえ方を変えることだ。一般的な感覚とはまったく異なる異時点的な次元で時間をとらえることになる。

金融危機下でもトップクラスのリターンをたたき出したスピッツナーゲルは、ルートヴィヒ・フォン・ミーゼスやオーストリア学派経済学の理論を、効果的な投資手法へとまとめ上げた最初の人物だと言える。金融のゆがみ、「ブラックスワン」と言われるような株式市場の大混乱はけっしてでたらめに起こることではないということ、そしてまったく市場が無視している極めて生産的な資本を見定めること(スピッツナーゲルにとっては日常茶飯事だが)を本書は説いている。本書はロン・ポールが序文で述べているとおり、「オーストリア学派経済学を象牙の塔から投資の現場に引き出した」のだ。

本書は、市場プロセスとの共生を見いだす当代一流の投資家のレンズを通した世界が広がっている。今こそ、共生が求められるときもないだろう。

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Posted by ブクログ

オーストリア流の経済学の説明に始まり、投資戦略でなぜ迂回的な順路を通る必要があるのか、それらの話を解説している本です。また極端な株式の下落(ブラックスワン)から利益を得る戦略について書かれていますので、今の好調な相場の時に読んでおいて良かったと思いました。
この本から学んだこととしては「迂回的に取り組む」という思想から、相場が大きく歪んだ時に「損をして得を取る」投資を行うということですね。少々皮肉っぽい内容ですが、投資をある程度経験した人が投資哲学を知るという意味では有意義な本ではないかと思いました。

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2021年05月06日

Posted by ブクログ

ネタバレ

オーストリア経済学なるものがあるのですね。考えとしては、ナシーム・ニコラス・タレブの反脆弱性がピッタリ合う思想です。経済は人間の行動による集合体であるから、経済そのものは生き物である。すなわち、変動する生き物を無理やり抑え込もうとすると、より大きな災害に合うという考えです。

投資手法としては
①ダウンサイドが小さく、アップサイドが大きい時に投資する
② オフェンシブとディフェンシブの切り替え

ここまでの内容はハワード・マークスやナシーム・ニコラス・タレブ、ダンドーの本でも重要性を多く語られていますが、スピッツナーゲルの本書ではここに市場プロセスと時間軸の概念を多分に盛り込んでいます。
経済と時間軸のプロセス、人間に時間選考に対する行動を写真でいう被写界深度を比喩でもってくるのは面白いですね。

中でも孫氏の教えから『柔で剛を制す』『右へいくためにあえて左にいく』は、ハワード・マークスの20の教えにはないあらたな教えとなりました。すなわち、先の大きな利益を得る為には、積極的に目の前の損失(ヘッジ戦略)をとりにいくということです。

しかし本書の投資方法である
・ミーゼス流戦略
・オーストリア流投資法Ⅰ
・オーストリア流投資法Ⅱ

の3つが紹介されたのですが、Ⅱを実践するのは非常にハードル高いですね。Ⅰに関しては、ちょっと勉強して実践してみようかと思います。世界(戦略)は広いな~と感じた1冊であると同時に、なぜにブラックスワン的な考えをする人の著書は、こうも回りくどいのかw

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2020年06月12日

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