【感想・ネタバレ】外科医キアラは死亡フラグを許さない―死人だらけのシナリオは、前世の知識で書きかえます―（新潮文庫nex）のレビュー

焦田シューマイ

天才外科医・桐原アキラは、『シンデレラの婚約』の世界に主人公キアラ・ベルワースとして転生した。そこは魔法での治癒に依存し、医療で救えるはずの人々が見捨てられる世界。そんな状況を許せるわけもないキアラは、本来死ぬはずだった患者を令嬢姿で手術し、物語を改編してしまう。型破りなキアラだが王子になぜかプロポーズされ――転生医療ファンタジー漫画、完全ノベライズ！

[ブクログ · ★★★★☆]

漫画は未読ながら、粗筋と巻末の試し読み漫画に惹かれて購入。
シンデレラ・ストーリーのヒロインに転生した女性外科医が、恋愛ストーリーそっちのけで、その知識と技術をもって転生先の世界で無双する……とはなかなかならない物語。
確かに様々な登場人物たちを癒しはするが、そう単純には無双させてくれない。
そもそも転生先には魔法があり、魔法での治癒が主流のため、魔法を使わない医師や医術は後進、かつ下に見られる国なので。
他国の医術は進んでいるみたいだが……
ただでさえ現代日本の機械類が存在しない世界で、手術道具すらままならない状態で、どう患者を救えばいいんだという。
魔法を使わない、かつ小娘だからと余計に舐められる始末。
それでも患者を救うためなら、彼女はどこまでも真剣で突き進んでいく。
そして、気付けば段々と周囲には協力者が。
男性キャラばかりなのは、元々のストーリーの影響の名残か。

医師の方が書かれているので、医療に関してのリアルな描写は間違いなし。
またリアルだなと感じたのは、金銭面にもちゃんと触れていたこと。
医療は金がかかるのです……
そして、そこを解決するためのエピソードもちゃんと用意していたところは細やかだなと感じた。
諸々軌道に乗り出した一方、王族との争いも避けられそうにないところで今回は終了。
続刊はあるのかな。
医師としての活躍、そして本来のストーリーだった方との齟齬や恋愛面の結末も気になる話だった。