あらすじ
中国旅行中にタクラマカン砂漠近郊の村から、自転車に乗ったまま忽然と姿を消した瀬戸雅人。彼の帰りを待つ千春と幼子のせつ。血のつながりのない弟・紀代志がその足跡を辿るうちに明らかになる兄の人生──。少年期からの憧れ、黄河源流にある「星宿海」とは? 雅人が抱えていた戦後から現代に至る壮絶な人間模様を、抒情豊かに貫く感動巨編。
...続きを読む感情タグBEST3
このページにはネタバレを含むレビューが表示されています
Posted by ブクログ
雅人は異族として瀬戸家に紛れていただけだった。弟のきよしはずっと一緒に住んできた兄のことを全く理解できていなかった、本当の家族にはなれなかったことを知った。雅人にとって本当の家族はせつだけだったのだ。雅人にとって星宿海はいなくなってしまった母の思い出。母から聞かされた昔話と先生から聞いた黄河の源流の風景の妄想が生み出した、雅人と母が作った場所。
それぞれの道を辿って「星宿海」に辿り着いたことで、千春も雅人も家族になったんじゃないかなあ
宮本輝の小説からは、町工場の油臭さと泥の匂いがする。
お母さんが身体を売るところを見るのは辛くなかったのかな。あの親子が一緒にいるときはいつも屈託がなく幸せそうだった、というのが印象的。人の居場所を奪うのは大概人の目だったりする。
千春と雅人が関係を持つとき、雅人がまるで大きな赤ちゃんであったというのはなんでだろう。雅人はずっと大人になれなかったのか?それとも千春に母を重ね合わせていた?行為から娼婦としての母を千春に重ね合わせていたのか?わからん…
Posted by ブクログ
中国で消息を絶った義理の兄探しをするために、弟がいろんなツテを辿って、その兄に知られざる半生に触れていく。この手の失踪者の足跡をたどるヒューマンミステリーみたいのが、平成の宮本輝作品に多いが、類作同様やや凡作の感じが否めない。
出だしは印象的なのだが、途中、ペースが落ちる。
物乞いをしていた実母を失い、その実母を喪わせた原因のある家庭で養われながらも、決してひねくれていない兄。第一章の家族愛は涙をそそるのだが、関西特有のいぎたないチンピラとか娼婦とか、この人の作品にテンプレ的に出てくるあたりや、特にヤマもなく伏線もなく淡々と進む筋書きに飽きて、一旦投げ出した。
母への思慕が深いのはわかる。が、五十男が仕事も、産まれたばかりの母子を放り出して、自分探しってどうなんや! アホか! と言いたくなった。
↓
飛ばし読みしたところ、確かに失踪するやむを得ない事情はあったろう。母の復讐のために人生を棄ててしまった。ただ金貸しというテーマ、おそらく作家の青春時代の痛恨事なのだろうか。
全体として、火曜サスペンスみたいな感じ。
この人の初期作はおもしろいのに、年とともにつまらなくなってくるのが哀しい。