あらすじ
今回の陣触れはひどく急だった。神子田久四郎らが参陣した青山信濃守の軍勢は、国境にある敵城へと向かっていた。城主・武田左近将監の討死の報せを聞き、急ぎ出陣したにもかかわらず、榎沼城はすでにいくさ支度を調えて待ち構えていた。この城攻め、何かおかしい──。無理難題の主命、敵方には貴族出の女城主。矢玉飛び交う戦場で運と欲に翻弄される人びとは、生き残りと恩賞をかけて駆け回る。傑作戦国エンタテインメント!
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Posted by ブクログ
安定感ゆえに、ついつい埋め草的に読んでしまう岩井さんですが、この本は面白かった。
戦国期の上総を舞台に200人で守る城を1000人で攻め込む話です。
主人公・神子田久四郎は10人ほどの部下を連れ攻城戦に向かう冴えない中間管理職。それが借金で調達した兵糧の減りを心配したり、上の連中の思惑に振り回されてオタオタしながらも頑張るというのもいつもの岩井さんのパターンです。
でも、ほぼ全編を通して描かれる攻城戦が冴えています。井楼(敵陣を偵察/攻撃するために材木を井桁に組んで作るやぐら)を建て衝車(先端をとがらせた杉の丸太を台車に載せた物)を門にぶっつけ、数と力で攻める攻城軍。地の利を生かし、間道を使ったゲリラ夜戦を仕掛け、更には手火矢や最新兵器・種子島で守る守備隊。久四郎とその郎等は、時に知恵を働かせ、時に蛮勇を振るって戦いに臨みます。
裏に流れる、そもそも何故このような無益な攻城戦が始まったかというミステリー要素もなかなか楽しく。
岩井さんらしからぬ(笑)アクティブでスリリングな話でした。