あらすじ
太宰治の出世作『斜陽』の下敷きとなった、回想録的な日記。太宰の“愛人”として娘・治子を生んだ太田静子が、1945年の春から12月までの日々を太宰に勧められるままに綴って渡したもので、太宰が入水自殺したとき、この日記が書斎の机に置かれており、井伏鱒二らが『斜陽』の印税10万円とともに静子に返却しにきたという逸話が残っている。 『斜陽』の「人間は恋と革命のために生まれて来たのだ」の一節など、文面がまったく同じ箇所も多く見受けられ、太宰がどのように“文学”に昇華させたかがわかる貴重な資料でもある。 文庫オリジナルとして、太宰からの手紙やふたりが過ごした山荘の写真等を収録。
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Posted by ブクログ
太宰治の「斜陽」の下敷きとなった日記作品です。もう30年も前になりますか、斜陽に魅せられて繰り返し読んだものです。その下敷きとなったこの作品が今、文庫で読めるというのは幸せなことですね。余談ながら、「斜陽のおもかげ」、吉永小百合主演の青春映画でしたが、太田静子と太田治子の親子の姿を描く感動作でした。この本に描かれる母娘の姿は、映画の母娘の姿と重なるように思いました。いい本でした。
Posted by ブクログ
人は恋と革命のために生まれてきたという名文が、太田静子のものであったこと。
「斜陽」の直治の自殺と最後のかず子の手紙が太宰治のものであったこと。
このことが分かって私はしんみりとしたはげましを感じた。
太田治子の解説の受け売りだけど、直治はほとんど太宰であったから、きっと書きながらとても死にたかったのでしょう。
しかし、かず子もまた、静子でありながら、太宰自身であった。
かず子の手紙が太宰の創作であり、静子をはげます言葉であったというのは、静子にとっても、「斜陽」の読者にとっても心強い事実だと思いました。
半年前「斜陽」を読んで、人生を変える力をもらった気がしました。
19歳の夏、ふたたび迷いのなかにあるいま、この本の復刊に出会えて良かったです。
Posted by ブクログ
太宰の『斜陽』の下敷きとされた作品ということで興味を持ったので、どうしても比べながら読んでしまいました。前半は思ったより似ていないかなと思ったのですが、後半ではそのまま使われているようなところも多かった印象です。これは元々あったもの、あれは太宰が付け足したものと知れて、また作品に関して考えたくなりました。
ただ、もし比較せずに読んだとしても、戦時中の生活や死にゆく母を近くで支える娘の姿など、ありのままの現実を知ることができる貴重な日記だと思いました。