【感想・ネタバレ】流転の王妃の昭和史のレビュー

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2023年01月28日

最後の皇帝溥儀の退位式や通化事件の現場の顛末などしれっと歴史的重大事件が出てくる。十数年ぶりに周恩来首相のはからいで中国に「帰国」した折に撮ったとある写真には老舎(満洲族)が写っている。
ところどころ史実と異なる、恐らく思い違いや記憶違いだと思うこともちらほら散見されるが、当時の関東軍の狼藉や、関東...続きを読む軍→ソ連軍→国民党軍→共産党軍、と目まぐるしく権力者が易るたびに散々な目に遭わされる当時の様子などは読んでいて生々しく手に汗握る。遠藤誉女史の『卡子』が久々にもう一度読みたくなった。
長女慧生さんの死については相手の男を大久保と書いているが、何故かWikipediaにはOと頭文字で伏せてある。その大久保家側では事件後もずっとあれは好いたもん同士の心中事件だったと、つまりメディアが書き立てた通りだと主張していたらしい。
写真にうつる老舎はその10年、20年後に時代の歪み(文化大革命)の中で自殺に逐込まれるが、その悲劇を起した国についてこの本で公然と批判するのは自殺行為に等しい。数行ほどで文革の記述が終っているのはしょうがない。
なににつけても著者の観察眼なくしては書かれなかった本だと思う。経験している最中はきっと五感も六感もフル稼働だったに違いない。
最後に書かれていた夫溥傑さんの漢詩の一文が心に遺った。

一生歡聚猶駒隙
過眼風光豈盡春

一生の歓聚猶ほ駒隙のごとし
眼を過ぐる風光豈に盡く春たらんや

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