【感想・ネタバレ】堕落論のレビュー

あらすじ

第二次世界大戦直後の混迷した社会に、戦前戦中の倫理観を明確に否定して新しい指標を示した「堕落論」は、当時の若者たちの絶大な支持を得た。「人間は堕落する。義士も聖女も堕落する。それを防ぐことはできないし、防ぐことによって人を救うことはできない。」墜ちきることにより真の自分を発見して救われるという安吾流の考え方は、いつの世でも受け入れられるにちがいない。ほかに「日本文化私観」「恋愛論」など名エッセイ十二編を収める。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

小学生の頃父親の本棚にあった本の中で坂口安吾の本が別格の威圧感を漂わせながら佇んでいた事を鮮明に覚えている。

先月一時帰国する機会があり、今の仕事の話や読書談義をしていた時にふと坂口安吾の事を思い出して父親に好きだった作家の話を聞くと坂口安吾の名前が出てきた。
彼の文体には人を惹きつける力と魅力があり好きだったと話をしており今回手に取ってみた。
なんだか父親の本棚の本を大人になり、読めるっていうのは気恥ずかしくも、少しだけ追いついた気もして嬉しい気分になった。

坂口安吾の文章を見て、一つの事象や人間について深い洞察と、語り口は確かに魅了されるものがあった。
内容について自分がどうこうと語るにはあまりにも浅くチンケな感想になるので気に止まった分だけ引用させてもらい今回のメモにしたいと思う。

いつか自分もこれだけの深い洞察と人間理解、教養から繰り出される言葉を紡ぎ出せる様になりたい。
久しぶりにそう思わせてくれる人物だった。


【引用】

小菅刑務所とドライアイスの工場と軍艦
僕の仕事である文学が、全く、それと同じことだ。美しく見せるための一行があってもならぬ。
美は、特に美を意識してなされたところからは生まれてこない。
どうしても書かねばならぬこと、書く必要のあること、ただ、そのやむべからざる必要にのみ応じて、書きつくされなければならぬ。
ただ「必要」であり、一も二も百も、終始一貫ただ「必要」のみ。
そうして、この「やむべからざる実質」がもとめたところの独自の形態が、美を生むのだ。
実質からの要求をはずれ、美的とか詩的という立場に立って一本の柱を立てても、それは、もう、たあいもない細工物になってしまう。
これが、散文の精神であり、小説の真骨頂である。そうして、同時に、あらゆる芸術の大道なのだ。
堕落論 p34


人間の、また人性の正しい姿とは何ぞや、欲するところを素直に欲し、厭な物を厭だと言う、要はただそれだけのことだ。
好きなものを好きだという、好きな女を好きだという、大義名分だの、不義は御法度だの、義理人情というニセの着物をぬぎさり、ボ裸々な心になろう、この赤裸々な姿を突きとめ見つめることがまず人間の復活の第一の条件だ。
そこから自分と、そして人性の、真実の誕生と、その発足が始められる。
日本国民諸君、私は諸君に、日本人および日本自体の堕落を叫ぶ。日本および日本人は堕落しなければならぬと叫ぶ。  堕落論 p107


人間は生きることが全部である。
死ねば、なくなる。
名声だの、芸術は長し、バカバカしい。
私は、ユーレイはキライだよ。死んでも生きるなんて、そんなユーレイはキライだよ。
生きることだけが、だいじである、ということ。
たったこれだけのことが、わかっていない。
ほんとうは、わかるとか、わからんという問題じゃない。
生きるか、死ぬか、二つしか、ありやせぬ。おまけに、死ぬ方は、ただなくなるだけで、何もないだけのことじゃないか。
生きてみせ、戦いぬいてみなければならぬ。
いつでも、死ねる。そんな、つまらぬことをやるな。
いつでもできることなんか、やるもんじゃないよ。
死ぬ時は、ただ無に帰するのみであるという、このツツマシイ人間のまことの義務に忠実でなければならぬ。
私は、これを、人間の義務とみるのである。生きているだけが、人間で、あとは、ただ白骨、否、無である。
そして、ただ、生きることのみを知ることによって、正義、真実が、生まれる。生と死を論ずる宗教だの哲学などに、正義も、真理もありはせぬ。あれは、オモチャだ。   堕落論 p 239


しかし、生きていると、疲れるね。
かく言う私も、時に、無に帰そうと思う時が、あるですよ。
戦いぬく、言うはやすく、疲れるね。
しかし、度胸は、きめている。
是が非でも、生きる時間を、生きぬくよ。
そして、戦うよ。
決して、負けぬ。
負けぬとは、戦う、ということです。
それ以外に、勝負など、ありやせね。
戦っていれば、負けないのです。
決して、勝てないのです。人間は、決して、勝ちません、ただ、負けないのだ。
勝とうなんて、思っちゃ、いけない。
勝てるはずが、ないじゃないか。誰に、何者に、勝つつもりなんだ。 堕落論 p 239


時間というものを、無限と見ては、いけないのである。そんな大ゲサな、子供の夢みたいなことを、本気に考えてはいけない。
時間というものは、自分が生まれてから、死ぬまでの間です。   堕落論 p 239

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2026年05月23日

Posted by ブクログ

ネタバレ

角川の夏の100冊に選ばれている。
堕落することの可否とは別に、堕落していく必然性のようなものを記載しようとしている。
正しいことのみを追求しようとすると、ある面では堕落していくことになるかもしれない。
堕落することによって、初めて本当に大事なものが何かが見えてくるのかもしれない。

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2011年12月23日

Posted by ブクログ

ネタバレ

日本文化私観、堕落論、続堕落論のみを再読

日本人としての強みは旧来の道徳観や美徳、情緒。その回帰こそが、堕ちてく社会、民主主義、資本主義の中で重要なことになりそうな予感はしていた。

一方で、旧来の道徳観などが崩れ去り、新たな価値観が日本に導入されようとしていた全く逆のタイミングでかかれた堕落論。ではその内容も全く正反対のものなのか。決してそうでなかった。

日本文化私観では、古くからある伝統的なものに対して、厳しい態度を取りながらも、真に必要なものであれば生き残るべしという姿勢を見ることができる。

また堕落論、続堕落論では、旧来の道徳、思想、価値などすべてを剥ぎ取り、徹底的に落ちることで、再び自分自身をとなり、自分自身を救うことができると述べている。

人は無限に堕ち切れるほど堅牢な精神に恵まれていない。何者かカラクリによってたよって落下を食い止めずにはいられなくなるであろう。それのカラクリをつくり、そのカラクリをくずし、そして人間は進む。堕落は制度の母胎であり、その切ない人間の実相を我々はまず最も厳しく見つめることが必要なだけだ

という言葉で終わる。

旧来の価値観をくずし、新しい価値観を実装し、またその価値観を崩し、ただしいものを求め続ける。これが人間であり、歴史の中で繰り返されてきたことなのかもしれない。だから私たちも堕ち続け、つくり続け、崩し続ける。

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2019年10月14日

Posted by ブクログ

ネタバレ

 最も読んでよかったのは、『不良少年とキリスト』だ。フツカヨイ的……。なんてすげぇ言葉だろう。太宰治についてこう書かれたことは、もっと多くの人が知るべきだと思った。『人間失格』を読んで、偉人を同一視して同化し、浸る人は多いんだろう。その多くの人が、どこかで誰かや何かに出会い、人間の闇を知った上でそれだけじゃないと学ぶ。間違いなく名著であり、読まれるべき本であったけれど、太宰治が自身を追い詰めた決定打にもなったんだろう。読めば、より同一視が進む人の方が多いのかな? 俺はそうだった。今回は免疫から、少しの間で消えるものだったけれど。読後、多くの人が克服して人生に支障が出なくなるものに、作者自身が終わらせられてしまったのであれば、なんと皮肉なことだろう。太宰のこの闇があまりにも深く、それが生み出した状況からだったのだろうけれど。
 俺の「堕落」についての言葉のイメージは、「怠惰」に近いものだった。もしかしたら、この著以降、「何もしない堕落こそ最も忌むべき堕落」という意識の微妙な変容が起こったのかもしれない?
 「人は永遠に堕落し続けることはできない」最近、自分自身がとんでもないことをしてしまった。人の記憶に深く介入して道を正してもらおうと(この時点でとてつもない傲慢が出ているが)、自身の悪い部分を全て出した罵倒をした。人間として最低な言葉の数々を口にして、人生で最も恥じ、ようやく俺の堕落は終わったと感じた。該当するいくつかの悪い部分から出た言動はもう二度としないし、できなくなった。ここが俺の、堕落の底だったんだろう。深すぎる羞恥が俺の堕落の止まり方だったんだろう。曖昧なものを言葉にしてもらう喜びは、深い。心からありがたい。そして『不良少年とキリスト』を同時に読ませてくれた編者にも感謝したい。一緒でなければ、俺には分からなかった。
 宮本武蔵の人格とそれによる生き方や、武士道は日本人から遠いものであるからこそ美しい(また美しく遠い)という考えには感嘆し、そして何より「人は美しいものを壊さずにいられず(処女は刺殺され)、そのため美しく美しいまま終わってほしい(死んでほしい)と思ってしまう」と言われたのには、揺るがされてしまった。でも違うことも思う。
一生涯美しさを貫けなくても構わない。それでも正しく堕落し、人生の大部分と終わる瞬間から少し前までの間美しくあれれば、それは十分に素晴らしく、それが人にできる最大限。そして、そう生きて死ぬために、人は生きていくべきだ。これも、坂口安吾より俺の智がひどく浅いだけでなく、日本人的な楽観思考によるのかしらん? それに加えて俺が上を向いているからなら、嬉しい。

なんかレビューってより日記になったな。

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2013年06月20日

Posted by ブクログ

ネタバレ

はるか昔に友人に勧められた本。ようやく読めた……!
「田舎暮らしって憧れのように語られるけど、ふたをあけたら全然そんなことないからね!」みたいな文章に凄く共感……。

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2015年09月05日

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