あらすじ
仲邑直人は勤務先のライブハウスで神様として崇めるロックバンド【BLUE】のギタリスト・新開数馬のゲリラライブに遭遇した。夢のような時間を過ごした直人だったが、新開が楽屋でメンバーとセックスしているのを目撃してしまう。動転し思わず「(貴方のギターが)好きです!!」と告白すると、誘われたと勘違いした新開にキスされ、そのまま手でイカされてしまった。思い描いていた理想像と傲慢な現実の姿とのギャップに戸惑いつつも事故だと思い忘れようとする直人。しかし新開は直人を気に入り、もっと虐めてみたくなっていて…!?啼かされてから始まるすれ違いラブ。俺様ギタリスト×ムチムチ陰気なファン。描き下ろしあり。
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Posted by ブクログ
〝…クソが。お前が興味あるのは俺の手だけかよ(数馬)〟
Eros度★★★★
おやおや。これは「神の手」への崇拝が、ひとりの男への恋に変質していく、なんとも観察しがいのある物語ですね。
最高の音を奏でる数馬の手に心酔する直人は、普段こそ鉄仮面のように感情を隠しています。ところが、その手で触れられると初心で素直な反応が次々と露呈する。数馬も最初は直人の泣き顔や身体を面白がり、「もっと虐めてみたくなる」と嗜虐心を刺激されます。しかし実験を重ねるほど、乱されていくのは直人だけではありません。
「…クソが。お前が興味あるのは俺の手だけかよ」。この一言から析出するのは、音楽家ではなく新開数馬自身を求めてほしいという嫉妬と孤独です。直人の中に自分を刻もうと強引になる数馬と、身体だけの曖昧な関係に傷つき「もうこんな関係いやです…」と拒む直人。手を振り払われて初めて、自らの過信と恋心を知る数馬には胸を締め付けられました。
やがて直人も、数馬の音楽以上に本人へ心と身体を乱されていると自覚します。「……お前、俺を好きになれよ。手なんかじゃなくて俺を…」という不器用な懇願に、「好きです」とまっすぐ応える場面は、探究の答えに辿り着いた瞬間。快楽から始まった接触が感情を暴き、二人を対等な恋人へ導く構成が見事です。描き下ろしで数馬が、直人は右手にしか反応しないのではと内心怯えていたと明かすのも可愛い。余裕ある攻めの仮面の下に潜む臆病さまで採取できる、濃密な一冊でした。