【感想・ネタバレ】研究者、生活を語る 「両立」の舞台裏のレビュー

あらすじ

「仙人」のような研究者像は過去のもの.多岐にわたる業務,そして家事・育児や介護にと,リアルの研究者はずっと多様で忙しい.家族のケアを担う研究者たちは,どんな思いとともに,日常をどう回しているのか.現役世代と先達による経験談27編を収録.働きながらケアをする――未だ暗中模索の道を進む,すべての世代へ贈るエール.

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Posted by ブクログ

27人の研究者が自身の生活について語る本。
各研究者の話が10ページ前後ずつ書かれている形式です。
内容としては、約7割の研究者が育児、残りの約3割が介護について語っています。
全員が大学所属の研究者であることは共通しているものの、その生活様式は千差万別。
研究者は研究室に引きこもって実験三昧という偏見をぶっ壊し、彼らも他の職の人々と同じように仕事と生活の両立に悩んでいる人間であることを教えてくれます。

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2025年11月01日

Posted by ブクログ

大学職員から見ると、教員の中には学生指導や大学運営に熱心な人もいれば何をやっているのかわからない人もいて彼らのモチベーションって何なのだろうと思っていたが、この本を読んでみて研究者が研究に生きがいを感じていることとかその世界にも競争があって生き抜くために大学や研究機関に所属している様子が理解できた。
大学に所属しているなら大学への貢献を目的とすべきというのは事務職員とか法人の狭い視野で、研究者は研究することを目的として生きている、学生支援とか入試とかどうでもいいという感覚もわからなくはない、ということが実感できた。
だから、大学として競争力を高めるためには、研究者に選ばれるような環境をつくり、研究生活の支えになるような働き方を提供することにも取り組まなければならない、そして研究者の研究業績を理解してもっと一緒にPRしなければならないなと、新しい視点を得た。特に、任期の限られる雇用のもとにある研究者の厳しい生きざまについて理解が深まった。無期雇用の教員も含めて研究者はフリーランスの人たちだと捉えた方が、彼らとやりとりするうえでは適切かもしれないと思った。
大学所属員の関心の高さの問題もあるけど、何やっているのかわからない人がいるということ自体が、研究機関として研究者のコミュニティを構築できていないことを示してしまっていると思った。
以上が大学職員としての感想。

家庭人の感想としては、自分は(男性の中では)けっこう家事育児への貢献度が高い方だと思っていたが、もっとやってる人が普通にいるし、男女の区分は無意味でしょうもない意識だったと実感した。
生きていくことは戦いではないと思うけど、戦友としてパートナーの存在に感謝する気持ちが改められた。妻は今は専業主婦の状態だけど、彼女にも、研究者にとっての研究のように、生きがいの感じられる活動をしてもらいたいしさせてあげたいなと思った。

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2025年02月06日

Posted by ブクログ

【348冊目】研究者たちによる27のエッセイ集。テーマは「キャリアと生活の両立」!

 子育て未就学児編、子育て就学時編、介護編とあるけどそれぞれが私の心にぶっ刺さりまくりました!ミッション・インポッシブルよりハラハラドキドキしたし、タイタニックよりも胸が締め付けられました!笑

 とにかく皆さんの毎日のスケジュールが綱渡りすぎる!特に共働きともなると、朝に保育園まで送り、仕事も終わらなきゃいけない時間が決まっていて、職場を出たら、お迎え着替えさせて夕食準備夕食あげる皿洗い一緒に風呂保湿服着せて風呂掃除して子の歯磨きして寝かしつけしたら、ふぅっと休む間もなく寝かしつけで一緒に寝落ち…かと思いきや、研究者のパパママは夜中に起きたり、早朝4時に起きたりして自分の研究の時間をとる…!恐ろしい!
 研究者だから会社員よりも時間の融通が利くのが良いと書いてる方もいましたが、特に若いうちは任期付きポストに就かざるを得ず、そのために経済基盤が安定しなかったり、ポストを求めて遠方への引越しや単身赴任を余儀なくされるなど、会社員とはまた少し違う事情も伝わってきました。

 とにかく勉強もできないし、論文も書けないし、研究室の仕事も他の人に申し訳ないと思いつつ助けてもらわないと回らない。毎日てんやわんやで必死なのに、業績やキャリアは他の人に追いつけない………この切なさ、悲壮感。研究者ならずとも、家事育児に一生懸命なワーママ、ワーパパはよく分かると思います。

 なぜこのエッセイを読みながら、私の目は潤んでしまったのでしょう。それはたぶん「安心したから」だと思います。毎日毎日綱渡りのような生活をこなす中で、「あぁ、こんなに必死なのは自分だけじゃなかったのか…」と、ホッとしたんだと思います。
 それと、キャリアとの両立の悩みも、組織人である私とまったく一緒でした。この生活を回していくことは人間として大切だし、育児ほど人類にとって本質的な労働はないと信じている。信じているけれど、このまま忙殺されて、いつか必ず終わる子育てが本当に終わるとき、自分に残されるものは何なのだろうか……そんなことを考えたりしていました。いえ、今もしています。

 このあたりの葛藤は、連載時に田中智彦さんの「男性育休・育児のロング・アンド・ワインディング・ロード」を読み、感じていたところです。奥様がフルタイムで働き、ご自身は専業主夫になられた方です。行間にしみじみとした大人の哀愁を感じる、以下の一節が大好きです。
「子育てがこんなに大変だとは思っていませんでした。子どもを育てるってこういうことなのか、と実感します。最初に思い描いていたような未来予想図からは、ずいぶん変わってしまいました。でも今は、人生ってそういうものだなと考えています。
そして、本当に女性は大変なんだなと、身に染みてわかりました。これは経験しないとわからなかったでしょう。女性が繰り返し訴えていることが、よく聞くような、定型的な話ととられるのは間違っています。場合によっては実存がかかってしまうようなすごい話です。キャリアを諦めざるを得なかった人は、本当につらかっただろうと思います。人生は人それぞれにしても、もっと違う選び方ができるようになってほしい。男女にかかわらず、優秀であるとかないとかでもなく、やりたいことをやれるような社会になってほしいと思います。」

 この他も読み応え満載です。今は息子さんがお二人とも巣立たれた田島節子さんのエッセイは金言の連続。とにかくペースを落としてでも働き続けることが大事なんだなと思わされます。

 まあ、藤本哲史さんの「ワーク・ファミリー・バランス」の話はとても興味深かったです。厚労省が使い始めたために日本で根づいてしまった「ワーク・ライフ・バランス」ですが、この語は藤本さんがアメリカ滞在時にはあまり使われていない語だったそうです。なぜなら、「ライフ」は働く人本人に注目したもので、余暇時間などとのトレードオフというニュアンスも含みます。
 ところが、ワーク・ファミリー・バランスというのは、働く人本人の働き方が、密接に関係する他者にどうしてもしわ寄せをもたらさざるを得ない!という深刻なニュアンスがあるのです。
 独身でも子なしでも大変な人は大変だと思うのですが、私自身のことだけを振り返ると、今とは深刻さが違ったなぁと、これまたしみじみ感じ入るところです。

 この他、終わりのある育児よりも精神的にはつらそうな介護のお話もありましたが…こちらもこちらで重かった…(実体験がないので消化できず…)

 研究者ならずとも働くパパママは共感必至のこの一冊、強くオススメします!!

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2025年09月14日

Posted by ブクログ

研究者たちの、「ケア」(子育て、介護)の寄稿集。
研究者という、我々の知らない世界の人々が、どんな生活をして両立しているのか。

意外と、普通の人と変わらないんだな、という印象。
ミルクをはちゃめちゃにこぼされたり、産後寝ない子供に悩まされたり、保育園で熱が出たらお迎え行かなきゃいけなかったり、お弁当が必要なことを前日に言われたり、等々、育児あるあるが書かれていて、ああ、この人たちも変わらないんだな、と思った。

と同時に、ケアの大変さが恐ろしくなった。特に子育て。
ただ、外注する人観点が非常に印象に残った。
「適度に夫婦で役割分担をしながら、苦手なものは外注している」「子どもを塾に通わせたり、習い事をさせたり、家庭教師が自宅に来たりすることについては、特に違和感はありません。そうだとすれば、なぜ子どもと遊び、夕食を作ることについては、外注することを躊躇していたのでしょうか。」「これほどの重労働を必要とするサービスが無償で提供されてきたことの方が、実は驚くべきことだったのです。そう考えた時、家事と育児を外注することへの心理的ハードルは大きく下がりました。」


そして、研究者ならでは、というのが、成果主義であること、そして雇用が不安定であること。こうした環境下にあるからこそ、ケアに直面しても、仕事との両立をなんとかやりくりしなくてはならないことがあるのだろう。みんな書いているのは、育児は確かに大変。その分を研究に費やせたら、ということ。でも、こうした悩みはみんな抱いているのだと思う。もう少し世の中がケアに寛容になれたらと思う。子育てしているのだから、もう少しスローダウンしても、いいんじゃない?研究者ならでは、家事・育児編期間中は成果を出せない。論文を出せない。評価する側のダイバーシティを上げるなどして、価値観を変えるしかない。

そして、ケアに直面した人々の感想は、十人十色であること。
だからこそ、ケアを巡る社会的合意は難しいんだと思う。
「生活と研究の切り替えが気分をリセットしてくれる」
「子どもの創造的瞬間を邪魔して泣かれながら100mlのミルクを拭くのも、飲みかけのビールをゆっくり飲み干してから200mlのミルクを拭くのもたいして手間は変わらない」
 「結局、どちらが家庭に入るにせよ、夫婦のうち片方がフルに働くモデルが当たり前なのでしょうか。もう一方が身を削らないと回らない仕組みになっている」「いったい自分のキャリアは、研究はどうなるんだろう」「外で仕事を引き受けている側が自分から身を軽くしてくれないと、家の中に入っている人間はいつまでたっても自分の時間を取れないのです。」男性育休に理解がなく、「ただひたすら、サンドバッグみたいな状態です」「子育てがこんなに大変だとは思っていませんでした。子どもを育てるってこういうことなのか、と実感します。最初に思い描いていたような未来予想図からは、ずいぶん変わってしまいました。でもいまは、人生ってそう言うものだなと考えています。」
愚痴は気にするな、子供の事情ですぐに帰らないといけないなら申し訳なさですみっコぐらしになるしかない、子育て期間は記憶がない。そもそもこの環境で競争すること自体狂気じみている。
逆に、唯一専業主婦の妻を持った人の書き口は余裕たっぷりだった。掃除洗濯は分担しているくらいで。自身も、過渡期と自覚しているようだが。

まあでも、この本も、育児に成功してなんとかやってきている人だから、生存者バイアスもあるかもしれん。

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2025年05月15日

Posted by ブクログ

サラリーマンよりも身近にロールモデルが少ない、という趣旨(?)で研究者の体験談を集めているのかな?と思うが、期限付きの仕事が多いのと、別居婚が多いだけで、普通の子育てとだいたい同じ。むしろ、(高学歴だからか?)合理的な考えの男性が多く、ワンオペの女性が少ない印象。かと言って、育児や介護を誰かにまかせきっている人たちと比べると、研究職でもキャリア面での犠牲というか負担は男女関係なくある。
全部を完璧にできる人はいないので、優先順位をつけて何かをあきらめたりするのだけど、だんだんあきらめなきゃいけないことが減っているかも、という意味では、いい世の中にはなってきている気がする。もっともっといい世の中になっていくための問題提起はいつでも必要だと思う。

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2025年07月06日

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