あらすじ
現代を理解するには、SF×倫理学が必要だ!
SF作品には、現実より科学技術が発展した社会や現実とかけ離れた世界が描かれている。そういった物語を臨場感をもって体験することで、「人工知能が人間を管理することは望ましいのか」「ロボットと人間の境目はどこか」「なぜ環境を守らなければいけないのか」「差別はなぜ悪いのか」「パンデミック下の社会でどう生きるべきか」「不死ははたして望ましいのか」といった倫理に関する問いをリアルなものとして考えることができる。
また、生成AIの台頭、異常気象、不老長寿など、SFで描かれてきた世界が現実化しつつあるいま、SF作品を倫理学の視点で読むことは、現実に起こりうる問題を考えることでもある。日本には優れたSFマンガが数多くある。本書では21作品から、倫理学の問いを考える。
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Posted by ブクログ
差別、クローン、自然、不老不死などさまざまなテーマについて問いかけられていくので、どうして自分は「善い/悪い」と判断してるんだろうと考えさせられるし、題材にされている作品も読んだことない作品ばかりだったから興味が湧いてきた。明確な答えが提示されてないから、自分で考えたり、各章の読書案内から探したりできるので、倫理学の入門としてとてもいいと思う。
Posted by ブクログ
とにかく面白かった。昔のものから最近の作品まで紹介し、その中のエピソードを倫理学、哲学の観点で、「何が善くて何が悪いのか」は読者の考えに委ねるという姿勢で解説している。「どんな話なんだろう」と、ドキドキしながら読み進めた。
タイトルは有名で知っていても内容は詳しく知らない作品で「そんな話だったんだ!」と驚き、ほぼ全作品読みたいと思ってしまった。本書で問われている「何が善いか悪いか」を超越した自然の深さを堪能してみたいと思うエピソードばかりだった。
難解な哲学書よりよほど分かりやすく、考えさせてくれる。と同時に普遍的なテーマであり、これらマンガの作者達には「よくそんな設定を考え、エンタメとして昇華させられたものだ」と感心してしまう。
Posted by ブクログ
SF漫画を用いて倫理学への扉を開いてくれる一冊。
倫理学を学んだことがなくても、「そもそも倫理•倫理学とは何か」という初歩の初歩から平易な言葉で解説があるので、読みやすい。
「人間のクローンは許される?」や「なぜ自然を守らないといけないのか?」といった個別テーマの議論の出発的には『火の鳥』、『寄生獣』、『銀河鉄道999』、『攻殻機動隊』『進撃の巨人』などの比較的知名度のある作品が用いられており、作品を読んだことのある人には新たな視点を、読んだことのない人にも、一度読んでみたいなと思わせる議題が提示されている。
また、あくまで本書は倫理学の考え方やものの見方をSF漫画を通して解説し、あとは読者自身に考えて欲しいという姿勢で書かれているおり、著者の立場は示されていないため、拗さがなく読みやすい。
加えて、各テーマの後には議論に用いられた単語の解説として単語集がついていたり、他のSF作品や倫理学の本の案内があり、今後深く学びたいと思った時に役立ちそうである。
倫理学というと重厚なイメージがあったが、この本はそのイメージを良い意味で変えてくれる一冊であった。
Posted by ブクログ
これまであまりSFを読んでこなかったが、読み手を考えさせる作品があることは知っていた。それでこの作品を読んだ。「第3章 知能と設計の倫理」、「第4章 管理と自由の倫理」がよかった。
大学の一般教養でとった倫理学の授業も、こういう切り口だともう少し前のめりになれただろうにと思った。
Posted by ブクログ
(2024/10/25 3h)
目次に目を通した時点で豊富なSF漫画を取り上げているなと驚いたが、更に各章末に「読書案内」として数冊の漫画が紹介されていて著者の漫画見識の広さに腰を抜かした。
古典的名作のみならず、半数以上は最近の作品を取り上げていたりする。タイトルを知っている作品は半数、読んだことのあるものは数作だった。
いずれも、魅力的な解説つきで、読んでみたくなる。
倫理学と哲学をストーリーに結びつけていく過程は、知識が世界の楽しみ方を拡散していくさまが表れていて素敵だ。
特に本書は2024年に出版されたものであることから、コロナ禍における倫理(道徳)観についても取り上げており、時勢に沿った内容となっている。
わたし自身、コロナが蔓延しだしたころは不安で、マスクをつけていない人を見ると非難がましい目で見てしまったり、不要不急の外出についても「わたしは我慢してるのに何故」なんて恨めしく思ったりしてしまうことがあった。そのため、無意識の差別というものについて、より身につまされるものがあった。
読むだけでなく、自分で考えてこその倫理と哲学。実生活に哲学を活かし、倫理を当てはめ、人と対話することに挑戦していきたい。
著者は永井均『マンガは哲学する』推しらしく、そちらも読んでみたいと思う。
読んだことがある→◎
タイトルを知っている→●
初めて知った→▲
第1章 生命と操作の倫理
手塚治虫『火の鳥 生命編』●
五十嵐大介『ディザインズ』▲(2024/11/02→◎)
荒川弘『鋼の錬金術師』◎
第2章 環境と社会の倫理
岩明均『寄生獣』◎
弐瓶勉『シドニアの騎士』●
板垣巴留『BEASTARS』◎
第3章 知能と設計の倫理
石ノ森章太郎『人造人間キカイダー』▲
平沢ゆうな『鍵つきテラリウム』▲
山田胡瓜『AIの遺電子』●(2024/11/02→◎)
第4章 管理と自由の倫理
竹宮惠子『地球へ…』●
吟鳥子『きみを死なせないための物語』▲(2024/11/02→◎)
伊藤計劃・三巷文『ハーモニー』●
第5章 差別と抵抗の倫理
萩尾望都『スター・レッド』▲
松本零士『銀河鉄道999』●
庄司創『三文未来の家庭訪問』▲
第6章 文明と未来の倫理
士郎正宗『攻殻機動隊』●
つくみず『少女終末旅行』 ●
森泉岳土『アスリープ』▲
第7章 人生と価値の倫理
諫山創『進撃の巨人』◎
手塚治虫『火の鳥 未来編』●
施川ユウキ『銀河の死なない子供たちへ』▲(2024/11/02→◎)
Posted by ブクログ
知っている漫画も結構紹介されていた。
そんなふうに読んでいたわけではないけれど
ただ楽しく読んでいるうちに
倫理を自然と考えさせられてたのかな。
まだ読んでいないものも読みたくなりました!
著者は答えを明記しない。
こういう漫画があって、こういう筋書き。
あなたは読んでどう思う?って
自分で考え続けることの大切さを説く。
クローンの是非や、環境破壊の線引き
ロボットとの共生などが
テーマとして取り上げられていました。
Posted by ブクログ
身近な、或いは未来の為に既に議論されている倫理問題についてSF漫画を取っ掛かりに紹介する本。漫画の紹介だと思えばまぁ楽しめる。読んだことのないタイトルもあったので、読むのが楽しみ。
大抵、当該漫画の中でその問題は有耶無耶になるか極論に走った末に詰んで終わっているので、肝心の取っ掛かりになるかどうかは…