【感想・ネタバレ】罪深きシリア観光旅行のレビュー

あらすじ

2011年から内戦が続くシリア。政府と反政府勢力の対立を軸に、宗教や大国干渉といった問題も孕みながら内戦は泥沼化。国民の貧困化とともに670万人以上とも言われる難民を流出させたアサド大統領による独裁国家は、今世紀最大の人道危機を招いたとして世界中から問題視されている。

著者は、混迷を極めるこのシリアの現状を自分の目で見るために、一介の観光客として入国。わずか10日間の、しかもルート限定の観光旅行だったが、自ら果敢に戦下の町を歩き、地元の人々と言葉を交わしていく。国によって仕組まれた、作られた旅行ではあるが、わずかながらも垣間見えたシリアの今の姿を著者は見事に描写。なかでも悪名高きサイドナヤ刑務所で過酷な拷問を受けながらも生き延びたシリア人の話は圧倒的だ。
異色の旅行記であるとともに、多くの人に読んで欲しい問題提起の書でもある。

第3回わたしの旅ブックス新人賞受賞作。

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Posted by ブクログ

著者が現地で様々な立場の人と接している中で、今のシリアが抱えている問題の複雑さを垣間見ることができました

シリアの美しい景観や人々の暮らしががこれ以上傷つけられないことを願うばかりです

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2024年05月02日

Posted by ブクログ

アサド政権が倒れてめでたしめでたし、ではないみたいだということがこの本を読んでわかった。反体制派、宗教、人種、外国勢、一筋縄ではいかない。
そこそこ幸せに暮らすことの、なんと難しいことだろう。

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2025年10月11日

Posted by ブクログ

 シリア、アサド政権が崩壊する少し前、まだ内戦中の2022年に著者は観光客としてガイドと共にシリアを「旅行」する。

 ダマスカス、パルミラ、ホムス、イドリブ、アレッポ・・・内戦のニュースで幾度ともなく聞いた都市では、普通の生活している街の隣に爆撃されたり地上戦が行われた廃墟を見る。平穏に暮らしているように見える市民は今も戦火の中にある、ということを見せつけられる。

 著者はガイドもドライバーも実は秘密警察で、常に自分を観察していて、不都合があればいつでも拘束、監禁されることになるのではないかと恐れている。

 読書中、僕は著者は疑心暗鬼にすぎる、ドライバーもガイドもいい奴じゃないか、とすら思った。しかし、レバノンやヨルダンでシリアの戦禍から逃れてきた難民と付き合い、さらに実際にシリアを訪れたものの肌感覚なんだろう。そういうことが普通で、社会の隅々まで秘密警察が入りこみ、誰が秘密警察であるかもわからない相互監視社会、隣人や場合によっては家族でさえも信じることができない社会がリアルなシリアなんだということがその行間から伝わってくる。

 アサド政権崩壊後に、実際にその恐怖で支配する様がいくらか明らかになった。著者の恐れは、決して杞憂ではなかったことがわかる。実際にドライバーやガイドが秘密警察だったのかどうかはわからないけど。

 アサド政権崩壊後のシリアは、2022年のシリアよりも自由に旅行できるようになっているんだろうか? そして、市民は相互監視の恐怖から解き放たれ、自由に話ができるようになっているんだろうか?

 本書の主題ではないかもしれないけど、独裁強権政治の恐怖を知る本である。決して当時のシリアだけの話ではない。
いま、そんな国が跋扈している。

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2025年06月28日

Posted by ブクログ

アサド政権が崩壊する前の政権支配地域の様子が、旅行者の視点で描かれる。飾らず率直なレポートで、小説のように面白い訳ではないが嘘もないように感じた。シリアは長年、宗教的には少数派であるアラウィ派のアサドが政権を握ってきたためか、キリスト教徒などの少数派も含めた、人々の間に宗教や宗派の違いにこだわりのない雰囲気があったが、内戦が始まってから政府も率先して特定宗派に政治的責任を擦り付けるような態度をとるようになり、現在の悲惨な状況が作り出されたという。これからのシリアがどうなっていくのかを見ていく上で参考になった。

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2025年04月26日

Posted by ブクログ

知らない世界、、常に監視を意識して生活しなくてはいけない
この日本に生まれてよかった。奇跡だよなぁ。

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2024年04月01日

Posted by ブクログ

駅前の書店で気になって手に取りました。
たぶんネットでは出会えなかったと思うので、
書店でたまたま目に入ったことに感謝です。

シリアの町を巡る10日間の”観光旅行”。

情勢が不安定な土地を報道の人が取材するときは、
防弾チョッキを付けていたり、
政府軍が護衛についたりしているイメージでしたが、
シリアを旅する著者にはガイドがついているだけ。

周りにいる誰かが監視していたり、
工作員だったりするかもしれないし、
何が起こるかわからないという、
変な緊張感が伝わってきました。
その中で撮影してくれていた写真がカラーで見れて良かったです。
文字も大切ですけど、やっぱり写真の力もすごいですね。

著者が訪れた廃墟。死と化した町。
色もなく無言で佇む壊れた家屋に
圧倒的な印象を持ちました。

話して良いこととダメなこと。
聞いて良いこととダメなこと。
恐怖や力で支配、統治する。

最後の章では、
シリアから出たシリア人の話、
刑務所で拷問を受けた出所者へのインタビューが掲載されています。
読んでいて胸が痛くて苦しくなる話もありました。

この時代に残虐な出来事が世界で起こっていて、
人種や命を「安い」と言うような世界。
そこで生きてる人たちの言葉。

せめて知ろうとする気持ちだけは持っていたいと思いました。

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2024年03月08日

Posted by ブクログ

ネタバレ

2022年初夏のシリア旅行記。シリア旅行は現在、ガイドがつきっきりで、事前に選んだ場所にしか行けないようになっている。

2011年から内戦が続くシリアでは、アサド政権と反体制派の対立に、イスラム過激派やロシア、イラン、レバノンのヒズボラなどが介入し、混乱が続いている。


以下、印象に残った点をいくつか。

写真を見るかぎりでは、都市部ではある程度普通の日常を送れている。

現地の人が外国のスパイと疑われるような面倒をかけないため、自分から現地の人に話しかけないように著者は心がけていて、政治や戦争の話は基本的にガイドとしかしていない。ガイドによると、シリアが混乱を続けているのは、政府にとっては反体制派のせい (一部は過激派に合流した)、シリアにとっては外国のせいだということになるらしい。(アラブ人はなんでも他人のせいにしがちな側面があると著者は書いている。)

いろいろなところにロシア兵がうろついていて、ロシア語の看板なども見かける。

都市部のすぐ近郊には廃墟が広がっている。(まだそこで暮らしている人もいる)

旅行の直前まで戦時下のウクライナにいたためか、著者は秘密警察を過剰に警戒しているように思える。(自由行動中に何度か現地人とやりとりをしているが、彼らはみな屈託のない様子だ)

しかし最終章では、刑務所に収容されたことのあるシリア難民が周囲を気にしながら話している様子が描かれていて、取り締まりの厳しさ、拷問の過酷さがうかがえる。(彼は反体制的な活動をしていた) 写真では普通の日常のように見えても、ほかの独裁的な国と同じく「政治の話を口にしなければ」という条件つきなのだろう。

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2024年07月03日

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