あらすじ
嫌われた“球界の最長老”が遺したかったものとは――。
現役時代は読売ジャイアンツで活躍、監督としてはヤクルトスワローズ、西武ライオンズをそれぞれリーグ優勝・日本一に導いた広岡達朗。実に70年もの間プロ野球を内外から見続け、そして戦い続けてきた“球界の生き字引”の眼力は92歳になっても衰えず、今もなお球界を唯一無二の野球観で批評し続けている。
現役時代は“野球の神様”と呼ばれた川上哲治とも衝突した。
監督時代は選手を厳しく律する姿勢から“嫌われ者”と揶揄されたこともあった。
92歳を迎えた今、忖度なしで球界を批評する姿勢が“老害”と呼ばれることもある。だが、彼の辛口な発言は今なお多くの野球好きの耳目を引き、メディアで大いに人気を集める。92歳の発言がこれほどまでに注目を集めることは他のジャンルでは類を見ない。
大木のように何者にも屈しない一本気の性格は、どこで、どのように形成されたのか。今なお彼を突き動かすものは何か。我々野球ファンを惹きつける源泉は何か。そして、広岡が現在の球界に遺す言葉とは……。その球歴をつぶさに追うとともに、彼とともに球界を生きたレジェンドたちの証言から広岡達朗という男の正体に迫る。
【証言者】
王貞治/黒江透修/水谷実雄/井上弘昭/大矢明彦/松岡弘/井原慎一朗/水谷新太郎/田淵幸一/江夏豊/石毛宏典/秋山幸二/辻発彦/工藤公康/渡辺久信
感情タグBEST3
結果が物語る
もちろん広岡さん側からの描き方だが、それが真実なのは結果が物語る。
現在も発言を活発にしていらっしゃるが、大抵野球ファンからは「老害」とか「今は違う」という受け取られ方をされてしまう。
残念だ。時代や状況に左右されない知恵の宝庫なのに。
僕は現役時代、新規事業、パイロットプロジェクトに多く関わった「敵前上陸型」だった。広岡さんの哲学方針行動にはいちいち深く頷けるし、畏敬の念しか抱けない。
氏の言葉は文字にするときついが、実際ご本人の声で聴いてみてほしい。実に柔らかく知的だ。
マスコミの作った虚像に踊らされて、氏の声で英知を耳にしないのは本当にもったいない。
Posted by ブクログ
球界のご意見番の一人広岡達郎に関するノンフィクション。
巨人での川上監督と確執からヤクルト、西武の監督、ロッテGMでの活躍と葛藤。
マスコミが騒いた内容と実際を当人と関係者への取材から明かしていく手法。
悪人ではなく、実は・・・という意味で「正体」という言葉を題名に入れたのだろう。
ちょっと広岡礼賛のバイアスがかかっている印象。ただ特に西武ライオンズの当事者の豪華メンバーはプロ野球マニアには非常に楽しめるところだろう。
スタンレー橋本が大毎の選手(たぶん東映)になっているところなどファクトチェックが弱いかも。
Posted by ブクログ
江藤さんが言った「広岡さんも落合さんも技術は超一流、でも人間関係で苦労した」これが真理なんだろうな。
でも広岡さんのいう真理、今までよくわからないところだったが、これをもっと具体的にこの本では選手やコーチの側から話をさせることで浮き彫りにしている。松岡然り、大田卓然り、工藤、石毛、森繁和、田淵…そんな中で江夏だけはやはり、分かってはいても認めたくなかったんだろうな。
王さんが5年やって解任になったとき、広岡さんに打診があったのだという。阪神の監督にも打診があったこともあるという。どちらかだけでもやっていたら、今の巨人は、阪神はどう変わっていたのかな。でもヤクルトも西武も見る限り、ずっとは上手くいかないのだから、収まるところに収まるのだろうな。
匿名
内容紹介の日本語間違ってる
忖度と言うのは相手の心情を察すると言う意味で推測の類義語に過ぎない
忌憚なく球界を批判すると書くんだよ。そういう時は
モリカケ以降に忖度とか使う人間、覚えたての言葉を使いたがる(しかも間違って)ガキのように見える
Posted by ブクログ
辛気臭い話するおじいちゃんってイメージでしたが、読むに連れ…
世渡り上手とは言えないなぁと思った。
石毛宏典さんの「アマチュア野球があるのは広岡達朗の存在が大きい」の一言には共感した。
1周では理解出来なかった部分もあるので、2周目を忘れた頃に読もうかと思う。
今後は広岡チルドレンの本を中心に読もうかなとも思えた1冊でした。
Posted by ブクログ
球界で辛辣な意見を常に発信し続ける人と言われれば、真っ先に思い浮かぶのが広岡氏。本書は広岡氏の球歴に沿って、広岡氏の考え方、広岡氏に影響を受けた数多くの選手、コーチの証言をまとめています。
巨人で現役を引退後、広島(コーチ)、ヤクルト(監督)、西武(監督)、ロッテ(GM)と活躍の場を移していかれました。現在ならアスリートが食事にも気を配るのは当然と思われていますが、野球選手が”酒の飲みっぷり”や”夜の遊び”を武勇伝として誇っていた1970~80年代に、食事や飲酒、喫煙の管理に乗り出した広岡氏と選手が対立するのは避けられない状況であったのがよく分かります。
広岡氏の考え方は、今なら落合博満氏と似ている気がしました。「人に何を言われようと、”勝つため”に必要なことを徹底する」シンプルですがやり切るのは大変です。それだけに周囲の人間関係がギクシャクすることもあり、広岡氏もマスコミなどからどちらかというと冷徹、悪役として表現されることが多かったように思います。
人間関係や周囲の雰囲気を気にするあまり、「言うべきこと」さえきちんと言えていない事が多くなったような昨今、広岡氏のような生き方、振舞ができる人の存在は、近くにいる人は煙たいかもしれないですが、得難い貴重なものだと感じました。
広岡氏と対立した人たちの証言が少ないので、広岡氏=善、対立勢力=悪 という描き方が所々見受けられるのは少々気になりますが、そこを差し引いても広岡氏の生き方、考え方がよく伝わって来るノンフィクションでした。