【感想・ネタバレ】黙って喋ってのレビュー

あらすじ

「国民的地元のツレ」、ヒコロヒー初の小説! 平気をよそおって言えなかった言葉、感情がほとばしって言い過ぎた言葉。ときに傷つきながらも自分の気持ちに正直に生きる人たちを、あたたかな視線で切り出した共感必至の掌編18編を収録。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

話題の本。

ヒコロヒーってあの芸人の?
気怠さが妙にセクシーに見えるのは、テレビ越しに話している姿を観るだけで知性を感じるからなのかな。
芸人という明らかに男性社会の中で、あぁいう鋭い物言いが出来る人はどんな物語を書くのかな。と興味津々で読み始める。

恋愛にまつわる短編小説が全18編。

私は恋愛経験が人よりだいぶ乏しいのに、どうしてこの物語をこんなに身近に感じるのだろうか。

きっと登場人物の誰もが、ずるくて、どうしようもなくて、そんな自分に期待と失望を繰り返しているのが自分と重なるから。

間違っていることなんて分かっている、このままじゃ幸せになれないということも。
理屈を無視してただ本能のまま走っていく姿は、ある意味真っ直ぐで一生懸命なのだけど、第三者から見たらこんなに惨めなんだ。
どうして当事者になると歯止めが効かなくなるのか。

たとえ"自分"を失っても、この人と一緒にいたい!という純粋な気持ち。ドラマだったら絶対に結ばれる展開になるけど、現実にはそうはいかないことが大半。

数は少なくとも、私なりの大恋愛時代を思い出した。

結婚は恋愛の延長だと思っていたし、大好きな人が夫になったら、そんなに幸せなことはないと夢見ていた頃。

運良く、正解だけを踏み続ける人もゼロじゃないかもしれないけど、恋愛で傷ついたり傷つけたりした経験が人を強く、しなやかにすると信じたいし、安心、安全、幸せだけの恋愛をした人には出ない、独特のコクみたいなものをこれからも私は面白がっていきたい。

《印象に残ったところ・表現》

・「ばかだねえ」

-『私は今日もまた、米印みたいだなあと思う。CDに付いていた歌詞カードのサビの部分は上に米印が小さく打たれていて、後半になると「米印、繰り返し」と略されている。』
-『〜いつもその言葉を初めて発するみたいな姿勢で何かを言うけど、その大半はただの米印で、あの時やあの時と同じことを言うだけの米印部分を、懇切丁寧になぞって言ってくることさえもやっぱり、いつものことだった。』

歌詞カードの米印!!
いきなり秀逸な比喩にひれ伏す。

以下省略。エンドレスリピート。の言い換えで、無機質で機械的な様子が伝わってきた。

何度同じ嘘をつかれても許してしまう、会話の途中で「あ、これ前にも聞いたセリフ」と気づきながらもまた同じことを答える自分。その情景ごと全て繰り返す。

その曲に新鮮さを失ったなら、別の曲を聴くしかないんですよ。

・「ごめん、疲れた」

-『贅肉、それは醜くて汚らわしい。
己の意志の弱さを可視化するように怠惰の象徴として身体に纏わり付き、女性としての価値を無残にも奪い取っていく。〜こと贅肉においては意志の元に管理されているはずだ。』
-『軽はずみに足を踏み入れたこの世界では、美貌そのものが猛威をふるい、それらを中心にしてあらゆるものはくるくると回っていくのだ』

うう、耳が痛い。

生まれつきの容姿に恵まれ、女優という仕事を選んだ女性は、日々こんなことを思いながら生きているのだろうか。

この章では、恋人を自分の思い通りにさせることに優越感を感じていた女性が、いつの間にか、彼女が自分より劣っていると感じた若い女性に恋人を奪われる様子が描かれている。

自分の美貌にあぐらをかいて、"自分は常に与えてもらう側だ"ということだけで悦に浸っていた女性。

女優ほどの美貌があればそうなることも避けられないとも言えるが、一般人でも"若さ"において同じことが言えると思った。(勿論人による)

私はそういう時あったなあ。お恥ずかしい。
それなりの年齢を重ねた今、若さを失った今、あの頃から人間力を磨いてこなかった自分の愚かさにやっと気付きはじめている。

20代後半からの女性特有の焦燥感ってきっとこういう気持ちから来るんだろうな。
でも大恋愛の渦中にいる10代〜20代前半の女性はきっとこんなことに気付かない(はず)。

過去は変えられないので、この事実に気付いた今からでも、自分の理想に少しでも近づくためコツコツ努力していきたいところです。(贅肉を落とします)

・「黒じゃなくて青なんだね」

-『「黒じゃなくて青なんだね。」』

こういう自分にしか刺さらないようなフレーズや感性で恋に落ちる瞬間を見るのが大好き。

感性を好きになってしまったら、もうその人からは離れられない。
という言葉をどこかで聞いたことがある。本当にその通り。

ちなみに私は、今の夫の「うさぎが前のパターンも見てみたい」という言葉で恋に落ちた。
きっと説明しても誰にも伝わらないし、興味もないと思うので割愛。懐かしくて書かずにいられなかった。

-『私は遥希が好きだったけれど、遥希が側に置いていた私という人間はいったい誰だったのだろうか。私が私の何かを遥希のために変えたり取り繕ったりしなくとも、という思いが、後から後からこぼれてくる。』
-『でも私というものと引き換えに遥希のそばにいることを選んできたのもまた、私でしかなかった。』

おう…これぞ恋愛、という感じ。
好きな人の好みの女性になろうと必死になるあまり、本来の自分を失ってしまう。
それほどの恋愛ができたのなら、それはもうそれでとてもいい経験だ。

でも自分を犠牲にする恋愛って本当に体力が要る。

その気持ちに応えてもらえないことが続くといつかバーンアウトしてしまうし、一度そうなると何でそこまで頑張っていたのだろう、と過去の自分まで否定してしまう。

この章を読んで、ありのままの自分を好きになってもらうって、奇跡に近いことなのだと、実感する。
投げたティッシュがゴミ箱に入らなくてもそのままにしておく私や、痩せたいと言いながら一緒にパフェを食べに行く計画をする私のことを受け入れてくれる夫に感謝の気持ち。

私は、消耗する恋愛と心が落ち着く恋愛、どちらも経験できてよかったなと思う。数として全然経験していないのにこんなふうに語るのがマジで恥ずかしいのでこのへんで。

《メモ》
致死量のクズ男に翻弄される女性たち。
幸せになれないのは分かっているけど、この一言が言えない、決めきれない、離れられない。
煮え切らない態度にモヤモヤするというより、「分かる分かる、でも頑張ってよ…幸せになってよ…」と応援したくなる気持ちで読み進めていた。みんな人間くさくて愛らしいんだよね。
恋愛は、正論で太刀打ちできる相手じゃないのだと思う。それでももし友達が泥舟に乗りかかっている時、私は友達の気持ちに共感するべきなのか、本当のことを言うべきなのか、これにはまだ答えが出せない。
幸せの定義って人によって違う。きっと恋愛もそうだからね。

あとがきも読んでいてすごく心地よかった。ヒコロヒーさんの文章、好き。次は恋愛ものじゃないものを出してほしい。ぜひ読みたいです。

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2026年10月06日

Posted by ブクログ

ネタバレ

恋愛小説の短編集。
いけない恋愛をしていたり、ダメな男に溺れてしまったり、だけど我に返ってダメ男と縁を切ったり、色々な人の恋愛のお話。
20代前半の、恋愛で失敗したり失恋してる時とかに読んでいたら、もっと影響を受けたかも。
恋愛小説をこんなにも色々書けるなんてすごいなぁと思っていたら、あとがきで、ヒコロヒーさん、恋愛経験ほとんどないと書いていてびっくりでした。なぜ恋愛経験がほとんどなくて、こんなに色々な恋愛小説を書けるの!?すごすぎる。
かなり短いお話もあるのに、全部引き込まれて、もっと読んでいたいお話が多かった。長編も読みたい。

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2026年08月11日

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