あらすじ
2011年3月の東日本大震災から1年。2012年2月28日に「福島原発事故独立検証委員会」(民間事故調)は、
独自に調査・検証をすすめていた東京電力福島原発事故について「調査・検証報告書」をまとめ発表した。
当初、非売品として限定部数のみ作成されたが、各メディアで報道がなされると問い合わせが殺到。
「国民の視点からの検証」である報告書を広く世論に訴えたい、とディスカヴァーからの発売が決定いたしました。
福島第一原発の中で必死に働いた作業員の方の体験談をプロローグとして始まり、
経緯をまとめた「第1部 事故・被害の経緯」、官邸の事故対応を含めた「第2部 原発事故への対応」、
原子力ムラの構造に踏み込んでいく「第3部 歴史的・構造的要因の分析」、国際協力の枠組みを検証した「第4部 グローバル・コンテクスト」。
民間事故調の「真実、独立、世界」をモットーとする独自の視点からまとめられた報告書です。
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Posted by ブクログ
全体的に,事故後の報道に出て来たことをよく整理していて,こんなに安価に報告書が出ていることは驚きです。
細かい事項にも言及していて,よく整理しています。今回の事故で話題になった専門性のある事項もいろいろ記録しています。
関係者の方々も自己点検のために一度読んでみるとよいでしょう。
ps.
少し読んで行くと,だんだん違和感が高じてきます。議論が表面をなでるだけで本質的な事項に踏み込もうとしていないような気がします。
おかしなことにも遭遇します。法律や規格,規則の不十分さ,理論や技術の不完全さを掘り下げていない。初歩的な手法であるなぜなぜ分析,FTA, FMEAやHAZOPを使って問題を掘り下げた形跡が見られない。
安全関連規格を適用して設計しているはずなのに,なぜ事故を事前に防ぐ手立てをしていなかったのか。ヒューマンエラーについて言及しているが,ヒューマンエラーがあったとしても安全に運用できる設計をしているはずなのに設計の法を問題にしない姿勢が不思議。事故運用を想定した設計だったはずなのに,どういう仕組みで何を本来の在り方から変更したのかの解明が不十分かも。
専門家も入ったはずなのに,どういう手法をどこまで使って検証して報告を書いたのかが明確でないのはなぜなんだろう。
調査報告書であって検証報告書ではないからだろうか。
評価は調査報告書としては星5つ。検証報告書としては星1つ。
技術的な検証を記載していないので,技術系の出版社から出ることはありえないのだろう。
よくこれだけ安価に調査報告書をまとめたという努力は評価したい。次の印刷で「検証」の文字を削るとよいかもしれない。