【感想・ネタバレ】[新訳]大転換―市場社会の形成と崩壊のレビュー

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Posted by ブクログ

ネタバレ

現代資本主義がどのように生まれてきたかを述べる、ポラニーの大著。
A・スミスなど古典派は、「人間には交換性向がある」としたが、ポラニーは未開人の「互酬・再配分・家政」などの文化から、人間の交換性向は、後付に依るものだと結論づける。

ポラニーはマルクスの唯物史観を一定程度評価しているようだが、マルクスが分析したイギリス資本主義でさえ、一定程度の社会保障が存在したことは、ポラニー曰く「分析されていない。」とする。エリザベス救貧法に代表される、貧民への給付である。これは自由主義者などから批判はされつつも、存続した。資本主義はつねに単独で存在するわけではなく、社会との密接な関連の中で生まれていた。もちろんマルクス研究者の中には、上部構造の反作用性を主張する者もいるが、どれほどまで、マルクスはプロレタリアの革命を期待したのか、少し疑問に思った。

またポラニーは「労働・土地・貨幣は擬制商品である。」という。本来売り買いされるものではない。むしろ生産の本元要素である、とする。囲い込み運動で労働者が大量に吐き出されたことも特筆されがちだが、土地もこの時期に売り買いされるようになった。

ポラニーは、このように「経済と国家の密接な関連」を紐解くことによって、その資本主義の「後天性」「植えつけられた物」であるとする意見を声を大にして云っている。新自由主義の台頭によって国家の経済への不干渉を主張するが、その不干渉の政策もまた国家によるものにほかならない。そもそも経済は国家の営みの中で生まれてきたかのようにも思えるし(未開経済)、そんなことは不可能なのかも知れない。認識を根底から改める必要性が、あるように思える。現に、ニューディール政策やファシズムの台頭は、自由主義経済への不安から生じた。
もう一度、その「資本主義の特殊性」のヴェールを取り、どのように成立していったのかというのを、読み取る必要がこの本からありそうだ。

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2011年07月25日

Posted by ブクログ

ネタバレ

この時期読み返してみました。

本書は、19世紀文明(自己調整的市場を母体にバランス・オブ・パワー・システム、国際金本位制、自由主義国家)の誕生とその興隆、そして20世紀前半におけるその滅亡の物語です。
ボリューム/お値段とも半端では有りませんが、内容は「目からウロコ」、編集は「良」です。

【「目からウロコのご紹介】
○滅亡の原因を「自己調整市場」という考え方がまったくの「ユートピア」であったとしている。
○自己調整市場の制度は、社会の人間的存在と自然的実在を壊滅させること無しには一瞬たりとも存在せず、「経済人」に依拠する人為的な社会は、19世紀のイギリスが生んだ突然変異であるとしている。
○自然で生来的な社会は、「互酬」「再分配」「家政」「交換」の4つの原理で経済をモデル化する必要があるとしている。
○近代の経済学は、擬制商品(労働、土地(自然環境)、貨幣)が本来商品と全く同じように機能すると言う間違った前提に立っているとしている。

最近の「経済学の教科書」にはお目にかかれない「着眼点」です。

大変難しくボリュームのある本なのですが、「序文」「紹介」「訳者のあとがき」だけでも全容が把握できます。さらに各章の先頭ページに良くまとまった「訳者による梗概」が有ります。

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2013年02月13日

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