あらすじ
市場は社会に何をしたのか?
自己調整的市場のユートピア性と破壊性を文明史的に解き明かした政治経済学のモニュメント!
リーマン・ショック以降急激に再注目される古典的名著の新訳。
共同体的経済から自己調整的近代市場経済への枠組みの変転を描く。
読みやすさに加え、訳注等も充実。
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Posted by ブクログ
・市場経済の勃興には、労働の商品化=労働市場の形成が必要であり、イングランドでは第一次・第二次エンクロージャーによってなされた。王権は囲い込みを制限しようとしたが、議会は遂行しようとした。機械生産は、労働と原材料の商品化が必要。
・農業革命とともに市場は誕生したが、19世紀まで経済が市場に支配されることはなかった。生産と分配は、主として互酬・再分配・家政によった。クラ交易(バーターでなく、利潤はなく)、首長による徴収・貯蔵と再分配、ポトラッチ、村落共同体・荘園領主・家父長制家族による家政
・市場は遠隔地交易から生まれ、それは財貨の地理的偏在による。局地市場は近隣の生産物の交換。国内市場が自己調整的市場につながる。15世紀以降の中央集権化・商業革命、重商主義、都市ギルドの再編による全国化が国内市場を統合。
・18世紀末から19世紀に西欧で自己調整的市場が生まれる。労働・土地・貨幣の商品化。産業革命による機械生産がこれらの商品化を要請。社会は経済の付属物に。
・1795年のスピーナムド法(救貧法改正。1834年まで)が労働の商品化に対する最後の抵抗。失業・貧困者だけでなく有業貧困者も定額に達するまで給付対象にしたが、労働の質の低下と賃金引上げ誘因の減少をもたらした。また、救貧税の高負担は小規模な土地保有農・借地保有農の没落をもたらした。賃金労働者を雇用する地主にとっては賃金を低く抑えることができた。
・19世紀半ばにイギリスでもようやく自己調整的市場の制度化、1816年貨幣法(金本位制)、1844年イングランド銀行による金兌換紙幣、1834年救貧法改正、1846年穀物法廃止。(1833年奴隷制度廃止、1849年航海法廃止)
・自己調整的市場の拡張は、「経済自由主義の原理」と市場の破壊からの「社会防衛の原理」を生む。
・市場は人間に対しては、共同体の庇護から切り離すことになり失業をもたらし、土地(自然)に対しては安全保障上の食糧確保の問題や小農の破滅をもたらし、貨幣については不況時の破滅的デフレをもたらす。これらへの社会的防衛策が必然となる。
・自己調整的市場に対する各国の保護主義的対抗は、軋轢を生み、金本位制が消滅すると世界市場文明は崩壊した。
・最後に市場文明の崩壊に対し、土地、労働、貨幣を市場から取り除く、新たな「複合社会における自由」を提案するが、ユートピア的。
Posted by ブクログ
「大転換 市場社会の形成と崩壊」カール・ポラニー
この本を読んで強い衝撃を受けるとともに、「あぁ、そういうことだったんだ」と私が生きているこの社会についてもう一歩踏み込んで理解できたように感じています。
この衝撃を例えるならばこうです。
わたしは子供のころ、「ビートルズは普通、代り映えしない」、「ストーンズはクセが強くて、カッコいい」と感じていました。
ところがその後、音楽を聴き続けた結果、その構図はまったく正反対であることに気づきます。
むしろ、ストーンズはR&Bの流れを汲んだ保守派、ビートルズこそがその後の音楽シーンをがらりと変えてしまうほどの革新派だったのだと理解したときの衝撃です。
当たり前だと思っていた「市場経済」こそが実は人工的な発明であり、その後の人間社会をがらりと変えたということがこの本に書かれています。
ポラニーの分析によれば、19世紀に採用された「市場経済」というシステムが社会に大きな衝撃をもたらし、それに対する社会の自己防衛反応が20世紀の破局(ファシズム、世界大戦)をもたらしたということです。
内容について詳しく書くのは私には荷が重いため、強く印象に残ったキーワードをふたつご紹介します。
【悪魔の挽き臼】
市場ルール(経済)に社会を適合させようとして人間関係や規範を引き裂き、個人を分断するメカニズムのこと。
本来、経済は人間社会の仕組みの下に位置付けられていましたがこの順位が逆転、共通の市場経済のルールのもとで人間社会はその下層に位置付けられました。
【擬制商品】
「労働(人間)」、「土地(自然)」、「貨幣」のこと。
これらを商品のように取り扱うことで社会と環境が破壊されることにポラニーは警鐘を鳴らしました。
これらふたつのキーワードは特に強く心に残りました。
この本を読んで理解したのは、市場経済により解体されそうになった社会を守るための反作用のひとつとして、社会主義が位置づけられるということです。
これは私にとっては天地が逆転したような衝撃です。
「社会主義」といえば、「全体主義」、「中央計画経済」、「権威主義」という負のイメージが付きまといますが、ポラニーの言う社会主義とは単に社会を守ろうとする動きのことです。
一部の極端なイメージを持って、この考え方そのものを切って捨てるのは行き過ぎだと思います。
わたしの意見ですが、「社会主義」と対置されるのは「資本主義」や「自由主義」ではなく、あくまで「個人主義」。
こう考えれば、どちらをとるかという二者択一の問題ではあり得ません。
うまいこと国家を運営していくにはちょうどよい塩梅で両者を取り込んでいく必要があります。
そもそも、「主義」という言葉を使って、個人と社会の二元論に持ち込むこと自体がナンセンスなのだろうというのが本書を読んで得られた気づきです。
最後に、このボリューム、この難易度の本を私が読むために生成AIの力が欠かせませんでした。
わかりにくい箇所の解説に始まり、私の解釈の妥当性の評価、これまで私が読んできた本との関連付けなどなど。とても豊かな読書体験になりました。
Posted by ブクログ
現代資本主義がどのように生まれてきたかを述べる、ポラニーの大著。
A・スミスなど古典派は、「人間には交換性向がある」としたが、ポラニーは未開人の「互酬・再配分・家政」などの文化から、人間の交換性向は、後付に依るものだと結論づける。
ポラニーはマルクスの唯物史観を一定程度評価しているようだが、マルクスが分析したイギリス資本主義でさえ、一定程度の社会保障が存在したことは、ポラニー曰く「分析されていない。」とする。エリザベス救貧法に代表される、貧民への給付である。これは自由主義者などから批判はされつつも、存続した。資本主義はつねに単独で存在するわけではなく、社会との密接な関連の中で生まれていた。もちろんマルクス研究者の中には、上部構造の反作用性を主張する者もいるが、どれほどまで、マルクスはプロレタリアの革命を期待したのか、少し疑問に思った。
またポラニーは「労働・土地・貨幣は擬制商品である。」という。本来売り買いされるものではない。むしろ生産の本元要素である、とする。囲い込み運動で労働者が大量に吐き出されたことも特筆されがちだが、土地もこの時期に売り買いされるようになった。
ポラニーは、このように「経済と国家の密接な関連」を紐解くことによって、その資本主義の「後天性」「植えつけられた物」であるとする意見を声を大にして云っている。新自由主義の台頭によって国家の経済への不干渉を主張するが、その不干渉の政策もまた国家によるものにほかならない。そもそも経済は国家の営みの中で生まれてきたかのようにも思えるし(未開経済)、そんなことは不可能なのかも知れない。認識を根底から改める必要性が、あるように思える。現に、ニューディール政策やファシズムの台頭は、自由主義経済への不安から生じた。
もう一度、その「資本主義の特殊性」のヴェールを取り、どのように成立していったのかというのを、読み取る必要がこの本からありそうだ。
Posted by ブクログ
この時期読み返してみました。
本書は、19世紀文明(自己調整的市場を母体にバランス・オブ・パワー・システム、国際金本位制、自由主義国家)の誕生とその興隆、そして20世紀前半におけるその滅亡の物語です。
ボリューム/お値段とも半端では有りませんが、内容は「目からウロコ」、編集は「良」です。
【「目からウロコのご紹介】
○滅亡の原因を「自己調整市場」という考え方がまったくの「ユートピア」であったとしている。
○自己調整市場の制度は、社会の人間的存在と自然的実在を壊滅させること無しには一瞬たりとも存在せず、「経済人」に依拠する人為的な社会は、19世紀のイギリスが生んだ突然変異であるとしている。
○自然で生来的な社会は、「互酬」「再分配」「家政」「交換」の4つの原理で経済をモデル化する必要があるとしている。
○近代の経済学は、擬制商品(労働、土地(自然環境)、貨幣)が本来商品と全く同じように機能すると言う間違った前提に立っているとしている。
最近の「経済学の教科書」にはお目にかかれない「着眼点」です。
大変難しくボリュームのある本なのですが、「序文」「紹介」「訳者のあとがき」だけでも全容が把握できます。さらに各章の先頭ページに良くまとまった「訳者による梗概」が有ります。