【感想・ネタバレ】源氏供養(下) 新版のレビュー

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Posted by ブクログ

上巻に続いて読む。すでに満腹なんだけど、上巻にあった話が更に深く掘り進められて個所もあり、やっぱり橋本さん凄いわ。
盛り沢山なんだけど、上巻と同じく自分の忘備録として箇条書きにする。

・夕霧に対する光について「自分のことは棚に上げて」と花散里に云わせておいて、「実は意外なほど何もおしゃらなかった」とある。つまり、光源氏は息子をよその女に取られたくなくてつまらない嫉妬をしている。その後、六条の院での女だけの演奏会に夕霧を臨席させる。橋本さんは息子に自分の妻を「許す」ような態度をとっていると読み解く。
・春夏秋冬の4つの町に女主がいる六条の院。しかし、端から見れば“やっかいな”骨董いじり“。華麗な女遍歴の結果はこんなもの。
・女性の美しさは、1.髪が豊かで長いこと。2.身分。3.知性。
結論は美人の条件は“ただ、美しいと噂されること”。
・螢兵部卿は玉鬘に恋するが、つまり光源氏の娘だから。光源氏はそうと知ってその美しさを知らせる演出をする。男たちを身もだえさせたいと望む。玉鬘の意思はかけらもない。
・若い時の光源氏の孤独が語られる。性欲を知り、恋の狩人となるが、夕顔と出会い「心の恋」を知り、遍歴は終わる。光源氏は漁食家ではない。女性を「人」として見るが、その間柄は「男と女の関係」でしかない。「女は“人”か?あるいは“女”でしかないのか?」という問題が示される。
・光源氏のエディプス・コンプレックスという巷間説は否定する。藤壺は光源氏の母として登場していない。光は母の顔を知らない。父の桐壺帝を憎んでいない。愛してもいないかも。ただ、愛されたい思う。
・仲の良い二人の男が一人の女を争うのは、その女を媒体に男同士の親密さを増すため。玉鬘を冷泉帝の尚侍とし、冷泉帝と光源氏の二人の男で「一人の女性の共有」を図ろうとする。
・光源氏は外部の男と繋ぐパイプがない。全てを持っている絶世の美男には「人を惹きつける個人的魅力がない」。三角関係のなかで関係が作られる。
良好じゃない関係でも関係ということなのかな。レビィ・ストロースの「女の交換」が頭に浮かぶ。女は他の財では代替されないという言説もあったな、しかし、橋本さんはこういう教科書的な解釈は歯牙にもかけないだろう。
・光源氏と玉鬘の関係は父娘と夫婦のふたつの関係が錯綜している。その後に錯綜なんてものは無くて、そもそもそういう区別がないとある。「-の女」という表記は妻でも娘でも有り得て、性的関係があろうとなかろうとどうでもいい。
・幼い紫の上が父上に引き取られずでいた状態は、光源氏が父である帝から臣下に降ろされる状態と同じ。若く美しい「父のような王子様」に育てられる。少女たちの夢ととして紫式部はまず若紫の物語を描いた。しかし、幼い紫の上は「なんていやなことをするのだろう」と思いながら、源氏に抱かれ、そうやって「女」になってしまった。源氏は恋文を送り、結婚の儀式をさりげなく進める。源氏の心遣いに女房たちは感激するが、紫の上の心はそこにない。

書き漏らしたことも幾らでもある。だけど限がないのでここまで。
源氏物語は小学生の頃子供向けの本を読んだきり。こんな本と知らなかった。紫式部は凄い。橋本さんも凄い。
橋本さんの窯変源氏物語を読むべきかな。でも14巻なんだよな。

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2024年03月17日

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