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美術史の一部として、動物を正面から捉えており、私の関心に合っていたので本当に良かった。アジアには、あるいは少なくとも日本には、キリスト教文化圏と異なる動物への考え方があるという歴史を垣間見た気持ちになった。他方で、この分野は研究があまり進んでいないのかもしれない、と少し感じる部分もあり、他の本も進んで読みたいと思う。
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著者は府中市美術館学芸員の金子さん。毎年春の江戸絵画展で楽しい切り口の展示を見せてくれる人です。そういえば上様(徳川家光)のぴよぴよ鳳凰を最初に見たのもここだった気が。そんな著者による江戸時代以外も含めた動物を描く絵画の通史です。
動物を描く絵画を単に可愛いや可笑しいの視点ではなく仏性を絡めて評価しているのが斬新でした。確かに仏教絵画は動物の宝庫でしたね。
通史としては明治以降の分量が少ない気もするので(藤田嗣治の猫とかも気になる)、何方か近代編を書いてくれないかしら?
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面白かった、さまざまな日本の絵画モチーフになった動物たちについて。
宗教画、仏教絵画、禅画、縁起物、本草学
「鳥獣戯画」、若冲の「動植綵絵」、応挙の子犬、家光画伯作品。
ちょっと小さくて見づらくはあるが、フルカラー90点超、
コスパはすばらしい。
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<目次>
第1部 信仰と動物、失われた美術~古代・中世
第1章 海を越えて来た動物の絵
第2章 《鳥獣戯画》のどこがすごいのか?
第3章 失われた愉快な世界
第4章 鹿と竜~神の使いと仏の守護神
第5章 涅槃図に描かれた動物
第6章 禅宗と動物の絵
第2部 平和な社会と多彩な動物絵画~近世
第7章 獅子と鳳凰
第8章 縁起物から生まれる創作
第9章 図鑑に心を遊ばせる
第10章 本物に迫る
第11章 花開く自由な造形
第3部 動物の心と人の心~近世から近代
第12章 「禅画の虎」の遺伝子
第13章 絵の中の動物を愛おしむ
第14章 禅画の動物が教えてくれること
第15章 仏の国の動物
第16章 動物を使った風刺画
第17章 近代の芸術家と動物
<内容>
江戸絵画を専門とする府中市美術館学芸員。多くの日本の動物絵画の展覧会を計画、実行してきた。文中で江戸時代までは「かわいい」の視点などないが、仏教などの考え方はあったにせよ、見る側が楽しくなる作品が多い。ところが、近代になり西洋の美術思想が流入すると、その面白さ、楽しさが消えてしまうという。従ってこの本は、近世までに重点が置かれる。図版も多く、思わず頬が緩む作品の多いこと。また円山応挙の思想とか、それを飛び越えてしまった弟子の長沢蘆雪とか、そうした話も垣間見えるのがよかった。