【感想・ネタバレ】ブッダという男 ――初期仏典を読みとくのレビュー

あらすじ

ブッダは本当に差別を否定し万人の平等を唱えた平和主義者だったのか? 近代の仏教研究は仏典から神話的装飾を取り除くことで、ブッダを平和主義者で、階級差別や男女差別を批判し、業や輪廻を否定した先駆的人物として描き出してきた。だがそれは近代的価値観を当てはめ、本来の内容を曲解したものにすぎない。では、ブッダの真の偉大さは一体どこにあるのか。これまでのブッダ理解を批判的に検証し、初期仏典を丹念に読みとくことでその先駆性を導き出す革新的ブッダ論。

...続きを読む
\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

Posted by ブクログ

歯切れ良くわかりやすい論だった。一気に読みました。「はじめに」と「あとがき」含めて、氏の論旨が完結する。

0
2025年05月18日

Posted by ブクログ

近代以降に進んだ歴史的ブッダ像の理解を初期仏典の読みときにより批判的に検証し、同時代の視点から見た先駆性を明らかにしようとする一冊。本論も非常に興味深いが、文献を批判的・客観的に読むことの困難さについても示唆に富む内容。

0
2025年02月02日

Posted by ブクログ

ブッダという1人の人間を神話ではなく歴史の視点から見つめ直す本
原始仏教の経典を読んでいる訳でもなく、当時のインドに対する造詣が深い訳ではないので信頼性を担保する事はできないが
通ると死ぬ道の正体が火山ガスの溜まる場所であったり、石油地帯の近くだと自然発火現象が発生しやすい為拝火教が勃興した様な
性、不可思議性を理屈で剥いでいくのが好きなので好みの本だった

0
2023年12月20日

Posted by ブクログ

初期仏典に関する解釈の批判について当時の考え方を念頭に置く必要ありという論旨は納得できる。歴史上の人物についての解釈は解釈した当時の風潮による(日本で言えば織田信長辺りが好例だろう)のでブッダが現代的感性を持っていなかったというのは、その通りだろう。それでもブッダの思想の価値が減じる事もない。本人の執筆した著作がないので弟子たちの思惑もあるだろうし。
原始仏教についてこういう見方もあるのかと鱗な一冊。

0
2025年07月20日

Posted by ブクログ

散文優先の現代的研究に基づく初期仏説の解説。近現代の歴史的解釈の仏説は、現代的価値観、それも理想的なバイアスがかかっているという立場。

終章及び参考文献が特にまとまっている。かつての日本の研究者達を大胆に否定しまくっており、出版妨害があったというのもわからなくもない。

初期の仏説において、そもそも何が正しいのかわからないということは大前提であり、何かしらのバイアスがかからないとまとめられないだろう。
人間の理想の投影的なバイアスはなかなか気付きにくい分とても鋭い。
また、捨て去ろうとした神話的部分に価値を持って解釈しようとする見方も新しく、もっと広げて研究が進んでいったら面白ろそう。

0
2024年08月09日

Posted by ブクログ

あと書きから著者の悲願の一冊であることが感じられた。

たしかに、ゴータマ・ブッダを神格化し、現代の時代状況にも適切な価値観を持った人物だと論じるのは無理がある気がする。

インテグラル理論を学ぶなかで、社会の発達状況が過去と現在では異なり、その時代を生きる人は、その時代の影響を少なからず受けていることは当然なのかもしれない。

何かや誰かに自分の世界観の投影をしてしまう。人間の性。

0
2024年05月13日

Posted by ブクログ

ブッダをよく理解していないにも関わらず、無意識に美化していることはある。それを否定する意見を表明しにくい空気もある。その空気は圧力に近い。

0
2024年03月18日

Posted by ブクログ

『ブッダという男』清水俊史
ブッダは本当に平和主義者だったのか?
初期仏典を読み解くと実際は暴力や戦争を完全否定はしておらず、女性差別者でもあった。
当然時代も違うからブッダとはいえ現代の価値観にそぐわない考えもあったという視点が面白かった。
とはいえ無知を打ち払い煩悩を絶てば輪廻は終局する、極端な楽と苦を離れ中道を歩むなど、現代人の理想とする新しい価値観をすでに見出していたことにやはり心打たれるものがありました。
仏教については完全素人ですが、思いの外ブッダの言葉に引き込まれた。
ブッダに興味を抱くきっかけになったと思います。

0
2024年02月11日

Posted by ブクログ

第2部で述べられたブッダを現代から善意で解釈してしまう誤りの指摘が痛快。
第3部のブッダの先駆性は、これまでの解釈を正確にしたような印象。
記述はやや専門的。文章量はやや少なめか。巻末の参考文献が詳細で豊富。

0
2024年02月06日

Posted by ブクログ

従来の釈尊および初期仏教の研究が、近代以降のヒューマニズムを無反省のまま釈尊の教えのうちにもち込んでしまっていることを批判するとともに、とくに無我と輪廻をめぐる釈尊の思想が、当時のインドの思想史的状況のなかでどのような画期性をもつものだったのかということを論じている本です。

著者が批判の俎上にあげているのは、「ブッダは平和主義者であった」「ブッダは業と輪廻の存在を否定した」「ブッダは階級差別を否定し、平等思想を唱えた」「ブッダは女性差別を否定した」という四つの主張です。著者はテクストにもとづいて、これらの解釈が「現代人ブッダ論」にすぎないと批判します。

一方で著者は、「歴史的関心を持ってブッダの実像に迫ろうとするならば、初期仏典を字義どおりに受け入れるのではなく、批判的にこれを読む必要がある。しかし、“批判的に読む”という営為は必然的に解釈を要求するため、先入観なく「歴史のブッダ」を復元することは事実上不可能である」ことを認めています。そのうえで、初期仏典は釈尊の弟子たちが彼の偉大な業績を示すために編纂したということに目を向け、当時のインドの思想史的状況のなかで初期仏教の画期性がどこにあると考えられていたのかということの解明へと進んでいきます。著者は、バラモン教やジャイナ教と仏教のちがいについて検討をおこない、バラモン教において恒常不変である「自己原理」を釈尊が否定する一方、「業報輪廻」にもとづいて五蘊が構成されることを認めていたと主張します。

著者は、「当時の宗教家・思想家たちの最大の課題は、どのように輪廻という苦しみを終極させるのかであった」と述べており、こうした課題に対する釈尊の回答を明らかにすることが本書のねらいだということができます。ただし「自己原理」を否定する以上、輪廻によって生じる苦はもはや「自己」の苦ではないはずです。本書の示す釈尊の回答が、当時の思想史的状況のなかで画期的なものと受け止められたというのであれば、その理由についてもうすこし立ち入って考察することが必要だったようにも感じます。

0
2025年04月02日

Posted by ブクログ

真摯な本だと思う。史的ブッダについて確かなことは分からない、そしてその革新性に想定できるところはあるにせよそれに現代的な意義はないと、私は受け止めた。

ただ、結局のところ仏教とは何なんだろう。ブッダに関するn次創作は今も続いていそうだが、神話的ブッダがブッダでなければならない理由はあるのだろう。

0
2024年09月09日

Posted by ブクログ

人間ブッダを深掘りした内容を期待したが、残念ながら資料が乏しい為、消化不良の感じだった。

その中でも階級差別、平和主義、男女平等という視点を現在の倫理と比べている点は楽しませてもらった。
これを読みながら今の常識が絶対な訳ではない!未来の人々から21世紀の倫理はこの程度かと思われるんだと考えてしまった。

後半の無我、縁起についてはちょっと私には難しすぎた。

0
2024年09月08日

Posted by ブクログ

ブッダが本当に得た知恵ってなんだったんだろう?というのは、なんだかとても惹かれる問いで、そのあたりを探求している本はわりと読んでしまう。

その代表が中村元の本であるわけだが、それに真っ向から議論を挑む本。

ブッダは本当は?と言っても、本人が書いた本があるわけではなくて、弟子たちがこんな話しを聞いたというのがベースとなる。そういう経典などで成立が古そうなものを対象に後代の加筆部分を外し、直接の弟子が付加しただろうものを推測し、超自然的な要素を排除していくことでブッダの実像に迫っていこうという方法論がこれまでの主流であった。

これに対して、著者は、上記の方法論によるこれまでの研究は、成立のはやい韻文を重視することになるが、韻文は仏教以前にも同様のものがあり、韻文の性質上、恣意的な解釈を可能なものにすることから、散文を中心にすべきと主張する。そして、仏教以前の宗教や同時期の宗教との比較を通じて、歴史上のブッダに迫っていくという感じ。

著者によるとどうしても我々は今日の常識をベースに、こうあってほしいという思いをブッダに投影する傾向にあるという。そうだろうなと思う。

本書の前半は、平和主義、輪廻、階級差別、男女平等などに関して、現在の価値観をブッダに投影されたものを批判していく話しで、なかなかの説得力があって、そうだろうなと思った。

後半では、いよいよ何が本当にブッダが独創的なだったのは何かという議論に進む。ここもなるほど感はあるが、なんとなくそこまで説得力はない気もする。人の議論を批判することはできても、自分で新しい議論を打ち立てるということの難しさを確認したかな?

あと、方法論の違いはあるものの、結局、たどり着く結論部分は、そこまで衝撃的ではなくて、他の本でも、そういう話しは聞いたことあるかな?とか思った。

後書きで、他の研究者との間での諍いが記載されており、あんとなくそういうのって仏教的ではないな〜と思った。これも私が持っているブッダへの期待みたいなものから生じているのかな?

でも、上にも書いたように、結論的な部分がそこまで独創的な解釈とは思えないので、そこまで喧嘩しないでいいのに(これは著者だけでなく、批判者も含め)と思ってしまうわけだ。  

0
2024年02月27日

Posted by ブクログ

ブッダというのは、みなさんご存じ、ゴータマ・シッタールダ、仏様でございます。私が思い描くブッダのイメージはというと、手塚治虫の「ブッダ」、光瀬流/萩尾望都の「百億の昼と千億の夜、さらには「聖☆おにいさん」・・・。すみません、漫画ばかりで(「百億の昼と千億の夜」は小説も読んでます)。
 私はよく知らなかったんですけど、ブッダってすごい超能力者と思われてるそうですね。ていうか、お生まれになってすぐに立ち上がり「天上天下 唯我独尊」とおっしゃったとか、そりゃ、ただ者じゃないに決まってますわよね。そんな低レベルな認識の私が読みました。感想は「へー、そうなんだー」でございます(頭悪くてすみません)。
 ものすごく簡単に言うと「ブッダという人(実在の人物)」に関して、仏教学者、哲学者、フェミニストのみなさんが「ブッダのここがすごかった!」と主張する方向性が「自分たちの思い描く理想的な近代(現代)人」になっているんじゃないですか?それ、本当ですか?という立場で「初期仏典」をつまびらかに検証して、現代の価値観では都合が悪いこともきちんと整理した上で、ブッダの本来(に近いであろう)実像を明らかにしながら、尚且つ「ここがすごかった!」ということを改めて認識させてくれる本、という風に、私は解釈しました。
神話化されたブッダ、それはそれでとても魅力的なのですが、理想や先入観を取っ払って実像に迫ったブッダ像を知ることによって、私たちは仏教に新しい価値を見出すことができるかもしれない。ただただ、お墓参りやお寺巡りでしか触れることのない「仏教」ですが、「人の心を救う」という宗教本来の目的に立ち返るためには、仏教の開祖であるブッダの真の姿をできるだけ正確に知ることは、決して意味のないことではない、と思いました。
寝る前に読んでいたのですが、何度も寝落ちしかけて(よく眠れるんですよ!)、読み終えるのに時間がかかりましたが、大変有意義な本でした。

0
2024年01月27日

Posted by ブクログ

人間ブッダに迫る道は、中村元が切り開いた方法論「散文より韻文資料をより古いものとする」が少なくとも読書家には流布している。
しかし著者はこの方法論を批判し、法句経もスッタニパータも切り捨てる。重視するのは律の資料。
大学の仏教学ではこの論が主流になるのだろうか。

0
2023年12月30日

「学術・語学」ランキング