あらすじ
トランシルヴァニア山中の城に潜んでいたドラキュラ伯爵は、獲物を求めて英国ロンドンへ向かう。嵐の中の帆船を意のままに操り、コウモリに姿を変えて忍び寄る魔の手から、ロンドン市民は逃れることができるのか。吸血鬼文学の不朽の名作。
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Posted by ブクログ
誰もが知っているゴシックホラー。
1897年、100年以上も前の作品なのに読者を惹きつける魅力は健在。
複数人の手紙や日記を時系列順に並べたという作り。知らずに読めば全体像がなかなか見えないけれど、吸血鬼がどういうものか知っている私たち読者には「ああ!それって!」「やだなーやだなー」と心当たりがありまくり、ドキドキハラハラするしくみになっている。
冒頭はまるで旅行記。東欧を旅した時の感動を味わえる。ただ、作者自身は東欧へは行ったことがなく、全て想像で書いているらしいです。ありゃりゃ。でも、けっこうリアルに描かれている感じがします。知らんけど。
ひとつの舞台となる東欧はイギリスから見たらアジア同然ということなのか、アジア人の私が知っている日本の妖怪っぽい習性などが描かれていてかなり興味深い。ネタバレすると「吸血鬼は招かれないと他者の家の敷居を跨げない」とか「水を怖がる」とか。そして無知で恥ずかしいんですが、プロテスタントは火葬文化だそうですね。対するカトリックは土葬。そのプロテスタントvs. カトリックという構造になっているとか。
さらにネタバレしますと、物語は大きく二段階に分かれており、ドラキュラ伯爵はルーシーとミーナ、二人の女性を狙います。彼女たちを救おうとする男たちの奮闘という物語。
ミーナはとても聡明な女性という描かれ方ではあるけれど、基本的には「女は男が守ってやらねばならぬ存在」であり「女性は男性より頭脳も肉体も精神も劣る」というスタンスなので、若干けっと思わなくもないけれど、そこは「時代なので」で納得するしかない。
話が少し逸れましたが,全体を通して、ドラキュラ伯爵自身はあまり登場しません。初めの方で法律家が遠路はるばるドラキュラ城を訪ねるシーンで一番出てくる。そこではまだ人間として振る舞っており、彼が怪物だと分かってからはほとんど出てこなくなります。で、これまた盛大にネタバレすると、最後には伯爵はやっつけられちゃうわけですけれど、かなりあっさり。追い詰める部分は執拗に詳細に述べられているのに、実際に手を下す部分は1ページにも満たず、伯爵は一言も発することなくやられます。ちょっと意外だし物足りない…
翻訳の文章はかなり読みやすい。訳者いわく「読みやすさを最大限に重視し、原文への忠実さは若干犠牲にしている」とのことだけれど、読者としては「ありがとうございます!」です。翻訳ってそういうもんでしょ!ありがとね!と訳者の肩を叩きたくなる(不遜)。
注の入れ方も抜群にうまい。こういう古典作品の注は、冗長になりがちだと思うんですけども、本文を読み進めるうえで邪魔にならない最低限かつマニアが気になる考察を入れてくれてる。好きです✨
解説もかなり面白いので、ともすれば本文よりも熱心に読んだかもしれない。他の吸血鬼作品も読みたくなりました。見逃したNHKの『100分で名著』も今更だけど見たい!この翻訳者さんが解説で出ているらしいです。
次は『愚かな薔薇』あたり読もうかしら。日本の吸血鬼文学✨
Posted by ブクログ
ドラキュラ伯爵が長年の準備をして
トランシルヴァニアからロンドンに
やってくる!
不動産の手伝いをさせられた弁護士
ジョナサンが
命からがら逃げて戻ったところから
悲劇が始まる
血を吸われて吸血鬼となってしまった
美しいルーシーをきっかけに
集まる仲間たち
ルーシーの親友であり、
ジョナサンの婚約者であるミーナ
ミーナの看病で
元気を取り戻したジョナサン
ルーシーの婚約者のアーサー
アーサーの友人の精神科医ジョン
ルーシーに求婚するが振られる
アーサーの友人のアメリカ人クインシー
こちらもルーシーに求婚するが振られる
ジョンの恩師であるオランダ人
医学博士のヴァン
これらの登場人物が
ヴァンの知識から導き出された
吸血鬼に挑んでいく
なんとかして吸血鬼に真の死を
与えなくては!この世は終わってしまう
吸血鬼は
夜しか動けない
にんにくが嫌い
十字架が嫌い
鏡が嫌い
ちまたに溢れる吸血鬼伝説が
そのままだった
宗教的な意味も大いにあるが‥
そして
血を吸われても死ななけば
吸血鬼にはならない
土葬の習慣のある東欧に伝承
火葬のプロテスタント文化圏
では伝承されていない
この小説では背が高く
痩せていて
なんかかっこいい感じになって
いるが、
実際の伝承では
だらしない恰好をした農夫
らしい
通して感じたことは
ひたすらミーナの強さ!
ミーナを守ろうとする
男性陣は必死ではあるが
なんだかんだミーナに助けられている
そのあたりは女は強しです!
おもしろかったし、読みやすかった
ドラキュラ伯爵もなんだか
かわいそうな人なのかもしれない
Posted by ブクログ
読みやすくて、あっという間の約800頁だった。
解説も含めたら800頁超え。
凄く面白かった。
誤記もあるけど丁寧な注釈で、地図もあり臨場感もある。
読み手をヴァンパイアハンターに導いていく構成といい最高に面白いエンターテインメントだった。
吸血鬼文学の金字塔でもあるけれど、古典文学に苦手意識を持つ方にも手に取りやすい内容と描写、訳だったと思う。
頁数は結構あるものの、ストレスフリーで読めるのが良い。
あまりにもハマり込んでしまったので、レファニュの「カーミラ」も買ってしまいました。
吸血鬼文学ってこんなにも面白かったのか!と初めて気付かせてくれました。
Posted by ブクログ
830ページ強のボリュームだが読みやすさを最大限に重視した内容で読む人が最後まで読み切る、読みやすさ重視の翻訳方針のため、気軽に最後まで読み通す事ができた。ドラキュラ伯爵の最強なようで、孤独的な弱みと脆さによって年を経るごとに人間に近い存在になっているという。
Posted by ブクログ
●2025年10月23日、NHK・Eテレ「100分de名著」の録画をみた。ブラム・ストーカーの「ドラキュラ」の回。
女性の描き方について興味深いらしい。
Posted by ブクログ
名作を読もうシリーズ。とっつきやすさから光文社の新訳文庫で。かの有名な人間の血を吸う怪物のドラキュラの話。800ページ超の大作だけど、面白く読めた。
Posted by ブクログ
ページ数は多いが、訳がわかりやすいのでサクサク読める。ストーリーも最後は駆け足だがハラハラ感があって楽しめる。
あとがきも非常によくできている。現代サブカルチャーでの吸血鬼の受容を含めた機知に富んだ内容。
Posted by ブクログ
名作かつ、自身が創作好きで特にドラキュラ伯爵概念が好きなのでずっと読みたかった一冊。
一度目買いに行った時本の厚みに慄いて断念しましたが、二度目にてトライ。
ボリュームがかなりありますがサクサク読める作品でした。
自分の今までのドラキュラ伯爵と原作は異なる点が多く、驚きや感心、ハラハラといった感情で読みました。
内容が登場人物の手記や手紙、書類などで構成されているため、ドラキュラ伯爵の動向が「登場人物の前に現れた時」にしかはっきり分からず、物語的には登場人物たちの「いつどこから敵が現れるからない緊張感」が伝わっていいのかもしれませんが、伯爵推しにとってはとてもモヤモヤしました。
外伝で伯爵の手記とか手紙の内容が書かれた話があれば迷わず読んだのに!ってなりました。
Posted by ブクログ
100分で名著を見て読みました。そうでなければなかなか手に取る事のなかった古いゴシック小説です。私の思うドラキュラものとは違って、確かに細部で色々と考えさせられるところがあります。起きている時のドラキュラ伯爵は圧倒的な強さを見せますが、それがマイノリティに対しての排除ともとらえられ、違った読み方もでき、それ以前に物語としても面白かったです。
Posted by ブクログ
ルーマニア帰国後に読まなければと思って手に取る。
日記、手紙、蓄音機という語られる形式で物語がすすみ、最初の方にドラキュラ伯爵がでてきただけで、あとは噛まれた女性と博士たちの推理劇だった。
パムクを読んだとき、ディッシュのアジアの岸辺を読んだとき、トルコにいきそこの人とかかわり、ルーマニアにいってそこの人とかかわったあとだと、辺境とする場所へのエキゾチズムで偏見の塊であるように感じる。
それでも一人歩きしまくったドラキュラというキャラクターがここにあったのか、という再発見が読んでいてたのしい。
ちょいちょい爆笑してしまう箇所があり、ドラキュラ伯爵が自分が手鏡に映っていないことに気づいて
「そもそもの原因はそのふざけた手鏡にある。
鏡など、人間の虚栄心が産んだ愚かしいがらくただ。こんなものに用はない!」
彼は重厚な窓をすごい力で押し開け、私の鏡を投げ捨てた。鏡ははるか下の中庭の敷石に落ちて砕け散った。そして伯爵は何もいわずに部屋を出て行った。実に迷惑な話だった。
この箇所に爆笑。あと、ドラキュラの部屋にいくのに壁づたいに移動する描写もおかしい。
Posted by ブクログ
元祖ドラキュラです。アニメやTVで子供の時から知ってるあの俳優の吸血鬼や、小野さんの屍鬼やキングの呪われた町など怖い吸血鬼を知ってるけど、そもそも元祖がどうだったのか気になってた。本家本元は意外に共通項も多く、ニンニクと十字架が弱かったり、コウモリや狼に化身する一方で、血を1回吸って、はい、バンパイア仲間の出来上がりと言うわけにはならないのである。
で、電子書籍では気づきにくいけど結構分厚くて立派な怪奇小説の本作、とても長くて読むのにすごく時間がかかった。日記形式で、各登場人物のモノローグで進むから、個々の心情が細かく色濃く(しつこく)語られ、良い意味で雰囲気がじっくり味わえる。恋人が徐々に冒されていき、じわじわと死が忍び寄る雰囲気はなかなか怪奇でよい。血が足りないから全員で献血輸血して(血液型関係ない笑)、その後師匠に吸い取られて弱って、その繰り返しのなか遂に不審死してからドラキュラ化するのだけど、その異様さもホラーの魁として、読みごたえがあった。あえていうなら、決戦で向かったルーマニア行程が長すぎで、その割にあっけなくという感じだったので、もう少し頑張ってほしかった気もするけど、そのあたりは古典文学、元祖でお許しをということかもしれない。この文庫ではフランケンシュタインも読んだし、後はなんだっけか。
Posted by ブクログ
平井呈一訳の『ドラキュラ』を読んだのは一昔前のことで、ストーリーをほとんど覚えておらず、まるで初読のように読み進んだ。映画の(どの映画だったかは覚えていないが)ドラキュラの印象が強かったので、「ああ、こういう話だったのか」と思うところが多かった。
もちろんメインとなるのは、 ”ドラキュラ” vs. ”ドラキュラを倒し、その企てを防ごうとする人たち” の戦い振りということになるのだが、「解説」にもある通り、この小説が書かれた時代、19世紀末のイギリスの社会状況が小説の中にいろいろと反映されているところに興味を惹かれた。
例えば、迷信深いルーマニアの人々に対する、魔術や迷信を否定するプロテスタントのイギリス人との対比、心理学の黎明期であるこの時代を象徴する、脳を専門とする科学者と精神病院医師という主要登場人物の間の思考法の相違など。
主な舞台となる場所の地図や適宜の注釈が付いていて、理解を助けてくれるのも実にありがたい。