あらすじ
一枚の不思議な「絵」の謎を追い、令和から昭和、大正へ。
日本最後の空襲といわれる秋田・土崎空襲。
戦争が引き起こした家族の亀裂は、現代を生きる人びとにも影を落としていた。
ある事件をきっかけに報道局からイベント事業部に異動することになったテレビ局員・守谷京斗(もりや・きょうと)は、異動先で出会った吾妻李久美(あづま・りくみ)から、祖母に譲り受けた作者不明の不思議な絵を使って「たった一枚の展覧会」を企画したいと相談を受ける。しかし、絵の裏には「ISAMU INOMATA」と署名があるだけで画家の素性は一切わからない。二人が謎の画家の正体を探り始めると、秋田のある一族が、暗い水の中に沈めた業に繋がっていた。
1945年8月15日未明の秋田・土崎空襲。
芸術が招いた、意図しない悲劇。
暴走した正義と、取り返しのつかない後悔。
長年秘められてきた真実は、一枚の「絵」のミステリから始まっていた。
戦争、家族、仕事、芸術……すべてを詰め込んだ作家・加藤シゲアキ「第二章」のスタートを彩る集大成的作品。
「死んだら、なにかの熱になれる。すべての生き物のなれのはてだ」
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Posted by ブクログ
久々の星五つ。
とても読み応えのある作品でした。
秋田の油の話、まったく知らなかった。作者は何がきっかけでここに着目したんだろう。
まだ頭がぼーっとしてる。
秋田に、その時代にいるかんじ。
スラスラ読めた
400ページ越えの本を読むのは初めてでした。
でも現代をベースに過去に遡っていく話で、祖母や曽祖母の時代の話なんだろうなぁ。
と想いを馳せながら読み進めるうちにさまざまな展開があってあっという間に読み終えてしまいました。
謎が謎を読む。
とはこういうことなのか。
と話の構造、踊って歌ってたNEWSの人が書いたのかぁ。。。
と色々思いながら楽しんで読めました。
他のも読んでみよう!
と思える作品でした。
Posted by ブクログ
奥行きのある大作で、これがあの『オルタネート』と同じ作者の作品だと思うと、加藤さんの振り幅に驚いた。
戦時中のこと、石油産業のことが読みやすくわかりやすく書いてあり、特に8月15日前日に秋田であった空襲ののとを君衣さんの物語として知ることができだことがありがたかった。「あと一日早く戦争が終わっていれば」、これが君衣さんの物語を通りてわたしのなかに深く刻まれた。
今を戦前にしないために必要なのはこういう物語だと心から思う。
そして結末の輝さんと道生さんが再会できるシーンに加藤さんの優しさを感じた。
このあと、守谷さんは幼い頃自分を森で助けてくれたのが道生さんだと気がつくのかな。
Posted by ブクログ
過去と現在が交錯し繋がっていく展開が大好きなので、面白くて一気に読み切った。ちょうど8月14日の少し前に読み終わったのだけど、戦争で狂わされた人生を目の当たりにして、こんなこと2度と繰り返してはいけないと思った。
緻密に構築された物語の中で最後までわからなかったのが、傑が焼死した場面。道生はすっと彼を抱きしめた、という描写から殺意は感じられない。彼は何を思って火のついた両手で抱きしめたんだろうということが、ずっと気になっている。
Posted by ブクログ
シゲくんすごい!直木賞ノミネート作なので期待してましたが、思っていた以上に面白いミステリでした。
1枚の絵の謎を追って現代と過去が交錯しますが、猪俣家の歴史がなかなか壮絶。猪俣家の過去パートと、それを調べる守谷の現代パートのバランスが巧妙でした。
時間を置いてまた読み直したいです。
Posted by ブクログ
いや〜、もうお腹いっぱいになるほど
いろいろなトピックが詰め込まれた一冊。
「あえのがたり」を手にして以来、この作者の本を読んでみたい、そして読むならこの作品だなと思っていた。
正直言うと、ちょっと詰め込みすぎでは?とも思う。
一枚の絵から始まる物語の中に
殺人事件、戦争、戦災孤児、油田、発達障害、妖怪、禁断の地、地消地産、マスコミ、果てはパンデミックまで。(他にももっとある)
それに加えて多めの登場人物、
過去と現在が行き来し、間にトリビア的なものまで挟まれて。。
クライマックスにたどり着くまでの道のりがものすごく長く感じられた。
きっと書きたいこと、伝えたいことがたくさんあったんだろうな。
読むのにかなりパワーが必要な本だけど…
ラストシーン、ベタやけど泣けました!
Posted by ブクログ
面白かったです。
無名の画家の過去をさぐるなんて、こんなに簡単に話を聞かせてくれないだろう、などと思いはしましたが。そこでリアリティーを追求したら話は進んでいかないですからね。
方言を使用したり、戦争や空襲の話、石油に発達障害、著作権についてと色々盛り沢山で興味深く読めました。
勇と傑が揉めているシーンは原油まみれで絶望感強めで印象深いです。ラストはこれしかない感のある光さす良いシーンでした。
どうしても「あの加藤シゲアキ」の作品として読んでしまうため、よく取材をしているなぁと思ってしまいました。単語もなんか難しい語彙使っちゃって、とか思ってしまう。芸能人の兼業作家という先入観があるので、どうしても単純に話だけを追えなかった。ごめんなさい。
でも、傑作だー!とまではいかずとも、普通に小説として面白かったです。