【感想・ネタバレ】畏れ入谷の彼女の柘榴のレビュー

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Posted by ブクログ

ネタバレ

正しさと優しさは両立しないことの方が多いと、つくづく思った。不思議の中に優しい物語を入れ込むのが舞城王太郎の凄さ。

「畏れ入谷の彼女の柘榴」
タイトルの語呂が良くていい。でも、モヤモヤする話だった。千鶴が不倫して出来た子供を「おめでたい出来事」と言い、そこから夫婦の関係が悪くなっても「雨降って地固まる」とか言っちゃうのも、イライラしてしまったが、「どのようなバカにも存在意義があって、この世の中の幸福につながるチャンスがそれなりにあるんだという俺の祈りが叶いますように」という優しさはなくてはならないような気がした。

「裏山の凄い猿」
「困っている人を助けようって気持ちがなくなったら社会は終わり」っていうのは、誰に対してもそうで、「柘榴」でもあるようにたとえ相手がバカだとしても人の助けがないと社会は終わってしまうと思う。「全てのお話は寓話であって、教訓や警句に満ちているのかもしれない。でもそれを打ち破るのも物語のあり方で、寓意なんかに気持ちをこなされないように、気を張って生きるしかないのだ。」というのは、舞城作品の全てに言えることのような気がする。
好きな人を求めて「絶対に、どこかにいる。」というラストは清々しくていい。

「うちの玄関に座るため息」
鷲田清一の「支え合うことの意味」の寓話のようなお話で、個人的に一番好きだった。人は持ちつ持たれつで、どんなに気をつけていても他人の負担になることはあるし、それを自覚すべきだと思う。これは前々から思っていたことだけれど、さらに「後悔を引き受ける」という考え方がいいなって思った。「後悔しないように生きる」という言葉は聞こえはいいけれど、「後悔しないこと」が目的化されてしまうと、後悔したくないがために考えを辞めてしまったり、行動しなかったりする場合も確かにあるなと思った。自分の後悔も相手の後悔も全部引っくるめて受け入れることが本当の優しさなんだろうな。

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2024年02月03日

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