あらすじ
逃げたい夜もあった。妻であることから、母親であることから……。夫を亡くしたあと、癌で逝った実母と、高齢の夫と暮らす認知症急速進行中の義母。「ふたりの母」の生きざまを通してままならない家族関係を活写するエッセイ。
婚約者として挨拶した日に、義母から投げかけられた衝撃の言葉(「義母のことが怖かった」)、実母と対面したあとの義母の態度が一気に軟化した理由(「結婚式をめぐる嫁姑の一騎打ち」)、喫茶店を経営し働き通しだった実母の本音(「祖父の代から続くアルコールの歴史」)、出産時期と子どもの人数を義父母に問われ続ける戸惑い(「最大級のトラウマは出産と産後」)、義母の習い事教室の後継を強いられる苦痛(「兄の遺品は四十五年前に母が描いた油絵」)など全14章で構成。
義父や義母の介護をしながら時折居心地の悪い気持になることがある。実母に対して何もしてあげられなかったのに、あれだけ長年私を悩ませた義父母の介護をするなんて、これ以上の皮肉はあるだろうか。
(本書「結婚式をめぐる嫁姑の一騎打ち」より抜粋)
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家族の話。生まれ育った家族と結婚した先の家族。どちらも一筋縄では行かなくて、それでも立ち向かう著者の姿はあっぱれな部分が多い。実母に関しては重なる部分が多く色々考えてしまった。数年後には他人事ではなくなる状況に胸が締め付けられるように痛い。笑いもたくさんあったけれど、最後はやっぱり泣いてしまった。
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「家族」というのは、昔も今も、難しい。
近しいからこそ、譲れない、許せないものがある。
でも、変に愛情も関係してくるから後悔や懺悔の気持ちも湧き上がる。
他人の家族の話は、あまり聞くことができないという意味で、赤裸々に書いてくださっているのがありがたい。
(一方でここまで書いても大丈夫か?と心配にもなるが…)
自分に重なるところ、重ならないところ、感情を揺さぶられながらよんだ。
文章が、少しあっちに行ったりこっちに行ったりするので、乱雑に感じるけれど、私は村井理子さんの書く文章を好ましく感じているようだ。
(ただ、ホラー小説の翻訳は読もうと思わない^^;)
ジェンダー的に、なぜ村井さんが義父母の介護を?という疑問はぬぐえないけど、人の人生というのはその人にしかわからない流れのようなものがあるのだから、興味深い。
Posted by ブクログ
実母もお兄さんも、義母までも、こんなにも強烈な人とは…。なのに義母義父の介護をここまでするとは。
私なら介護できるとは到底思えない。心の広さは持ち合わせていない。すぐに音を上げ離婚している。母ふたりが認知症になり、実母の介護から逃げた後悔で義母の介護をする動機だそうだけど、それにしてもそうそうできるものではない。
実母とうまくいっていないので私はどうなんだろう。自分の人生と重なることがあり、考えなければいけないが、逃げている。
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『兄の終い』『全員悪人』『家族』と読んできて、ほかにもwebの連載記事や日々のX(Twitter)まで網羅しているファンとして、最近の“事情”はそれなりに把握しているつもりではいたのだけれど‥いつも以上に四方八方から良くも悪くも「そう来たか〜!」の波状攻撃。なんというか、本当に本当におつかれさまです!と言って泣きたい。
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著者の義母と実母を題材にしたエッセイ。顔合わせで義母が実母を気に入り、その後、著者のことを気に入ってくれたという信じられないけど幸せな話。親子ってどこかちゃんと似てる。
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村井理子さんのご本を読むのは、初めてかもしれない。SNSでよくお見かけするし(フォローしているはず)そこから確かブログとかに飛んで、ある程度まとまった文章を読んだことはある。ご本人のご病気の話とお兄様の話。多少はご本人についての情報は持ってたはずなのだが、これを読んで、また新たなピースが埋まった気がする。
これはタイトル通り、いわゆるお姑さんとご自身のお母さま、それにまつわる実家と婚家の話。せれに現在進行中の介護の話。私は村井さんとそのお兄さんのちょうど間くらいの歳なので、お母さま達は大体、私の親世代と一緒。私自身の亡親はそれよりは上なので、話の中に登場する、それぞれのお母さまのお姉さんと同世代かもしれない。一方で私の姑(健在)は正に同世代ではないかと思った。
そうしてみると、このお義母さんはどことなく、我が家の姑を思い出させるところがあった。豪快にお酒を飲むのは違ってたし、母親同士仲良くなることはなかったけど…。
掲示板系でよくいろんな家のゴタゴタは読んできたつもりだけど(中にはフィクションもあった?)こんな風にちゃんと書籍化された文章には、とても強い力を感じる。それはことの顛末を匿名でただ上げたものとは違って、これまでの自分やこれからの人生を見据えようとする、筆者の覚悟が垣間見れるからなんだろう。まぁあれはあれで面白かったりするんだけど…
Posted by ブクログ
私は 彼女の「兄の終い」をすでに読んでいた。
その家族の続編のような本である。
彼女の波乱の人生。
いや彼女の家族の波乱の人生の物語である。
そして結婚後の義母の家族,義母自身の これ又波乱の人生の物語でもある。
彼女の率直な物言い、猛然と前に進む彼女の力強さに惹かれて読み進んだ。
Posted by ブクログ
読みながら、そりゃこれは逃げたくなるわ
というキョーレツな義母さん
そして、実母さんとの関係も難しく。
それを俯瞰したり、冷静に見つめる
書き手としての村井理子さんの
視点、思考が、やっぱりこの人はすごいなぁと思う。
心に残ったのは
「誰かを守るため、あるいは誰かを支えるために自分を削ることは、得策ではない思えるようになった。
それが家族を守るという自分にとって大切な目的のためだとしても自分を削っては意味がない。
他にやり方はたくさんあるはずなのだ。
例えばそれは、自分自身の世界を健全に保つ力を蓄えることであり、自分の機嫌を自分で取るスキルを獲得すること、自分の時間を楽しむ余裕を持つこと、そして自分の世界を手放すことなく、生きていくということだ。」
これは、とてもとても大切なこと。
でも、これを言語化できずに苦しんでいたことに気づかされた。
村井理子さん、やっぱり、すごいわ。
>> 備忘録として
P82
誰かを守るため、あるいは誰かを支えるために自分を削ることは、得策ではない思えるようになった。
それが家族を守るという自分にとって大切な目的のためだとしても自分を削っては意味がない。
他にやり方はたくさんあるはずなのだ。
例えばそれは、自分自身の世界を健全に保つ力を蓄えることであり、自分の機嫌を自分で取るスキルを獲得すること、自分の時間を楽しむ余裕を持つこと、そして自分の世界を手放すことなく、生きていくということだ。
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母との関わりについていろいろ考えた。
甘えん坊で情緒不安定な妹、自由気まま浮き草生活の弟の姉としてしっかり者をやるしかなく、子供の頃からあまり母に甘えたり頼ったりしてこなかった。
結果、老いた母に頼られることがしんどい。なぜかドライに客観的な気持ちになってしまい、手は貸せるけど、気持ちに寄り添えない自分に罪悪感、、、
でも誰しも完璧な家族ではなく、悩み葛藤するのかなぁと少し救われた。
Posted by ブクログ
面白かった。読みやすかった。
実母だからできないこと、義母にだからできること。またはその逆も然り。娘と母は、近すぎても辛くなってしまうから、少し距離がおる方がお互いのためなケースが多い気がする。
いつか後悔するのかな。まだ分からない。
でも、その時がきたらまたこの本を手に取りたいと思う。
Posted by ブクログ
義母と実母についての体験談並びに随想。
なかなかの人物の義母と渡り合う嫁である著者の強さが心地よい。
文章も読みやすくて好き。と思ったら、「人間をお休みしてヤギになってみた結果」の訳者さんだとわかり、あのわくわくして読んだあの本を、この方は年末年始の義父母襲来のストレスから逃げるように訳してたのかなと思うとおかしくなった。
他の著書も読みたいと思う。
Posted by ブクログ
今回の装丁も素敵
見やすいタイトルと明るい色にイラストが入った表紙
村井理子氏の本やブログを読んで家族との関係性はわかっていたつもりだった
しかしこれでもかと言うくらい義母からの呪いが結構しんどかった
衝突して、干渉され、批判されてきた義父母の介護をこなしているリコ氏に「すごいな。なかなかできることではないよな」と頭が下がる
最後の章・今は亡き母へ、今、目の前にいる母へ より
「生きていてほしかった。今だったら、実母にしてあげられることがたくさんある」
「だからこそ、目の前にいるもうひとりの母を、最後まで見つめていこうと考えている」
実母との距離を取っている自分は、こんな気持ちになれる日が来るだろうかと考えて苦しくなってしまった
Posted by ブクログ
冒頭、義父母に兄を会わせたくなさそうな空気感に
『兄の終い』と『家族』で知ってる"兄"を思い出し
胸が苦しくなった。会ったこともない人なのに…
また何度も読むんじゃないかと思わせる一冊
Posted by ブクログ
実母と義母は対抗心があり相手の行動に焼きもちを妬いたり嫉妬したりと聞くが、この物語のお二人は良好関係のようで良かった。
義母は息子が結婚したことで娘ができたようで嬉しかったのではないだろうか?世話を妬いたり一緒に行動したりしたかったのだと思う。ただ、ちょっと度が過ぎただけ。義母と同じ立場になって考える事ができたなら感謝する事ができたのではないかと思う。
Posted by ブクログ
どっちもクセが強すぎる二人の母。
実家の家族もすごいけど、夫の家族さらにすごいなあ。これだけされて悪い人じゃないってなんで言えるの。身の上相談しても絶縁勧められるケースだと思う。元からの性格もあるんだろうけど、認知症怖いなあ。そんな人たちたくさん相手してるんだから、福祉系の仕事してる人たちがもっと報われてほしい。
Posted by ブクログ
著者の村井理子さんについて知らずに、タイトルに惹かれて手に取った。
彼女の置かれている状況が掴めず、よく分からない箇所があった。そこは読み進めていくと理解できるようになったが。
「わかったようでわかっていない、それなのに偉そうに意見だけは言いまくる厄介な娘」(p.156)、というフレーズが、未だにこの状態の自分の心に突き刺さった。
Posted by ブクログ
“母の晩年を、義母の老後を目撃し、私の価値観も変化した。誰かを守るため、あるいは誰かを支えるために自分を削ることは、得策ではないと思えるようになった。それが家族を守るという自分にとって大切な目的のためだとしても、自分を削っては意味がない。他にやり方はたくさんあるはずなのだ。”(p.82)
“子育ては、最近になって俄然面白くなってきた。いいことばかりではないが、成長した息子たちは立派な話し相手になってくれているし、彼らの成長を感じる瞬間が増えてきたことがうれしい。幼少期の彼らとの生活を心から楽しむことができなかったのは残念だったが、今があるからそれでいい。”(p.95)
“結局、本当の意味で和解することはなかったし、彼女と心を通わせることができたとは思っていない。育ててくれてありがとうとも、今まで迷惑をかけてごめんなさいとも、言えてはいない。”(p.191)
Posted by ブクログ
村井さんのエッセイは、初めて。
ユーモアある文章なので、楽しく読んだが、
まず結婚の段階で、躊躇してしまいそうな義母。
村井さん自身、持病があり、執筆活動しながらの
介護はかなり大変だと思うが、
書くことで、これまでの義母とのやりとりを
消化して(そう簡単には出来そうにない
エピソードばかりだけど)、介護に向き合って
いるのかなと思う。他の本も読んでみたい。
Posted by ブクログ
2024.08.15
こちらも勢いで全部読み終えてしまった。
若い時は随分と強烈な義母(義父もか)だったようで…。
私は実母との微妙な関係にモヤモヤとうまく言葉にできない想いを抱えているので、村井さんとは全く状況が違うと思いつつも自分の母についてアレコレと考えてしまった。
このモヤモヤは、自分の自己肯定感の低さと母に対するコンプレックスだと自覚しているが、このモヤモヤがなくなる日は来るんだろうか。なくなる日があるとしたら母が亡くなった後だろう。
母に全くに必要とされないし、頼りにもされず、認められていないと感じ続けているのが悲しくもあり、それでむしろ良かったじゃないか、と思う日もあり。このモヤモヤを母にぶつけてみたい気持ちもあるが、余計に悲しくなる気もする。寂しいけれど母と意識的に距離を取るしかないことはわかっている…。
私とは、娘とは母にとっていったいどういう存在なんだろう。
人生で1番辛い経験は実母を亡くすことだと言うけれど、母が亡くなった時に自分がどうなってしまうのか…せいせいするのか、母と向き合わなかった自分に後悔するのか。今から怖い。
次は気になっている青木さやかさんの母のエッセイを読もうかと思う。
Posted by ブクログ
親を選ぶことはできない。村井さんの義母は激しく、実母は大人しい全く正反対の親。その二人にどのように接してきたかが綴られている。
特に、義母の激しさは極端であり、こうあるべきという思いが強い。嫁なんだから私のいう事はすべて聞くべきという思いがあふれている。その厳しい要望に体を張って抵抗する姿勢は見事でもある。
そんな激しい義母も、年を取って認知症になるといい人になってしまうところは、少し切ないものだ。
Posted by ブクログ
個性的といえば聞こえはいいけど、身内だったら大変すぎるご家族だなあと。。
産前産後邪魔でしかないようなことばかりされたら、恨んで介護しません!となってもおかしくないのに、最後まで面倒を見ようとされている村井さんは立派な方だと思う。
旦那の祖父が先日鬼籍に入られ、旦那はもっと何かできたのかなと後悔していた(癌だったのでおむつ替えなどもしていて私としては十分サポートしていたと思う)のもあり、自分だとどうなんだろうと、当てはめて考えながら読んだ。
とりあえずアルコールは適度に、相続関係は早めに、が教訓かな…
いくら今が大変でも仲違いで会わなくなったりする間に帰らぬ人となって後悔した話などは山のように聞くけど、そうならないように、自分の心の余裕は少しだけでも残さないとと思う。
また、義母は聡明で美人との事だが、大学を諦めたりするような家庭や時代…切なさも感じる。
Posted by ブクログ
そうなのよ。
どんなひどいことをした義親でも、亡くなったり認知症になったりすると、どうでもよくなる。
記憶は消えないけれど、気持ちはおさまってしまうのよね。
もう対等な相手ではないからなのか・・・
しかし強力ですなぁ、義母様。
実母さまもなかなかのキャラ。
義母は若くして亡くなり(いろいろあったけど)実母は大きな後悔もなく見送った私が、もっといろいろあった義父の世話をするな中でたまたま出あった理子さんの本。
文章力があれば、ここまでスッキリ書けるんだなあ。
まだ先は長そうだが、そしたらもう一冊書けるかもしれないですね。(無責任にスミマセン)
Posted by ブクログ
実母、義母、そして村井理子さん。
すごいエネルギーに満ち溢れている。
結婚してすぐ(結婚前から?)始まったお義母さんの嫁教育。
孫会いたさにご両親が自宅に押しかけてくる件。
村井さんもお仕事があり大変だったと思う。
お義母さんと対峙する嫁。
すごいなー。
なかなか言えないし、ここまで頑固に断れない。
自分ならこのような時はどうするだろう。
考えながら読み進めた。
でも、介護が必要になったお義父・母さん。
優しいお孫さんがいて幸せですね。
Posted by ブクログ
実母と義母、ふたりの母の人生を描く。
癌で亡くなった実母と認知症進行中の義母の介護。
凄まじいなぁという思いしかない。
村井さん自身の両親と兄を変人ばかりのメンバーで、というところも確かにクセの強そうな…という感じは受ける。
だが、義母もかなりの個性の持ち主のようで…。
しかしながら冷静に判断し、受け止め、ときには受け流している村井さん自身に強さを感じた。
これだけ細かく見ていることが、相手に対して深い愛情があるからだと思う。
Posted by ブクログ
今までのエッセイや小説でも知っていたけれど、改めて書きがい?のあるお母様だ!
まだまだ続く認知症介護。
現実にいつ自分の身に降りかかるかもしれず・・・
続編にも期待しています。