あらすじ
Z世代を中心に、コスパならぬ「タイパ」(時間対効果)の追求が当たり前となった。時短とは異なり、「限られた時間でより多く」「手間をかけずに観た(経験した)状態になりたい」という欲求が特徴で、モノやコンテンツをコミュニケーションの“きっかけ”“手段”ととらえているという。背景にはサブスクの普及、動画のショート化などの環境変化と、「時間を無駄にしたくない」「いますぐ詳しく(=オタクに)なりたい」といった意識の変化がある。もはや純粋に消費を楽しむことはできないのか? 一見不合理なタイパ追求の現実を、気鋭の研究者がタイパよく論じる。
...続きを読む感情タグBEST3
Posted by ブクログ
「タイパ」=時間の効率化、と聞けば誰でも思い当たる事柄はあると思います。
そもそも家電などは主婦の手間をいかに省くかを主眼に置かれています。
「近道」だって、ある意味タイパでしょう。
それが今、新書の主題になるほど若者の「タイパ」的姿勢が問題視されていますが、本当にそんなに問題な事柄なのでしょうか。上記の例のように誰でも
タイパに無関心ではいられないはずです。
しかし問題視されている要因の一つとして「ファスト映画」を観る人たちの存在が大きいと思われます。
映画を早送りして、ざっくりとした粗筋と「それを観た」という優越感だけの「承認欲求人」に対する批判が前提にあるが故の反応と思われます。
「映画を早送り」して「分かったつもり」になるという行為と、モノゴトをいかに効率よくこなして「時短」を目指す行為とでは、同じ「タイパ」でも両者は全然違います。
本書はそこを論じています。
例えば「あなたはこうすれば時間的ロスなく政治家になれる」という本、またはSNSがあれば、どう思うでしょうか。
「タイパ」とはなんぞや、を論じる一冊です。
Posted by ブクログ
コスパの中にタイパがあるのはなんとなくわかるし、全て良かったらそれがいい、ならオタ活にコスパとタイパは求めたいですか?
レジーの「ファスト教養 10分で答えが欲しい人たち」と稲田豊史「映画を早送りで観る人たち」からも学ぶタイパについてをまとめた新書。前作2つのエッセンスも交えながら消費者の求めタイパについてを言及した本作はまさにタイパが良いものと言えるのでしょう。
ただ消費者像を見る限り皆が受動的な価値を欲しているあまり能動的に価値を見出す能力に欠けていると感じました。
前作2つも読みましたが、やはりそこからも学ぶのは受動的に消費したい、つまり「頑張りたくない」がやはり根底にあるんだなと感じます。
一冊本を読む、一本映画を見る、これら全てタイパが悪いとは言いますが、実のところ頑張ってやらなきゃいけないことだから避けているんだろと思う節がありました。そんな確信を得たのもあり、人の考え方もなるべく頑張らない手段としてファスト教養・映画の存在がある気がします。
ただそれがオタ活にまでタイパを求め出したことで頑張らないオタクが生まれている悲しい現状を見た気がします。
もっともオタクは能動的に動くもの、頑張っているものといった像がなくなりつつあるのでしょうか。ただただ悲しい。
Posted by ブクログ
『タイパの経済学』
時間効率の経済学。コスパとの違いを理解し、ビジネスに活かす。
【購読動機】
タイパ。タイムパフォーマンスの略称です。わたくしは、タイパを「言語」として使う頻度は少ないです。しかしながら、日常生活を送るうえで、タイパを意識することがあります。わたくしは、どんなときにタイパをしているのでしょうか?まったく考えたことがなかった領域の疑問です。
【本書の読みどころ】
著者は大学で教鞭もとっています。その著者が執筆した目的は、バズワード化している「タイパ」という言葉を定義することです。また、なぜ消費者がタイパを意識するのか?の行動、心理を読み解くということです。
このことに関心がある場合は、ぜひ読んでみてください。「あー、なるほど、たしかに!」という共感するケースが少なくありません。
【コスパってなに?】
コストパフォーマンスの略称です。「コスパがいいよね!」とは、支払価格(コスト)以上に便益を感じることです。「安いのに量が多い」「安いのにおいしい」とかです。
コスパには、経済合理性が働いています。消費者がコスパを求める姿勢は、受け身的要素よりも主体的要素が強いです。
【タイパってなに?】
コスパは、費用対効果という具合に経済合理性が働きます。一方、タイパは違います。(経済)合理性が働いていないケースが生じています。それは、時間を効率化して(タイパして)、余剰した時間を別のなにか?を消費しないケースが存在するということです。
たとえば、授業の視聴を考えてみましょう。コロナでウェブ授業が増えました。生徒は、2倍速以上で視聴したあとに、なにか目的をもった時間を消費しているか?と問いた場合、必ずしもそうではない事象が存在しているということです。
合理性があるコスパと合理性がないケースがあるタイパ、決定的に「差異」があります。タイパは、「目的はある。ただし、主体性が無い行為をする場合の時間効率」を指します。
A;楽しみを追求する場合、(例えば推し)タイパを意識するか?
B;楽しみが少ない、義務的要素が強い場合、タイパを意識するか?
前述の授業はBです。観たい映画を視聴するはAとなります。
Aは、タイパ意識が少なく、Bの場合は、タイパ意識が高くなることを理解することができます。
【読みおえて】
タイパをビジネスに置き換えてみました。
企業が外部(投資家、お客様含めたステイクホルダー)に対して情報を発信する場合、相手方(情報の受け手)のタイパを意識して実行することが望ましいと考えました。
なぜならば、受け手は、企業が発信する情報に対して主体的ではないからです。したがって、必然的に受け手はタイパを意識して情報を解釈するはずです。
そのため、企業側は、発信する情報は、可能な限り1)短く2)簡潔に3)理解しやすい仕様にするのが望ましいです。受け手が興味をもった場合、さらに深い情報にたどり着けるような「道」(情報経路)をつくっておくことが肝要では?と考えます。
Posted by ブクログ
本文にさらっと興味深いことが書かれている箇所が散見される。タイパ重視だと見逃してしまうかも。
明記はされてないが、ボードリヤールっぽい分析もあって面白かった。
Posted by ブクログ
若者らしいって言ったら失礼だけど、そんな文体でわかりやすく書かれていたと思う。精神的に自分のための消費はゆっくり噛み締めて、他のものは時間を捻出するためにダイパコスパを求めていきたい。
Posted by ブクログ
オタクという言葉がネガティブな呼称ではなくなったことは知っていたが、今ではオタクになりたい、それも手っ取り早くなりたい。しかもオタクというものが自分の存在証明(レゾンデートル)ではなく、タグのように付け外しができるものになっているという。今まで考えたこともない現象を言語化したこの本から、学ぶことは多かった。
他人の投稿は、消費に対する疑似体験としての側面を持つ→自分で消費する必要があるか、、、と検討する過程もZ世代の消費行動の一環 p.80
投稿しない=消費がない→他人を意識して消費がなされるという文化が深く根付いている
·コンテンツは鑑賞ではなく消費
·感情が揺さぶられること自体ストレス
·ネタバレを踏むのはリスクヘッジ
Posted by ブクログ
ファスト映画などに見られるタイパという概念について、行動経済学の観点から紐解いた本。
現代消費社会における「必要不可欠ではない消費」は、「外部刺激を受けて必要に駆られる消費」と「消費した使用価値によって精神的充足につながる消費」があるとしたうえで、前者でタイプが追求される傾向にあると背景含め説明されている。筆者も触れている通り、最近では後者にあたるような、自身の唯一無二の価値である精神的充足につながる消費や、大切な人との消費、大事なライフイベントなどもタイパ志向になりがちであり、自身の消費行動の真の目的を見失わないことが大事だと改めて考えさせられる。
Posted by ブクログ
タイパの定義を、手間をかけずに○○の状態になる、としている。どっちかというと、時間をかけずに○○の状態になる、だと思っていたのでその点は慧眼。合理性の追求ではないことの指摘も激しく同意する。タイパ市場を総括したレポート、読んでみたい。
うーん。タイパとそりの合わない暮らしをしているかも。
Posted by ブクログ
『タイパの経済学』は時間対効果を追求するZ世代の消費行動を探る一冊。タイパ(時間の効率化と最小の手間での経験)が現代の消費にどう影響しているかを深掘り。評価せず、消費活動の理解を目指す内容。読後は、現代の流れに抗い難く、多くの気づきが得られたと感じた。
Posted by ブクログ
タイパ主義現象の分析がほとんどだが、中でも著者が特に強調している「手っ取り早く何者かになりたい」というの根本的な理由であるという主張には、目から鱗であり納得感も強い。
手にすることのできる情報が増え、オンラインで世界中と繋がれる社会では、常にライバルが無数にいる。
そして皆があらゆる形で、自分を売り出している。
そんな中で、自身を埋没させず、認知してもらったり、頭角を表そうとすると、修羅の道の先にあるナンバーワンを目指すか、限りなく狭いニッチなオンリーワンかを目指すことになる。
自分が一体何に向いているのか。
自分は何に熱中できるのか。
試食を繰り返して、その自分探しにも似た発見を胸にザッピングする。
そうした行動のためには、あらゆる行動を細切れにして、倍速にして、タイパよく手を出していく必要がある。
無数のエンタメ、無限のトライアルを有限の人生で行うには、あまりにも時間が短い。
「本来であれば手っ取り早く○○したい」というのは、横着、怠惰、ズルに近い道である。
しかし趣味であれば、別段それを他者がとやかくいうことではない。
結果、ただただテレビのチャンネルを回すが如く、クリエイターが渾身で作り上げた作品を倍速・流し見でつまみ食いすることになる。
果たしてこれは近道なのか回り道なのか。
自分が本当に集中したいことに時間を割くために、タスクを仕方なくこなすのに、タイパを意識するのは大事だと思う。
開いた時間で、メインディッシュにじっくり向き合うことができる。
しかし食べたいものがないのに、全てをタイパで行うのは、これはまごうことなき回り道だろう。
セレンディピティに賭けるよりも、何かにまずじっくり時間と手間をかけることの方が、確実なリターンが得られるからだ。
パーソナライズアルゴリズムにしたって、まず自分の志向性を学んでもらわないと適切な結果は得られない。
筋トレ、仕事もそうだが、やみくもなタイパは無駄でしかない。
空いた時間の使い方をよく考える方が、タイパ技術よりも優先的であろう。
それと、「今すぐ何者かになりたい」という欲求は、
自分が自己満足として追い求めるToBeと、
他者から○○とみられたいToBeの2通りが考えられる。
前者は問題ない。
もし根源が後者だと、それは人に合わせた人生、人の目を気にする人生である。
そこの部分もまた別問題として、きっちり自覚しておく必要があるはずだ。
Posted by ブクログ
内容は表題の通り。分かってはいたけど、言わずもがなのことを言っている感じ。
しかし、研究者という立場で、研究論文を書く必要があるとしたら、こういう文体になるのだろうし、そう考えると、研究って、マジでタイパ悪いよね(← 逆説。私は、なんの検証もされないまま主観的かつ感情的に判断を下される現代の様相に違和感+危機感を抱いています。だからこそ、本書を読んだわけです)
Posted by ブクログ
「タイパ」という言葉が2013年のとある記事が由来で、「コスパ」は満たしたい欲求を充足するものに対して、「タイパ」はある状態を生むために必要な手段だという。本書は従来の消費の特徴と昨今の消費のあり方を紹介した本で、主にZ世代がこのような消費行動に走っている。
Posted by ブクログ
そうね、ダイパよくして出来た時間に何するかって言われたら寝るかな。
じゃあスマホゲームしてる時間をそもそも減らして寝ろやって話ね。
時間が過ぎるのも忘れて夢中になってた!
もうこんな時間!
っていうのが一番ダイパがいいってことか?
無理だな。
仕事に差し障りのない様に早く寝なきゃだし、
やらなきゃならない家事はあるし、
大人には許されない贅沢だ。
退職したら出来るのかな?
体力がなくなってるか。
Posted by ブクログ
あまり記憶に残らなかったのは、ある程度感じている内容だったからか。映画を早送りでみる、流行だけ抑えてオタクぶってみる、これだけコンテンツがあると失敗したくなるのもわかる。ただ、それって周りに流されているだけ?かも。
Posted by ブクログ
オタクとか推しが自分アイデンティティみたいになってるのちょっと分かる
タイパ意識し過ぎて余った時間何したいかって言われてもないからあんまり意識しないようにする
Posted by ブクログ
テーマがおもしろい。タイトルもいい。しかしエッジが効いてない。コスパとタイパの違いについてレポートを書籍化したものであり肝心なタイパの経済学についてはぼんやりしたまま。
文字数を膨らませるために陳腐なテーマが混ざっている。実際にはもっと薄い話。
結局最後は、
消費は人を豊かにする。交流的価値の追求は、消費を媒介に満たされる。何でもかんでもタイパやコスパが追求されてしまうのは合理的であるが、味気ない。あなたが好きなものはあなたにしかわからない。繰り返しになるが、消費は楽しい。
まあそうだよねという内容で終わる。
Posted by ブクログ
映画を早送りで見る人たち、を読んでからこちらを読んだので目新しさはないものの、コスパとタイパの違いが書かれていて面白かった。いずれにせよコスパタイパの先に何を求めているのか、よく考えたい。
Posted by ブクログ
手間をかけずに〇〇の状態になることが目的のタイパ志向。ではなぜ手軽にその状態になりたいのか?知っておきたい、見ておかなきゃいけない、そう思う理由は何か?
タイパのいい方法で得たものって、自分の中で後に残りにくいだろうなぁと感じた。他人や外的要因に振り回されすぎなんだろうな。
自分軸を持った消費を楽しめているか、時々振り返ってみるといいかも。
Posted by ブクログ
タイパの意義とは、時間を効率化し、ある状態になるための手間を省くこと。
自分が満たされる消費と、他者の目を気にした消費の2種類があるとして、前者のために、後者の時間を効率化することがタイパがいいと考えている。
自分が好きなことには時間を惜しまずに楽しもうという気持ちが感じ取られた。
一方で、1冊の本を読んだわりに、経済学らしい知識は特に得ることができず、誰でも分かることを振り返っている感じだった。
Posted by ブクログ
他の方の感想にもあるが経済学ではなく、筆者の専門分野である社会学や文化論といった類の本であり「経済について知りたい!」とタイトルだけ見て購入すると失敗するだろう。自分もZ世代ではあるが小学生の頃から深夜アニメを見るようなヲタクであり、周りから負のレッテルを貼られ親からも既に当時しっかりとしたアニメやボカロ文化などのヲタクではあったげ「アニメヲタクにはならんといて」と言われることもあった。それがインターネットやスマホの普及により多くの人が『オタ活』『推し活』と呼ばれるものを始めオタクがレッテルからラベル化したという表現がしっくり来た。ヲタクは古からのアニメヲタクなどを表し、昨今の流行りをオタクと線引するために自分はヲとオを使い分けている。また自分は趣味のために青春18で12時間前後かけて移動したことや下道を原付で24時間かけて移動、また過去には映画館で見たいという感情のない映画を片っ端から見ていくといった非常にタイパからかけ離れた生活をしている。そんな自分からするとこのタイパという概念というか文化に興味が湧く、そんな一冊となった。