【感想・ネタバレ】今村 均 敗戦日本の不敗の司令官のレビュー

あらすじ

苦境を超えて、部下を守り抜く――指揮官の資質と能力とは? 太平洋戦争末期、ラバウルで10万人もの軍人の命を守り、終戦後も、部下たちの心に寄り添い続ける――不滅の仁将の智勇を、現代の視点で捉え直した力作評伝 保阪正康氏推薦! [本書のねらい]●太平洋戦争の敗戦要因についての研究は、歴史家だけでなく、専門分野を超えて、これまで精力的に進められてきた。 ●だが、その失策にばかり気をとられ、すぐれた能力を発揮した軍人たちがいたことを我々は忘れるべきではないだろう。 ●指揮官としての責務を果たしつつも、時局や組織に振り回されず、人としてあるべき姿を求め続けた指導者たち――。 ●その人間観や指導観に学びの視線を向ける良識が、グローバル化の荒波に飲み込まれ、経済敗戦の様相が色濃くなってきた令和の日本人に求められているのではないか。 ●評伝のスタイルをとりつつ、リーダーに必要な条件について、有益な示唆を与えてくれる「不敗」の名将「今村均」の真の姿を、本書が描き切る。 〈目次構成〉●序 国破れて名指揮官あり――今村均という陸軍大将/敗戦と没落、戦時期の日本と令和日本/現代の視点でみた「今村均」の資質と能力 ●第一章 文学少年から軍人へ――幼少期/今村の人格陶冶/小学校時代/軍人へ ●第二章 昭和動乱の中で――士官学校への入学/居眠り/厳しい生活と友情/明治の終わり/陸大受験/真相 ほか ●第三章 指揮官としての成長――連隊長へ/今村と派閥/今村の反省/日中戦争勃発/戦場へ/ノモンハン事件/蒋介石の反撃/今村の将器 ほか ●第四章 大東亜戦争はじまる――賓陽作戦/教育総監部本部長/「戦陣訓」の後悔/第十六軍司令官/今村と海軍/蘭印降伏/「今村軍政」/中央からの批判/「ガ島」の攻防/玉砕か撤退か ほか ●第五章 祖国の敗北――自給自足に向けて/海軍との連携/自活/地下要塞/敗戦を迎える ほか ●第六章 果たしきった責任――敗戦からの戦い/オーストラリアとの裁判/死を免れる/死生観の変化/日本、そしてマヌスへ/果たしきった責任/先見の明/修養を忘れなかった人 ほか

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Posted by ブクログ

今村均という人物は大東亜戦争(海軍的な視点で見た太平洋戦争ではなくアジアで繰り広げられてた意味で使用)に於いて優れた指揮官として書籍にも多く取り上げられている。私が初めて深く知る事になったのは角田房子氏の「責任 ラバウルの将軍今村均」であった。以来、ビジネスマン・リーダーとしての在り方は正に今村均の責任感の全うにあると、敬意の念を抱くと共に、そうあるべきと手本としてきたつもりである。久々に今村均を主題とした本書に触れ、益々その想いを強くすると共に、私のような非凡な人間であっても、かつ歳を重ね会社人としても折り返し地点を当に過ぎた身でありながらも、まだまだ修練が必要で、それによりさらに高みを目指せるという自信にも繋がっている。
何故、今村均がこれ程までに現代にまでその名を残しているのかは、数多の書籍を読めば容易に理解できるであろうが、本書でも記載される様に、その生き方は決して恵まれた境遇でなくとも努力と信念により如何様にでもできる事を教えてくれるからに違いない。
本書はそのような今村均の幼少期から日中戦争、そして太平洋・アジア戦争の敗戦、そして戦後裁判と新書という僅かなページで一挙に駆け抜けながら纏めている。決して経済的に恵まれた家庭環境とは言えない中で陸軍に身を投じ、中央と現場指揮官を交互に行き交いながら身につけていった仁徳や人間性、そして戦闘における指揮能力は最終的に今村均を偉大な陸軍大将にしていく。敗戦後もその責務を全うするため、部下と一緒の過酷な環境に身を投じ、亡くなる間際まで部下のために尽力する。そうした姿は現代のビジネスリーダーのあるべき姿として多くの尊敬を集めている。
生まれながらにして優れた人物などこの世にいない。今村均は幼少期は持病に悩まされ、父親を早くに亡くし、寧ろ他者と比べれば不幸な境遇にあったにも関わらず、努力によりその境遇を打ち破ってきた。大東亜戦争でも徳を持って占領地政策を実施した経済的な感覚も優れているが、全体の趨勢がわからない段階から早期に将来を見越して自給自足を準備させる先見性など、能力として評価すべき点は数多くある。然し乍らこうした優れた実績が残せたのは何より本人の中にある、人として何が大切でどうあるべきか、といった人間性・本質そのものが正しい事を外圧にも曲げられずに実直にやり遂げる事が出来た事に起因しているようだ。
人は弱い生き物だ。すぐに楽な方、痛みの少ない方にどうしても寄り添ってしまう。すぐに怠けてしまうし、ましてや何だかんだ出来ない言い訳ばかりを頭の中で考え、自分の責任から逃れようとする。
今村均にその感覚は無い。最後の最後まで自分の責務を全うし、政治なら政治の、戦場なら戦場の指揮においても、やるべき事を信念を持って最後までやり遂げる。中々凡人にできる事では無いが、出来ないこともない。そうした自分にも出来そう、なれそうな余地がある所が今村均が現代まで手本とされる所以ではないだろうか。私も仕事でリーダーとしての所信表明を求められた際に、今村均の様な責任感、栗林忠道の様な率先垂範の姿勢を語った事があるが今でもその想いは変わらず、実践しようと躍起になってる。果たしてあと10年、15年後に少しでも近づく事ができるだろうか。
信念を曲げずに突き進みたい。そんな気持ちを改めて呼び起こさせる一冊だ。

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2023年10月22日

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