【感想・ネタバレ】最後の三角形 ジェフリー・フォード短篇傑作選のレビュー

あらすじ

アコースティックギターの調べは、ぼくの目の前に金色の雨として現われる。指で絹をなでたときには、レモンメレンゲの風味とねっとりした感触を舌に感じる。ぼくは「共感覚」と呼ばれるものの持ち主だった――コーヒー味を通してのみ互いを認識できる少年と少女の交流を描くネビュラ賞受賞作「アイスクリーム帝国」、エミリー・ディキンスンが死神の依頼を受けて詩を書くべく奮闘する「恐怖譚」、マッドサイエンティストが瓶の中につくりあげたメトロポリスの物語「ダルサリー」、町に残される奇妙なしるしに潜む魔術的陰謀を孤独な男女が追う表題作ほか、繊細な技巧と大胆な奇想に彩られた全十四篇を収録する。/【目次】アイスクリーム帝国/マルシュージアンのゾンビ/トレンティーノさんの息子/タイムマニア/恐怖譚/本棚遠征隊/最後の三角形/ナイト・ウィスキー/星椋鳥(ほしむくどり)の群翔/ダルサリー/エクソスケルトン・タウン/ロボット将軍の第七の表情/ばらばらになった運命機械/イーリン=オク年代記/編訳者あとがき

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Posted by ブクログ

SFが読みたい!2023より購入しました。

素晴らしい!の一言です。

文学の詳しいことはわかりません。
なので、私観的ですが
SFが読みたい!を十分満足させてくれたと同時に
SF サイエンスフィクションに入るのかどうか
は別として、満足させてくれます。

まず、言葉が、(訳が素晴らしいのもありますが)
想像に難くない表現で
とても読みやすく、
一話一話、ひたっていられる感覚です。
が、ついつい次々読んでしまいました。

そして、全話偏りない
なんでこんなに色んな話が書けるんだろうと
才能に驚きます。
短編集は、あまり好きではないのですが
短編なのに、最後の数ページで
あーそーなるのかっていう展開や、
途中からわかってる感じもあるものでも
最後の一文までしっかり読ませてくれます。

原書を読めないので、
訳者さんの努力には、本当に感謝しかないです。

出会えてよかったです。

ちなみに、まだ同作者の、言葉人形は読んでませんが
幻想小説が主だということなので、
それが私の思ってるようなものなら
読むのをためらうし、
でも、この作者のものなら
読みきれそうな気もするし
検討中です。

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2024年02月26日

Posted by ブクログ

共感覚者、ゾンビ、マッドサイエンティスト、死者、詩人、魔術師……。物質世界と精神世界の境界線上で生きる者たちに取り憑かれた短篇集。


直前に読んだエリック・マコーマックの『雲』と驚くほど共通要素を感じる作品集だった。マッドサイエンティストの人体実験で女性がめちゃくちゃにされるところをはじめ、「エクソスケルトン・タウン」の愛とセックスの関係性なども近いと思う。フォードなら一つ一つ短篇として結実させるアイデアを、ゆるく繋げて長篇化するのがマコーマックという感じ。以下、印象に残った作品の感想。

◆「アイスクリーム帝国」
カフェインが齎す創作的なインスピレーションを擬人化して、共感覚と結びつけている。音楽のために描かれた共感覚的スケッチが抽象画として評価されるというのは実際ありそう。お菓子がでてくる小説が好きなので、タイトルから想像するほどアイスクリームの話じゃなかったのはちょっと残念。

◆「トレンティーノさんの息子」
水辺の幽霊譚。迷信が蔓延る漁師町の薄雲った閉塞感が淡々と描かれ、ひんやりしっとりとした語りで進行していくが、一番の恐怖を感じる場面で主人公の行動が語りにじわっと温もりを灯す。派手なところはないけど、どんな姿でも助けを必要とする人に手を伸ばす主人公が記憶に残る。

◆「恐怖譚」
昔話のなかに、反魂の術を解く呪文を生みだす役目として詩人のエミリ・ディキンスンが召喚される。詩の源泉を描いたゴシックホラー。実在作家を主人公にする怪奇譚はよくあるけど、異界の住人とアグレッシブに渡り合うエミリが魅力的。ディキンスンの詩は未読だけれど、会話に織り込まれた引用に惹かれた。高原英理の『詩歌探偵フラヌール』的でもあるな。

◆「ナイト・ウィスキー」
今作で一番好き。まず死人から生える「死苺」から作られるお酒があって、それを飲むと死者に会うことができるのだが、口にできるのは村の祭りの日にくじで選ばれた住民だけ。死苺の酒で酔っ払うとみな木に登ってそこで眠りこけてしまうので、村には特製の釣竿で彼らを地上へ落とす「酔っ払いの収穫」という役目があり、そんな名誉職に選ばれた主人公が人形を竿で突いている場面から話は始まる。架空の村の不思議な風習が描かれ、ダークだけどにぎやかでハロウィンの空気をまとったファンタジーだ。ナイト・ウィスキーの幸福な儀式がある事件によって恐怖に転じる原罪の物語なわけだが、牧歌的な田舎の空気感が心地いい。「タイムマニア」も含めて、フォードのアメリカン・カントリー・ホラー(こんな言葉あるのか知らんが)は好感度高い。

◆「星椋鳥の群翔」
19〜20世紀初頭くらいの植民地をモデルにした架空の都市で、毎冬発生する猟奇殺人事件を追う幻想怪奇ミステリ。脳をいじって人間を野生動物化しようとするマッドサイエンティストが登場し、マコーマックを思い出さずにはいられない。ファム・ファタルものかと思いきや、というラストも割とよくある感じではあるんだけど、ラストシーンが美しい。

◆「エクソスケルトン・タウン」
虫が嫌いなのでビジュアルを思い浮かべないようにしながら読んでしまったが、B級映画を愛する虫型異星人と彼らの糞を催淫薬として求める地球人の世界を、パルプ小説風に書く試みが面白かった。

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2024年07月02日

Posted by ブクログ

大好きジャンルの幻想小説。
不勉強ながらYahooで書評を読むまで存じ上げませんでしたが、この方は世界幻想文学大賞に7回、シャーリィ・ジャクスン賞に4回、MWA賞、ネビュラ賞など数々の受賞歴を持つ作家さんらしいのです。
表題作は幻想奇想的でありながら、中盤以降のサスペンス味も楽しい作品。
個人的に心に残ったのは「ナイト・ウイスキー」。
この設定からして奇想味満点なんだけど、生物の死骸に生える「死苺」という植物があって、その果実から作られるナイト・ウイスキーは飲むと亡くした大切な人と夢で会えるという不思議なウイスキーなんですよ。
これを飲むと、なぜか樹に登って眠り、その夜の夢で今は亡き人との逢瀬が楽しめるんだけど、翌朝、その人達を回収する専門業者(?)がいて、その見習いの少年がこの物語の語り手。
本来は今は亡き大切な人と夢の中で会うだけの筈が、その愛の深さ故なのか、愛妻を亡くした男がなんと病死した妻を黄泉の国から連れ帰ってしまって…。
というのがあらすじ。
このお話、よかったなー。
あとは「イーリン=オク年代記」。
こちらは浜辺で子供たちが作る砂の城に棲む妖精の話なんですけどね、この妖精の寿命は城が作られてから満ち潮で城が壊れるまでの間。
この妖精の一生が綴られた日記が後世に見つかって…という話。
この短編集は2冊目みたいで、1冊目の「言葉人形」もぜひ読んでみたいと思いました。


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2024年05月04日

Posted by ブクログ

作品紹介・あらすじ

魔法は破られるようにできているの。
でも、約束はそうじゃない。

世界幻想文学大賞に7回、
シャーリイ・ジャクスン賞に4回、
MWA賞、ネビュラ賞など数多の賞に輝く
現代幻想文学の巨人による
郷愁と畏怖と偏愛に満ちた14篇

アコースティックギターの調べは、ぼくの目の前に金色の雨として現われる。指で絹をなでたときには、レモンメレンゲの風味とねっとりした感触を舌に感じる。ぼくは「共感覚」と呼ばれるものの持ち主だった――コーヒー味を通してのみ互いを認識できる少年と少女の交流を描くネビュラ賞受賞作「アイスクリーム帝国」、エミリー・ディキンスンが死神の依頼を受けて詩を書くべく奮闘する「恐怖譚」、マッドサイエンティストが瓶の中につくりあげたメトロポリスの物語「ダルサリー」、町に残される奇妙なしるしに潜む魔術的陰謀を孤独な男女が追う表題作ほか、繊細な技巧と大胆な奇想に彩られた全十四篇を収録する。

*****

名前だけは聞いた事があったけれど作品を読んだことがなかったジェフリー・フォード。書店に最新の短篇集があり、面白そうだったので購入。
最初の「アイスクリーム帝国」は共感覚を扱った作品。共感覚の持主同士が対峙し、どちらが幻覚でどちらが実在か、といった割とありそうな内容なのだけれど、これがかなり面白かった。なので期待して読み進めた。

ミステリーあり、ファンタジーあり、SFあり、ホラーあり、と結構幅広い内容の短篇集になっていて、ジュブナイル的作品も2本。どの作品も「おお、面白いじゃん」と時間を忘れて読み進めることが出来た。特に「アイスクリーム帝国」「タイムマニア」「最後の三角形」「ナイト・ウィスキー」が好き。

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2024年04月17日

Posted by ブクログ

短編集。ミステリもどきのSFやファンタジー。表題の三角形は素晴らしかったが、私はタイムマニアがすきだった。キングのホラーを思わせる展開もぞくぞくした。

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2024年01月10日

Posted by ブクログ

幻想小説というのだろうか、この類は。

苦手だわ。
理屈も何もあったもんじゃなく、なぜ、と考え出すと訳がわからなくなる。結局なんなん?

一つの物語が終わって、その次が始まると、何が起こっているのか理解するのにまた時間がかかる。

グロもあって気持ちわるいし。

が。

読み続けるのが負担だったが、止められなかったのも事実。
絵画を見たときのような、えも言われぬ感覚に囚われる。
散文と詩の中間みたいなものか。
優れた小説だというのは間違いないし、好きな人は好きだろうと分かる。

読後感は、しんどかった。

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2024年02月05日

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