あらすじ
■〈カネはあるけどセンスはない〉おじさんたちへ
■〈カネはないけど何とかしたい〉若者たちへ
■〈夫や恋人の見てくれにアタマを抱える〉女性たちへ
「過ぎたらあかんの良い加減」そこが面白くも難しい……50歳からのファッション再入門
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〈背広を脱いだ日本のおじさんたちって、どうしてこうもカッコ悪いの?〉
「何を着ていいのか分からない」「自分で服が選べない」、でも「そこそこカッコよくなりたい」……。
こんなオヤジの悩みに応えるべく、大阪・岸和田の洋装店に生まれ、長年にわたり情報誌の編集・執筆に携わってきた著者が、饒舌かつ大胆な切り口で指南する。
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【目次】
■はじめに──衣食住とモード
■「個性」はいるのか
■服に正統なんてあるのか
■オーダーの罠
■どこに何を着ていくのか
■てっぺんから考える
■パンツの丈は大丈夫ですか
■パンツの丈は大丈夫ですか──実践篇
■ジーンズという奇怪な服について
■トレンチコートというくせ者
■どんなコートを着てきたか
■ボタンダウンからシャツについて、あれこれ考えてみる
■ワニのマークのポロシャツとブランドについて
■ラコステでサイズ感について考える
■イロハにアロハ、おじいのアロハ
■コロナ禍でのTシャツ考
■ストリート・ファッションと革ジャン
■「差し色」って何だ?
■「裸足で靴」と「俺は俺」、そのココロ
■ファストファッションは教えてくれる
■「まとめ」としての「カッコいい」の構造
■モードとは世間であり、ファッションは利他である
■おわりに──ファッションは「等価交換でない」と「過ぎたらあかん」
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
著者のように若い頃からファッションにこだわりを持って大人になった人は、ポリシーがある反面、頑固な印象を受ける。自分のことをかえりみると、そこまでこだわることもなく適当に洋服をチョイスしてきた。その反動かこの歳になって改めてファッションについて勉強したい気持ちが湧き上がってきた。
Posted by ブクログ
帯の惹句には『50歳からのメンズファッション再入門』って書かれてはいるものの『おっさんファッション改造計画』のノウハウ本ではありません。
奥さんが旦那に『この本でも読んでちょっとは身なり気にしたら〜』と買い渡しても、速効性は薄いかと。『ほぼユニクロで男のオシャレはうまくいく毎日コーディネート』のような安直本なら、ためしてガッテン!となりますが…。
元来ファッションとウンチクは親和性が高い。とはいえ、こちらの本、とにかく能書き×ウンチクが溢れんばかり。
著者の私淑する鷲田清一氏の身体論の考察を挟んだり、話はファッションの上へ上へと遡り〈服を着るということは?〉〈オシャレとは?〉という哲学の領域まで筆は及びます。ねっ、速効性はないでしょ?そんなことより、お腹出ててもシュッと見えるコーデを教えてよ…になりますよね?
目次だけを見れば、確かにアタリは良いんです。作業着として誕生したリーバイス501を源流とするジーパンが不動のファッションアイテムとなるまでの変遷、簡単に手を出してはいけないトレンチコートという存在、大同小異ではないぞ 7ッ釦と6ッ釦のボタンダウンに見る第2釦の位置問題、ラコのポロシャツに見るサイズ設定、軽視できないパンツの丈の取扱、難攻不落のアロハシャツという強敵、素足に革靴という新奇コーデ課題への対応…等について自身のファッション遍歴-何でこんなん買ったんかなという黒歴史も含め-を交えた見解を披露。
ただ、数行の中に盛り込まれる情報量は極めて多く、その豊満な文体を読みこなすにはファッション情報のリテラシーを総動員しなければならず、その上、脚注にも著者によるミニ解説が付記されているという念の入り用。
その脚注にデジャヴを覚えた。それは田中康夫氏の『なんとなくクリスタル』。脚注が442個もあった記号小説と揶揄された、なんクリ同様のシニカルすぎる寸評に思わず苦笑。
ちなみに僕は小5の時にVANのBDシャツに衝撃を受けて以降、アイビーを入口とし、アメカジ・プレッピー・DCブランド・イタカジ・ファストファッション…と次々と押し寄せるトレンドの波に翻弄されながらも、結局は原点のBDシャツには目がない。
そのようなファッション遍歴の者からすると、本書は深くて小難しいけど、MENS CLUBやPOPEYE・BRUTUS等の雑誌を貪り読み、オシャレのルールを叩き込まれた者にとってはめちゃ愉快で、懐メロの匂いもするメンズファッション論であった。
さて、本の僕なりの総括は…
著者は全編通じて数々の『野暮』を取り上げ、『あかんあかん、それはあかんで』と…時に筆誅よろしく厳しく当たり、要は服を着る以前の『心掛け』を説いている。
『武士道と云うは死ぬことと見つけたり』は葉隠、これに倣っていうなら、『センスと云うは野暮に走らぬこと』。センスがいいとか垢抜けるって、何かを加えることではなく、野暮さを差し引いたところに宿るもの…と悟った一冊。