あらすじ
私は“善人”か、それとも“悪人”か。
「ねえ……あそこに誰かいない?」。全校生徒が集合する避難訓練中、ひとりが屋上を指さした。
そこにいたのは学校一の人気教師、奥澤潤だった。奥澤はフェンスを乗り越え、屋上から飛び降りようとしていた。
「バカなことはするな」。教師たちの怒号が飛び交うも、奥澤の体は宙を舞い、誰もが彼の自殺を疑わず悲しんだ。
しかし奥澤が担任を務めるクラスの黒板に「私が先生を殺した」というメッセージがあったことで、状況は一変し……。
語り手が次々と変わり、次第に事件の全体像が浮き彫りになる。秘められた真実が心をしめつける、著者渾身のミステリー!
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Posted by ブクログ
この衝撃的なタイトルに興味を惹かれて、思わず手に取り、一気読みしてしまいました。そしてそのタイトルに負けず劣らずとても面白かったです。
この本は章ごとに別の人物からの視点で書かれており、それぞれの登場人物の思いがすれ違っていく様子を、まるで当事者のように眺める事が出来るため、物語にどんどん惹き込まれていってしまいました。
また、最後に奥澤先生が暗い道に突き進む事無く、永束先生を殺し、事態を公に晒した事で、事態が一部好転しているシーンがあったおかげで、自分としては最後に少しだけ救われました。そして、永束先生も奥澤先生もベクトルが違うだけで、どちらも本当に生徒思いの優しい先生だったという設定のおかげで、最後にモヤモヤが残り、ハッピーエンドとは言い難い締め方になったのは個人的にはとても好みでしたので大満足です。
自分は現在教員志望の新高校3年生なので、終始色々な点で当事者気分を味わいながら読む事が出来ました。最後の「間違った道に進んでしまったら、立ち止まって、勇気を出して振り返る」という言葉を忘れないようにしようと思います。
Posted by ブクログ
理解していた内容を突然裏切られる感じのストーリーが読んでいてとても楽しかった。だんだん「私が先生を殺した」の真相がわかっていくのも楽しい。しかし、先生があまりにも報われなさすぎて悲しかった。
Posted by ブクログ
それぞれの視点で書かれる章が微妙に交錯し、そして微妙にズレていて。そのテンポ感が良くどんどんと読めてしまうん、だけど……、
この作家さんの別の作品を読んだ事があり、その時も感じたが、題名が気に入らんのよな。あまりドキッっとするような題名じゃない方が、作品の質を落とさなくて良いのに。と、今回も勝手に感じた。
特に終盤は無理くり題名にストーリーを引っ掛けた感じがして……自殺に殺しを最後の最後でおまけ的にくっつけてきたようで急に安っぽいミステリ崩れに落ちた感じがした。自殺する必要と殺す必要有る?!この先生の人物像から生徒にトラウマ作るような自殺の仕方するかなー?あの黒板メッセージもそんな事潤先生がわざわざ黒板に書くかな?とか、(その黒板メッセージを核に持ってくるなら、机上のメッセージと関連付けて筆跡で気付けてしまう百瀬をもっと絡ませるとかもう一捻り欲しい)絶対にそうならざるを得ない説得力がイマイチ。だから余計に無理くり感を感じた。
それが無かったらもう少し社会派な内容で重厚感が出たのになぁーと、⭐︎−1。
Posted by ブクログ
複数人の視点で描かれるタッチだけど、色々な謎が最後に分かる感が爽快で終盤は一気読みでした
題名も視点によって色々な捉え方ができているギミックも好き。
Posted by ブクログ
昼休みに行われた避難訓練の途中、屋上から教師が飛び降りた。
異様な状態のまま教室に戻ると、黒板には
「私が先生を殺した」
と、書かれていた。
先生は,自殺ではなかったのか?!
この事件に至るまで、4人の生徒の目線で語られる。
砥部律は、高校に入って勉強が追いつかなくなり、分からないままでどんどんきてしまう。そして、授業妨害をする。SNSにあげてはいけないものをあげたりする。が,クラスで呆れられていることもあり、イイネはつかない。
担任の奥澤先生が、授業終わりに30分勉強をしようと言ってきた。うざい。
若くて背の高いイケメン教師は、女子の人気だ。マジでうざい。
ある時、数少ない自分へのイイネをつけてくれた相手のSNSをみると、奥澤と女子生徒のいかがわしい動画が貼り付けてあった!なんだこれ!
その動画を自分のアカウントでもupし、学校は大騒ぎ。先生を糾弾しようー!となった。が、奥澤は担任を下ろされて学校内で謹慎してるらしい。すると生徒たちの気持ちも落ち着いてきた。それより目前の受験に意識がいってる。
俺はこのままではすまさない!どうしても分からない相手の女を突き止めてやる!すると,ネットニュースの会社から掲載の話もきた。が、相手の名前もわからないのであれば掲載は無理だといわれる。
先生は勉強を教えてくれたあの物置にいるに違いない!!押しかけて「相手は誰だ!」と責めまくる。
だが先生は言わない。あの動画の詳細も語らない。
そして、あの日になってしまった。
黒田花音は経済的に厳しいので、授業料免除になるように東光大の特別推薦枠を狙っていた。成績もとても良く、先生からお墨付きをもらったので小論文の練習をずっと続けていた。
が、永束という年配教師から、特別推薦はなくなったとかされる。担任の奥澤先生に交渉する。なんでなんだ?どうして、こんなギリギリになって?
奥澤先生は何も答えてくれない。
そんな時先生の動画が拡散され先生と会えなくなる。
そしたら永束先生が小湊悠斗と話してるのをきいた。自分の代わりに推薦される?!なぜ?彼が選ばれた理由はどこにあるの?!
奥澤先生がいる場所はあそこだ!と訊ねるが先生はやっぱり何も教えてくれない。
「先生の事は1ミリも信用できません!」といってしまった。そして、避難訓練が始まり,先生は逝ってしまった
百瀬奈緒は、奥澤先生が好きだった。
先生に質問したくて頑張ったら,あんなに苦手だった英語が得意科目になってしまうほど。
ずっとアプローチするけど、全然相手にしてくれない。
最近どうやら黒田さんと二人で話し込んでる。進路相談?いや、確か噂で、黒田さんは推薦入学が決まってると聞いた。だったらなんであんなに二人でいるの?
卒業してからもうアプローチかけようと思ってたけど、黒田さんにとられる?!
焦って先生に質問をするために呼び出した。そして、強引に抱きつく。先生は慌てて両手を前に突き出して離されてしまった。その時、胸を触られた。先生は咄嗟にごめんって言ったし、わざとじゃないし,先生なら・・・
後日,その時の様子が切り抜き動画でSNSでバズった。先生は担任からおろされて会えなくなった。
でも先生のいる場所は知ってる!
会いに行くと、先生は私のせいじゃない。大丈夫だからという。
避難訓練の昼休み、パソコン教室に忘れ物をした事に気がついてた。避難訓練が始まる前に取りに行ったら、避難訓練が始まってしまった。ノロノロあるいていると奥澤先生がいた。「避難しなさい」と言われて,「先生は避難しないんですか?」先生が言った「逃げ場なんて、どこにもないよ」
そして先生は屋上から飛び降りてしまった
小湊悠斗は家が病院で兄が医大生。自分も医学部を熱望されていたが,到底無理。そしたら,親は弁護士にさせようとする。親に従いたくない。
進路で悩んでいた。親が反対する大学に行くなら、特待生を狙うしかない。そこで目をつけたのが、東光大の史学科。本当は歴史の勉強がしたかった。
でも,奥澤先生は厳しいという。
父はカタブツだが、はははまだ話をきいてくれて、東光大の話をすると、そのレベルの大学であればいいという。
厳しいと言われていたが永束先生から、東光大推薦できるという。,ラッキー。
でも、どうやら自分の前に黒田さんが決まってた?どうして?黒田さんの方が成績がいいのに?
そうしていたら,奥澤先生の動画が流れ、先生は教室に来なくなってしまう。前に先生と掃除したあの物置に先生がいた。
どうして黒田さんじゃなく自分なのかと問う。しかし先生の様子がおかしい。「ここにもない!ない!」と何かを探し「君はどこまで知っている?」と問われる。先生が自分に伸ばしたての袖にあるものを見た。
が,避難訓練がはじまる。
奥澤潤が高校時代、家に帰りたくなくて放課後教室で勉強していたら、永束先生に物置の掃除と整理整頓を頼まれた。
勉強が得意な弟の方が,父親の跡を継げばいいのに。やりたい事は見つからないけど,親の言う経営の勉強をするのは嫌だ。公務員が向いてる気がする。
やる気のない自分に、永束先生は少しずつ勉強すればいいとおしえてくれ、推薦入学できる大学を教えてくれた。そしてその,大学を出て、教師となり高校に戻り,恩師の永束先生と共に働くこととなった。
勉強せず授業妨害をする生徒、恋愛的アプローチをしてくる女子生徒、そして。
推薦入学の問題。
黒田に決まっていた推薦を、小湊にしたいと永束先生が言われたが,理由がわからない。わからないまま小湊に伝えてしまった。
どうやら、小湊の親からお金を受け取ったらしい。これは校長もわかっている。学校経営にはお金がかかるのだ。だが、それはだめだ。やっちゃいけない。
しかも毎年やってる慣習らしく、今年定年になる永束先生のあとは、奥澤先生に、と言われた。絶対嫌だし,やるべきではない!!
そんな時に自分の動画が流される。まさか、不正裏口入学を否定し、関係各所にたれこみそうな自分を学校側がきった?
自宅謹慎だと、永束と校長のいいようになってしまう!と、学校内謹慎に変えてもらった。
そこにやってきた永束に衝撃的なことを言われる。
この不正は5年前から。つまり、奥澤の父親から持ちかけられた事から始まったのだと。自分も不正な推薦で大学に行ってた事を知る。そして、物置のトロフィーで永束を殴打してしまった。袖に血が飛んだ。
避難訓練の放送が鳴る。
小湊を行かせ、百瀬に黒田への伝言をたのむ。
自分の教室に向かって,黒板に向かった
「私が先生を殺した」
そして,屋上に向かった。
って話です。
まさか、黒板に書かれた「私」が屋上から落ちた奥澤先生で、「先生」が永束先生だとは思わなかった!!
だから、生徒による先生殺しの探偵小説にはならなかったのね。
オチがあざやかすぎる!!すごい。
エピローグの卒業式もなんかつらいねー。
生徒たちはそれぞれちゃんと春から新生活を始められそうでよかった。
小湊くん、ギリギリで合格発表がって言ってるから東光大推薦入学しなかったのね。黒田さんは、あの事件のあと自分の机のなかに、黒田さんの希望の学部と特待生制度がある大学のパンフが入っていた。奥澤先生が黒板に書きにきた時に入れたもので、百瀬さんに頼んだ伝言もソレ。百瀬さんはその後転校して行った。
受験って視野が狭くなりがち。この数パターンしか未来へのルートがないような気がしてくる。
そして、裏口入学なんて、古臭い言葉だと思っていたけど、推薦入学のほうかー。
子どもの将来を考える親の気持ちもわかるけど、実力以上のところに行ってもなーとも思う
Posted by ブクログ
いやーーーーおもしろかった…!
「私が先生を殺した」のが誰だかわかった時、そっちかーーーー!となった。全然気づかなかった。
私はこの人で、先生ってこの人のことを指してたのね…!!!おもしろーーー!!!
1章ごとにメインの登場人物が変わっていき、どんどん事件の核心に迫っていくのがすごかった。お見事。
エピローグの校長の話と、奥澤先生の最後がちょっと絡んでるのもよかった。
桜井さんの他の本もぜひ読んでみたい!
Posted by ブクログ
読みやすい話だった。
誰かを成績改ざんで指定校取らせるにしても、誰も希望者いなくて空いてる枠に出来なかったのかな。
黒田さんがただただかわいそう。
校長と永束も人選ミスじゃない?過去の事とか、動画で言う事聞かせようとしたのかもしれないけど、人選ミス。その前の人も断ってるからやはり人選ミス。だめな2人。
Posted by ブクログ
「ねえ......あそこに誰かいない?」
避難訓練の途中で一人の生徒が屋上を指差した。
教師たちの怒声に耳も傾けず、人気教師、奥澤潤がフェンスを乗り越え、屋上から飛び降りた。
誰もが奥澤の死は自殺だと考え、悲しみに暮れる中、奥澤が担任を努めていたクラスの黒板に
「私が先生を殺した」
という一文があり......。
4人の生徒と、死んだ教師である奥澤自身の目線で描かれるミステリー。
ーー段々と事件の全貌が、真実が見えてくる。
「感想」
読んだあとに気づいたけれど、この作者の桜井美奈さんは「殺した夫が帰ってきました」の作者なんですね〜。
個人的には「殺した夫が帰ってきました」のほうが救われる感あったかな、と思った。
いろいろな人の目線で語られるため、ハッピーエンドは「誰にとってか」で変わってしまうけれど、すべて奥澤先生中心で語られているため、奥澤先生が主役ということにすると、これはハッピーエンドなのか、バッドエンドなのか。
最初の方では、あらぬ疑いをかけられた可哀想な先生。だけど、なぜ否定しなかったのだろう。という疑問と印象だったが、
そのあと色々見えてきて、奥澤先生への印象が、生徒思いの優しい先生へと変わっていった。
いやー、流石に自分の推薦がお金によるものだったって知ったら相当つらいだろうな。そういったことが長く行われてきたことで、いま大学にいる人たち、ひいては奥澤先生自身も大変なことになる。それだけ成績の改変というのはやってはいけないことなんだなということを改めて実感した。
状況説明などされていて、とてもわかり易かった。お金を渡して推薦、というのは今でも普通にありそうでなんか色々と複雑。
「私が先生を殺した」
にもあっさり引っかかった。
なるほどね。「私」(女子生徒)が奥澤「先生」を殺したのではなく、「私」(奥澤先生)が「先生」(永束)を殺したのかー。面白い。一人称が「私」だからね。うん。てっきり奥澤先生のファンの女子生徒かと思った。
エピローグめっちゃいい感じになってたけど、最後の
「誰もが、この場にいない一人の教師のことを思い浮かべていた。」
で、永束先生、思われてないのか......、と少し可哀想になった。
すごい読みやすい文章でスラスラと読めた。個人的には黒田さんが一番好きかな。