あらすじ
・キャッチ
おかん!おかんよ!現代美術は詐欺とちゃうねん!説明したるから読んでや!
・内容紹介
ダウンタウンをはじめ優れたお笑い芸人を次々と輩出する尼崎市。作者は、そんな尼崎のワケあり風俗街である「かんなみ新地」近くで生まれ育った。3人兄弟の長男。家は当然のようにドのつく貧乏。少年時代には2度鑑別所に入り、更生プログラムで行った美術館でピカソに出会い感動。トラックの運転手をやりながら、東京藝術大学に入り大学院まで出て、作品も高い評価を得るようになった。しかし、母親はいまだ息子のことを正真正銘、詐欺師だと思っている。本書は、そんな母親に向けて、また分断と貧富の差が広がる世界に向けて書いた貧民蜂起のためのスラム芸術論である。
・著者メッセージ
批評家の黒嵜想さんが僕の仕事を「スラムからの福祉」と評してくれたことがある。貧困層の流儀や価値観、生き方を見て、それよりも上の社会階層の人たちが「元気になったり」するならば、それは正に「スラムからの福祉」だと。福祉は上から下へとに行われるだけではない、と。そしておかんは「スナック太平洋」で、毎日それを行っていた。そんな地獄と天国を結ぶような所業にはダイナミズムがあり、それはめちゃくちゃ「芸術」だ。この本はそんな芸術の、血筋や人種などといった縛りを超えた、僕ら尼人という文化的アイデンティティーを示す本でもある。そして、それを作品として残そうとするのが「芸術家」の仕事なのだ。(最終章「何も深刻じゃない」より)
【目次】
奴隷の椅子
現人神
プレゼント
下
なくなる
謝罪人生
クズ寄りのカス
へ
アマガサキ・コード
大人
お芸初め
天才っぽい
ブレブレなるままに
どカス関東来襲
暗い話
ゲロとともに来たる
へん
アニキ
何も深刻じゃない
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
阪神尼崎近くある出屋敷駅出身の芸術家が書くエッセイ。
自分も兵庫なので、阪尼のあたりはある程度知っている。北から南にかけて阪急、JR、阪神と沿線が間隔を空けて並ぶが、とりわけ阪神沿線は異質。人との距離感が近く、バンカラで治安の悪そうな雰囲気は今でこそ多少大人しくなってきたが、それでも十分残っている。
著者は、芸術に縁のないこの出屋敷で育ったが、とあるきっかけで芸術家をこころざした。スナックを営む母には、「芸術家って要は詐欺やん」と言われる。
これについて、「確かにそうかも、紙に絵を描いただけのものをうん十万、うん百万でうるんだから」と納得気な著者のニュートラルな感じが面白い。
阪尼での子供時代の生活が主な内容なのだが、
いろいろとぶっ飛んでて面白い。それにアホだけど嫌じゃない奴らが多く登場してくる。
芸術の名門、東京藝大に入学する著者だが、
寝る間を惜しんで自分に厳しく、めっちゃ努力した。とかじゃなく、
予備校いきながら、やれる範囲でバイトしながらそこそこ絵を勉強して、23歳で入りました。っていう感じも、プレッシャーを感じず読めるので気が楽だった。