【感想・ネタバレ】からだの錯覚 脳と感覚が作り出す不思議な世界のレビュー

あらすじ

「からだの錯覚」を通して人の身体や脳の実態に迫る、認知科学研究者である著者が、からだに起こる不思議な現象を徹底解説します。「自分」という、もっとも身近にありながら、つかみどころのないもののイメージが、脳や五感などによってどんなしくみで作られているのかが語られていくと共に、錯覚を感じるさまざまな方法も紹介。読者も簡単な方法で、不思議な錯覚の世界を体験をできるかもしれません。
自分が感覚としてとらえている自分の体と、実際の体が乖離していることを感じたりすることは、誰にでもあること。また、ケガで体の一部を失ったときにないはずの部分に痛みを感じたり、拒食症の人が実際にはやせているのに自分は太っていると感じていたり――そんな例も聞いたことがあると思います。それ以外でも身近にあまり意識しないところで、ちょっとした錯覚を感じることは、実は多いのです。乗り物酔いも、金縛りも、自分の感覚と意識の不一致のようなことから起こる錯覚の視点から説明できます。こういったことがどうして起こるのか、その謎に迫ってみると、生きるために必要な脳の働きなどが見えてくるのです。心と体が離れる「幽体離脱」も科学的に説明できる現象です。オカルトではなく誰しもリラックスしたりするときに起こることがあり、ここでも脳と体に備わったくみが関係しています。
そのような事例を紹介しながらからだに起こる不思議を解説していく1冊。読み進めると、自分が「錯覚」の産物であるように思えてくるのではないでしょうか。身体とはなにか、感覚とはなにか、自分とはなにか、についてふだんとは違った見方で考えるきっかけに。

序章 錯覚体験
第1章 「からだ」とはなにか~自分として感じられる身体と物体としての身体
身体と触覚がバラバラ/身体の感覚とはなにか/自分の「からだ」はどこまでか ほか
第2章 目で見る視覚と頭の中にある視覚――目を閉じることで広がる「からだ」の感じ方
錯覚しやすいかどうか、試すならこの2つの方法/触覚だけで「自分の身体を見つける」!? ほか
第3章 弾力のある身体――空想の世界にも想像しやすいものとそうでないものがある
アバターを自分の身体のように感じる錯覚/腕や脚が伸び縮みするVR錯覚 ほか
第4章 からだの錯覚は思い込みと何が違うのか――錯覚が生まれる、その時脳は……
第5章 「身体」なのか「モノ」なのかーー自分のような自分じゃないような「きもちわるさ」の由来
外傷のない痛み/スライムハンドの衝撃 ほか
第6章 幽体離脱を科学する――不思議な現象が導く、さまざまな可能性
多角的な視点からイメージできる人は、幽体離脱が起こりやすい/リセットされる夢、リセットされない幽体離脱/とりかえしのつかない遊び ほか

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Posted by ブクログ

主に身体感覚に関する錯覚を紹介した入門書であり、今後バーチャルリアリティ分野などで注目される内容である。

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2025年09月10日

Posted by ブクログ

これまで数多くの哲学者たちが触覚やほかの感覚と身体感覚の関係(もしくは身体論)についてさまざまに論議してきたが、本書はそれらに言及することなく、それらをはるかに超えている。思考実験がたくさん出てくるが、哲学者たちが考えたものよりはるかにclever。しかも、本物の実験があり、それが提供するエビデンスがあり、読者を体験させて納得させるデモンストレーションもある。
それにしても、著者の遊び感覚がいい。実験のアイデアも、ネーミングのセンスも抜群。ブッダの耳錯覚、軟体生物ハンド錯覚、トントンスワップ、グラグラスワップ、蟹の錯覚、薬指のクーデター、小指のクーデター……だもん。(文章や記述がちょっとまどろっこしいところもあるけれど、内容はそれを補って余りある。)
出発点はラバーハンド錯覚。それをとっかかりに10年余でこれだけの研究を展開するとは。しかも研究はさらに大きく展開するような勢いだ。

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2025年05月09日

Posted by ブクログ

錯視ではなく、からだの錯覚を取り上げ、人間がどのように自分自身の体を認知しているのかという問題を扱った本。
こんなふうに平板に書いてしまったけれど、紹介された実験はどれもとても面白い。
実験は冒頭に抜け感のある絵柄の漫画で紹介されているので、どんな実験なのかはわかりやすく示されている(言葉だけで説明されたら、かなり理解が厳しいだろう)。
何より、著者の小鷹さん自身が、錯覚に深く魅せられ、楽しんで(?)いる雰囲気が文章から感じられる。

さて、本書ではからだの錯覚が生まれるメカニズムを次のように説明する。
わたしたちは、通常の状況では自分の体を、自分が所有するものとして感じている。
それには固有感覚(身体各部が空間の中での位置を感じる内的な感覚)、運動感覚や視覚による認識など、複数の感覚が統合されている必要がある。
(こういう各感覚からの情報を整合的に認識していることを、「オーケストラ認知」というのだそうだ。)
裏を返せば、視覚的な情報を遮ったり、姿勢を調整したりなどの空間的な条件の操作などにより、錯覚状態が作り出せるのだとか。
どうやって効果的な実験の条件を作っていくかなども、興味深い。

感覚がいい加減なものだというのは、実生活の中でも感じる機会がある。
そのせいか、本書で紹介されている錯覚を自分自身で試したことは今のところないけれど、読んでいるだけでそうなりそうな感覚になるのが不思議。
で、これは自己暗示状態なのかと思ったりするのだが、そんな自分を見透かしたかのように「第4章 からだの錯覚は思い込みと何が違うのか」で取り上げられている。
錯覚者(本書ではラバーハンド錯覚の場合で説明されていた)の脳内の特定部位の活性度が異なることから違いは説明できるとのことだった。

今まで考えてみたことのないけれど、言われてみれば不思議だということにも出会った。
例えば空想世界などでの体が変形する感覚が、誰にも実体験がないにもかかわらず感じられること。
鳥や虫のように空を飛ぶ夢をなぜ見られるのかということも。
筆者は体が大きくなっていく成長の中で、身体変形に関する特別な神経系ネットワークが生成されている(そして、通常はからだの中の引き出しにしまいこまれている)からだとのことだ。

さて、このような錯覚の研究、もちろんVRの研究にも応用されていく。
たしかに、メタバース環境でどのように感覚を制御してどんな体験ができるようになるのかは、未来のこととして気になることだ。
その一方で、幻肢痛の治療などにも応用されるとのことで、こちらの方もぜひ良い形で発展してほしいと思った。

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2025年05月11日

Posted by ブクログ

本屋でふらっと表紙買い。
最初は指を交差して動かしたらうまく動かない、
みたいな面白実験の本かと思ったら、身体感覚と脳の「いい加減さ」にどんどん踏み込んでいって、幽体離脱の解明だったり、VR空間での自己認識の話だったりになっていた。
本格的なVRの時代が来るかどうかは分からないけど、そこで自分の認知に何が起きてるのかを予め知っておくのは、有益なんじゃないかな。
最近著者の新刊も出たようなので、そちらも読んでみようかな。

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2024年07月24日

Posted by ブクログ

不思議がいっぱいだったけど内容をまとめれない。絵がかいてあるのでわかりやすくなっているけどやはり説明するとなると難しい。巻末の小さな文字も興味深くかいてありからだの錯覚の不思議がよくわかる。

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2025年09月03日

Posted by ブクログ

タイトル通り、からだの錯覚に関する仕組みがまとめられています

意外だったのは、触覚がさほど貢献していないということ、触覚だけでは錯覚は起こらなくて、それ以外の感覚と複合的に同期しないと錯覚は起こらない、ということが分かって面白かったです

最終章の幽体離脱に関する科学的な見解もとても興味深く、金縛りなどに通じる現象で、仰向けという姿勢も関与している、というお話はとても面白かったです

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2023年07月18日

Posted by ブクログ

錯覚はどうして起きる
今後、メタバース等人間の日常感覚から離れる空間に身を置いた場合、脳が作り出す「車酔い・船酔い」「幽体離脱」に似た様々な錯覚を体験することが簡単になる、と感じた。それが新たなゲーム感覚の新潮流になることは間違いないが、方や「気持ち悪い」と言う現象が起きることも間違いない。脳への錯覚を呼び起こす擬似体験は今後益々盛んになるだろう。

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2023年07月05日

Posted by ブクログ

幻肢や幻肢痛は、四肢の一部を切断した人がよく使う言葉だが、これから言えることは、からだは決して触覚で表されるものではないと言うこと。つまり錯覚だ。

幻肢と目に見える肢は、常に単一であろうとするが、これを実験的に感じることが出来ると言う例をいくつか紹介し、実際に読者に味わってもらうことが出来るようにしている。
脳科学的な説明や、幽体離脱を科学すると言う章もあり、これはちょっとついて行けない感かあるが、簡単な仕掛けで、脳の錯覚を感じることが出来るのは面白そう。
彼女や彼氏がいるなら、この遊びで更にお近づきになれるかも。

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2023年06月22日

Posted by ブクログ

感想
テセウスの船。身体の所有権を裏付けるものは何か。ただの錯覚にすぎないかもしれない。しかしその感覚を持たない生き物は淘汰されている。

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2023年04月16日

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