あらすじ
一人の青年の出現で揺らぎはじめる夫婦の日常――。「老いゆく者」の心境に迫る、著者の新境地!
趣味のクロスバイクを楽しみながら、定年後の穏やかな日々を過ごす昌平とゆり子。ある日、昌平が交通事故で骨折し、「家事手伝い」の青年・一樹が通うようになる。息子のように頼もしく思っていたが、ゆり子は、家の中の異変に気づく……。
※こちらの作品は過去に他出版社より配信していた内容と同様となります。重複購入にはお気を付けください
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Posted by ブクログ
面白くてあっという間に読んでしまった。
穏やかな老夫婦のもとに、人を殴るのが気持ちいいというヤバめの若者が家事手伝いに来る段階で、どうか相互に良き影響を与える話であってくれ…と祈った。
実際はどうだろう、若者は詐欺まがいのことをし関係は崩壊するが、老夫婦は困難を解決できたことで自分に自信を取り戻し生活は活性化した。
若者の方も、たまたま気持ちがそっちに振れて悪事をしてしてしまっただけで、多分もうああいうことはしないんじゃないか。
老夫婦、50万円を詐欺られそうになった時に子供に相談しないし若者の身元を調べようともしないし悪手を打ってばかりで、これを回避できたのは本当に運がよかっただけなんだけど、
でもこれは詐欺だという結論を2人で話し合って出せた、その点がすごく良かったな。
きっとこれまでもそうして知恵を絞って支え合ってきたからこの穏やかな老後があるんだろうなと思った。
しかし老夫婦がロードバイクで走る描写、普段電動自転車に乗っている身として肩身狭かったな〜。
Posted by ブクログ
うーん、よかった。今、自分の口角が上がっているのがわかる。あと味悪くないラストでよかったとホッとしたのだ。
上品で健康で金持ちで呑気な老夫婦、おまけに仲がいいとくればもう、申し分のない二人だ。子供達もそれぞれに幸せで。そこにささやかに波風を立てることになる一樹、こちらも本当の悪党ではないからまずいことにはならないのだった。
素敵だったな、ゆり子さん。
この手のワールド、得意だよなぁ荒野さん。
一樹が春子と一緒になって、まっとうな職を得て子供に囲まれて幸せになったんたらいいなぁ。
Posted by ブクログ
*定年後の誤算。一人の青年の出現で揺らぎはじめる夫婦の日常―*
なんともはや。
巧過ぎます。
老夫婦の寄る辺なさ。どちら側にも簡単に揺れてしまう青年の脆さ。
最後は「だまされていることじゃなく、だまされちゃいけないと言うことに気が付いた」老夫婦に軍配が上がってほっとしましたが、「いつでも誰かや何かが、したくないことを俺にさせる」青年は何処にたどり着くのでしょう・・・
なんとも言えない寂しさの残る読後感ではありますが、双方の心の機微が痛いほどに伝わってくる、巧みな表現力に脱帽です。