【感想・ネタバレ】「死んだふり」で生きのびる 生き物たちの奇妙な戦略のレビュー

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Posted by ブクログ 2023年11月12日

アリモドキゾウムシとハエトリグモという身近な昆虫を選び実験を行い、海外の論文に投稿する、というプロセスが丁寧に書かれている。
 生物学を専攻する教育養成系大学の学生にとっては、まず読んでみるといい。さらに小中高の教員にとっても、児童生徒に生物の実験を行うことの基本を教えるいい参考となるであろうと思わ...続きを読むれる。

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Posted by ブクログ 2022年12月28日

死んだふりをする昆虫ゾウムシやコクヌストモドキ、アズキゾウムシなどを捕まえて仕分けて何世代にもわたって実験を繰り返す。結果の面白さの前に研究をする人々に対して頭が下がります。
この成果が医療の発展につながるかもしれないというのもワクワクします。

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Posted by ブクログ 2023年10月24日

おもしろいと思うことがまず大事。好きこそものの上手なれというのは真理だ。やってみなければ始まらないのだから。

地味で根気のいる作業だと思われるが、著者のワクワク感が伝わってくる。とことん研究してきた先に、人間の生活にも役立つ可能性が見えてくるが、始めからそれありきではない。
研究にすぐに結果を求め...続きを読むることの弊害を思う。

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Posted by ブクログ 2023年04月26日

「死んだふり」を調べてみたら面白いかも。興味をもった著者が研究をしていく。
調査のしやすさと研究事例の多さから虫について調べてみる。検証していくうちに、じゃあこれはどうなってるのか?と出てきた疑問についてどんどん調べていくのが面白い。
研究が深くなるにつれ他の分野の専門家に協力を仰ぐことで学問がつな...続きを読むがっていくのも興味深い。

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Posted by ブクログ 2022年12月14日

「死んだふり」で生きのびる
~生き物たちの奇妙な戦略
岩波科学ライブラリー314

著者:宮竹貴久
発行:2022年9月13日
岩波書店


死んだふりの研究が盛んになったのは、2004年に著者が死んだふりが生きのびる戦略として有益であることを実証してから。著者は25年間、死んだふり研究をしているが...続きを読む、世界レベルでも著者が残した実績は非常に大きいようだ。逆にいうと、昆虫を中心とした死んだふり研究をする研究者が少ないということでもある。

それが一体なんの役に立つのか?果樹につく害虫除去や、さらには人のパーキンソン病克服への期待も見えてくる。

●死んだふりをする生き物、その目的

<哺乳類(人以外)>
・オポッサムが有名。天敵に襲われそうになると、死んだふりして死臭に近い臭いを出す。
・ある地方のブタ。
・ある地方の羊は手をたたくと驚いてひっくり返る。

<鳥類、両生類、爬虫類、魚類、甲殻類、ダニ類、昆虫類も>
・鶏(鳥類)は夜しか死んだふりをしない。夜間によく野犬に襲われるが、急に脱力して不動になると咥えた鶏を犬が放したという研究報告。
・ニホンアマガエル(両生類)の腹をさすると手足を伸ばして不動に。死んだふり。
・爬虫類ではヘビの死んだふり研究が最も多い。最近ではトカゲも。
・魚類ではサメ。海の捕食者のほぼ最上位にいるサメの死んだふりは意義がまだ分からない。
・メダカ、タイワンキンギョなど淡水魚も。
・ミジンコが死んだふりをする事実が公開されたのは2021年。東北大学の研究者。ヤゴから身を守る。
・昆虫は31目中、11目で死んだふり。マダニもするが、空腹だとできない(米国研究者、2021年)。

死んだふりは、捕食者回避行動に多いが、それ以外も。例えば、アフリカのマラウイ湖の湖底にすむシクリッドというカワスズメは、死んだふりをして待ち、小型のカワスズメが近寄ると襲う。メキシコでも、カワスズメが死んだふりをして小魚を襲う報告。

メスのトンボはオスのハラスメントから逃れるために死んだふり。交尾後もオスが放さないので、急に自ら水中に飛び込んで死んだふり「ペアーハイジャック」を行う。メスの袋の中で精子が長生きする(あるアリでは数十年)ので、多くのオスと交尾する必要がない。病気のリスクがあるから。

著者が沖縄で先輩から聞いたこんな報告。
「アリモドキゾウムシが死んだふりしたままアリに持ち運ばれていたよ」

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○アリモドキゾウムシの研究
南西諸島などに生息し、サツマイモなどヒルガオ科植物の茎や根を食べる。サツマイモは自己防衛のためイポメアマロンという物質を出すが、とても苦く、人はもちろん動物でも食べなくなる。植物防疫法によりサツマイモなどは南西諸島から持ち出せない。

アリモドキゾウムシは死んだふりをする。著者の研究の結果、つつくと静止や捕食中はほぼ100%死んだふりするが、歩いているとオス7割、メス5割がしなかった。しても、死んだふり時間が短かった。

また、夜はオスの死んだふり率や時間が少なかった。メスのフェロモンの影響がないように、別々にしても同じだった。考えられる仮説は二つ。①捕食者であるネズミは夜に嗅覚で獲物を探すため、死んだふりをしても防衛にならない。②夜行性でありメスのフェロモンを嗅ぎつけて交尾したいが、死んだふりをしていたら察知できない。著者は②だろうと考えている。

「歩いているとき」「食べているとき」「動いているとき」「交尾したいとき」「お腹がすいているとき」「あついとき」「大きく育てなかったとき(体が小さい)」に口中は死んだふりをしにくい。

○死んだふりのメリット、デメリット
(死んだふりは本当に有効なのか?)

コクヌストモドキ(穀盗人もどき)という3㎜の甲虫を、死んだふり時間の長い個体と短い個体をそれぞれかけ合わせる。10世代経過して、ロング系は2分以上死んだふりをし、ショート系は死んだふりをしなくなった。つまり、死んだふりは遺伝することが証明された。

捕食者であるアダソンハエトリというクモのメスをシャーレに入れる。クモは襲うが、一度放す。甲虫の硬さに驚くため。その刺激で、ロング系のコクヌストモドキは14匹中12匹が死んだふりをした。クモはしばらく見て興味をなくした。14匹中13匹が生きのびた。一方、ショート系は14匹中、あまりの恐怖で死んだふりをしたのは1匹だけで13匹はせず。ショート系で生き残れたのは5匹。

ロング系は卵から成虫になるまでの期間が短く、成虫になったあとも長寿だった。卵も大きく生存率が高い。一方で動かないことは異性と出会う機会がなく、実験してみると交尾の回数がショートの3.5匹に対しロングは1.5匹だった。また、揺れや低温といったストレスにも弱いことが判明した。

アズキゾウムシでロング系とショート系を作って実験。飛翔能力の高いものと低いものを作成した。飛翔能力が高い個体は死んだふりが短く、低い個体は長かった。また、死んだふりのロング系とショート系を作成したところ、ロング系はあまり飛ばず、ショート系はよく飛んだ。さらに、野生のアズキゾウリムシで調べても、飛翔と死んだふりには負の相関関係が判明した。

○フリーズと死んだふりの違い

多くの研究者は、敵が近づくとまずフリーズして動かなくなり、もっと近づいてくると一転して反撃や逃走へと変え、それでも逃げられないと死んだふりをする、と考えていた。ところが、著者の研究で判明したのは、敵によって戦略を変えるということ。コクヌストモドキは、追撃型の捕食者であるハエトリグモには死んだふりをし、待ち伏せ型のコメグラサシガメ(カメムシ)にはフリーズする。2022年に論文で公表されたばかり。

○何がロング系にしているのか?(=動きを鈍くさせているのか?)

「生体アミン」と呼ばれる神経伝達物質のうち、虫の動きを活発にするのは、オクトパミン、ドーパミン、チラミンなど。逆に非活動的にするのはセロトニン。他の分野の研究者に協力してもらって判明したのが、ドーパミンだった。死んだふりが長いロング系、つまり普段の動きも鈍い虫の脳内にドーパミンが不足していたが、ドーパミンを注射したり、カフェインを食させてドーパミンを増やしたりすると、死んだふりが短くなった。

ロング系は歩くのもゆっくりだし、曲がるときにうまくスピードを落とすことが出来ないことが判明。

同じ集団からロング系とショート系を育てて十数年たった段階で、次世代シークエンサによりゲノム解析したところ、やはりロング系はドーパミンの発現関連遺伝子にゲノムの変異があった。なお、ロング系だけで500以上もの遺伝子が変異していた。

○これがどんな役に立つのか

ロング系を観察していると、人のパーキンソン症候群を思い浮かべた。著者の母親の晩年はパーキンソンだった。共同研究者に頼み、人のパーキンソン疾患の関連遺伝子をコクヌストモドキのロング系とショート系に比べてもらった。今、論文作成中なので詳しくは言えないが、ロング系でパーキンソン疾患の関連遺伝子に多くの変異が見つかった。もしかすると病気治療に・・・著者はドーパミン発現量による変化を「死にまねシンドローム」と名付けている。

果樹につく害虫。樹木に振動を与えて害虫に死んだふりをさせ、効率的に除去していく方法が開発中

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