【感想・ネタバレ】新装版 ソフィーの世界(下) 哲学者からの不思議な手紙のレビュー

あらすじ

14歳の少女ソフィーのもとに見知らぬ人物から届いた手紙。そこにはたった1行「あなたはだれ?」とだけ書かれていた……。
本書が発行された1995年、日本では阪神・淡路大震災と地下鉄サリン事件が相次いで発生し、人々は命の価値と自らの存在意義を模索した。そしていま、未曾有の災害が日本を襲った。「哲学」は私たちの生きる道を照らすためにある。世界50か国1500万人超が読んだ名作が、著者の新たなメッセージを加えて再登場!

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Posted by ブクログ

本書は「哲学者からの不思議な手紙」とサブタイトルがあるように、哲学について書かれたファンタジー小説です。

哲学というと何やら小難しい印象がありますが、小説の形式をとったストーリー仕立てで、物語を楽しみながら読み進めることができました。

とは言え、上巻と下巻の両方を通して読み終えた時の感想は、ただストーリーをなぞり、それを楽しんだだけで、何か大切なものに気づかず通り過ぎてしまっているような気がして、続けてもう一度読み直しました。以下は上下巻を通して再読しての感想です。

主人公は「ソフィー」という名の14歳の普通の女の子。そんな彼女のもとに、
「あなたはだれ?」
とだけ書かれた差出人不明の手紙が届きます。

なにやらミステリータッチな雰囲気で始まりますが、この手紙をきっかけに、ソフィーは手紙の差出人である謎の哲学者から、ヨーロッパの哲学の歴史について教えを受けることになります。

当然、ソクラテス、プラトン、アリストテレス、デカルト、カントなど、数多くの哲学者と、彼らが説く哲学について紹介されていますが、それらの解説は別の哲学書に任せるとして、ここではストーリーに沿って、印象に残ったところを紹介しようと思います。

ご存知のように、英語で哲学は Philosophy(フィロソフィー)といい、「フィロ」は「好む」「愛する」というような意味で、「ソフィー」は「智恵」「知識」などを差す言葉だそうです。

だから、「ソフィーの世界」というこの本のメインタイトルは、ソフィーという名前の女の子を主人公としたファンタジー小説であると同時に、哲学の世界についての解説という、両方の意味を掛け合わせた実にうまいタイトルだなと感心しました。

さて、この不思議な手紙を受け取った後のソフィーの心境について、こんな描写があります。

「まるで自分が、魔法の力で生かされている人形のような気がしたのだ。わたしはこの世界にいて、不思議な物語のなかを動きまわっている。」

二度目に読んで気づいたのですが、これが物語の中盤以降に判明する、驚くべき事実を暗示する記述になっています。ソフィーはまるで予言者なのかと、つい思ってしまいます。

そのあと再びソフィーのもとに
「世界はどこからきた?」
とだけ書かれた第二の手紙が届きます。

こうして、手紙で問われた「あなた=人間」と「(住んでいる)世界」、この2つの対象の「存在の謎」をめぐり、ソフィーと謎の哲学者との間で、いよいよ哲学の話が始まります。

読んでいて、まず印象的だったのは、ソフィーが初めて謎の哲学者アルベルトと直接会って対話した教会での出来事です。対話を終えて教会をあとにする時、ソフィーは、マリア像の目の下に小さな水滴(涙)があるのを目にします。

マリア像が突然涙を流すというこの非現実的な状況は、このときのソフィーはまだ気づいていませんが、ソフィーが存在する世界についての事実、つまり自分が住む世界が現実でないという事実を、示唆しているのだと思います。これも二度目に読んで気づいたことです。

それまでは、哲学者アルベルトからの一方的な手紙だけの教えでしたが、この教会で二人は初めて顔を合わせ、言葉を交わし、ここから対話による哲学の教えが始まったところでした。そんな物語の転換期に挿入されたこの描写は、最後まで読み終えてからこそ分かることで、初めて読んだ時には気づくこともなく読み飛ばしていました。

そして物語前半の最後(上巻の最後)、哲学者アルベルトがイギリスの哲学者バークリーについて紹介する章で、ついにソフィーは自分の存在についての事実を知ることになります。

【以下、ネタバレとなります】

ソフィーと哲学者アルベルトとが哲学について対話するストーリーとは別に、ソフィーとは全く関係のない同じ年の女の子ヒルデが、15歳の誕生日祝いに父親から贈られた、分厚いバインダーに綴じられた長い物語(父親自身が書いたもの)を読むという場面が、物語後半(下巻の冒頭)から登場します。それまでもヒルデという名前は所々に出てきていたので不思議に思っていたのですが、ようやくここでソフィーとヒルデとの関係が判明します。

そこでは、ソフィーはヒルデが読んでいる物語の登場人物に過ぎなかったこと、すなわち、ソフィーという存在も、哲学者の存在も、哲学者との対話も、すべてヒルデの父親の創作であった、ということが分かります。

ソフィー自身、自分は実在する世界に住んでいる実存する人間とばかり思っていたのに、実は非現実世界に住む実体のない存在であり、単なる紙とそこに書かれた文字に過ぎなかった、ということを知ります。

想像もしていなかった展開に、最初に読んだときには、しばらく頭の整理ができませんでした。まさにファンタジー小説です。

しかし、哲学者アルベルトは薄々このことに気づいていて、ソフィーと一緒に実体の無い非現実世界からの脱出を計画します。

物語の冒頭の「あなたはだれ?」という問いは、その「存在」を問うもので、ソフィーが哲学の歴史を学ぶことで、存在するということの意味を、読み手の自分も少しは理解していたところなので、その後の展開は、考えさせられるものでした。

やがて、ソフィーとアルベルトは脱出に成功し永遠の世界に存在することになります。そこは身体から解放された純然たる精神の世界なので、人間のような生活はできないけれど、死ぬこともなく永遠に生き続ける世界です。

一方、ヒルデは人間として実在し時間の限られた世界に存在しています。時間の限られた世界とは、やがて死が訪れる世界ということです。しかし、不死の世界に存在することになったソフィーは、ヒルデの生活を見て涙を流します。

いつか必ず死ぬという思いがあればこそ生きているということを実感できるのであり、そんなヒルデをソフィーは羨ましく感じたのだと思います。

果たして、どちらの世界の在住者が幸せなのでしょうか?

哲学は誰にでも関係することばかりで、本書は繰り返して読めば読むほど、新しい発見や気づきが、必ず見つけられる気がします。

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2025年11月27日

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ネタバレ

小説の形式で哲学を語る、ということがはたして可能なのか? 本作と出会ったとき、最初に胸に兆した疑問がこれだった。
読み始めると、殊の外相性がいい。著者ヨースタイン・ゴルデルの筆力に負うところが大きいのだろうが、日ごろ「哲学」と聞いただけで忌避してしまいがちな人にこそお勧めしたい。

このレビューは、『ソフィーの世界』の上下巻を通読しての感想となる。
著者はノルウェー出身なので、ここで語られる「哲学」は、西洋哲学である。
古代ギリシャのソクラテス・プラトン・アリストテレスと続く哲学に始まり、中世哲学やルネサンス、啓蒙主義などに触れ、近世の合理論や経験論の解説がなされる。最後に近代哲学に分類されるニーチェやサルトルが語られる。
せっかくなので現代の哲学についても触れてほしかった思いはあるが、本作を一通り読めば、西洋哲学の系譜を俯瞰することができるだろう。小説なので、なおかつ読みやすいのはうれしい。
深く掘り下げるには、なお専門書の類を渉猟しなければならないが、哲学の入り口としては申し分ない。子供たちに向けたバージョンも発行されているのもうなずける。

小説としては、物語の中で、別の世界の物語が語られる。メタ構造の物語であり、それがミステリー要素を生み出している。こうしたギミックも小説ならではであり、ややもすればとっつきにくさを感じてしまう哲学を、平易な次元に下ろして読ませることに寄与している。
哲学を学ぼうとするよりも、物語を楽しむという気持ちで読み進めるほうがよい。
本作でも哲学が投げかける命題は難解だが、ソフィーと先生の軽妙なやり取りのなかで、自然に何となく理解できたような気になる。

読んでいくうちに、普段とは異なる哲学的な思考方法にいくつも触れて、その中から多くの発見をすることになるだろう。そして、同時に優れたファンタジー小説を読み終えた満足も得られる。
一つの物語で、たくさんの楽しさを感じることができる。非常に「お得」な作品だと思う。

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2024年06月13日

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一番読書をしていた小学生の頃に読もうと思って2度も挫折した本書でしたが、それから何年も経ちふと大人になってから読んでみました。
それがとっっても面白い!哲学の通史について分かりやすく説明されているし、小説の中で教えられた哲学の考えが小説全体の構造にまで練り込まれて作られているという、二重に楽しみのあるとても良い本でした。
またふとしたときに読み返したいです。

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2023年05月28日

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さらに哲学を学びたいと思わせてくれる作品。今後、何度も読み直すと思う。子供が生まれたらぜひ読ませたい一冊。

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2022年11月06日

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ネタバレ

戦慄のミステリーでしょうか、哲学史の指南書としても秀逸ですし物語としてもぐいぐい引き込まれていきます。ヒルデとソフィーの交錯がなんとももどかしい。

キェルケゴールあたりの実存主義は全くノータッチだったので、大前提としてそこにあるのであって、生きる意味といった根本的な真理は存在しない、個々人がそれぞれに見出さなければならないのだといった思想の到達点だと知れただけでも有意義。そこに暗澹たる雰囲気とシュールレアリズムが内包されているけど、どうも自由を付与されたことでがんじがらめになって指針を無くした個人主義たる現代に通ずる空気をびしびし感じます。

占いや霊媒師やらなんやらのオカルト物に関する痛烈な批判、生きることとはその生まれた時代ごとにアジャストした思想を構築していく、そんなことが大切なのではと思ったり。娘に将来お勧めしたいリストに加えねば。

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2022年04月23日

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哲学史に分け入りながら、ファンタジーな冒険物でもあり、ミステリーでもある。
この本を知った16歳の時に、素直に読んでおけば良かったなぁとも思うけど、43歳になってまた読むチャンスが巡ってきたことを喜ぶことにしよう。

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2021年06月21日

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再読。上巻がソフィーが主役の本ならば、下巻はヒルデが主役の本。上巻でまさにミステリーだったことが解き明かされる。下巻は上巻以上に読み応えがありました。この本はまた再度読みたくなる本だ。
娘に宛てたミステリー哲学小説。哲学もだけど、フェミニズム、国際連携、宇宙などの観点からも描かれた物語。呪いのガーデンパーティにならぬよう、自分の存在を自分で創造せねば。

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2021年03月07日

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ネタバレ

後半の方が断然面白いね!
ソフィーとヒルデの二重構成ってのが非常に◎
この2人のストーリーを通して哲学を学べる!

哲学の話も近代になってきて、より興味深い。
人間の心理?的な事に興味があるので、前半は、生物や世界の成り立ち?的な感じであまり自分の興味分野ではなかった。
けどそれはその当時分かっていた事が少なく時代を重ねる事に生物とは、人間とは、世界とは、って事が分かってくるからや!

現代はどんな主義で、これから先どのように変化するんやろ?!

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2020年07月19日

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長年読みたいと思いつつなかなか読む機会のなかった本。やっと読むことができました。読んだらそう感じるだろうなとは思っていたけどやはりいちばん強く感じたのは「もっと早く読めばよかった」ということ。この本の存在自体を知ったのが20代になってからだったけど、10代で読めてたらもっと色々なことを感じていただろうなと思う。

初心者向けの哲学入門書、というか西洋哲学史の紹介本といった内容。すでに高校も大学も卒業し、紹介される哲学者やその思想の概要も知っているものがほとんどだったので、その点個人的には復習しながらで、あとは小説としての筋を楽しむ感じになったけど、お話を楽しみながら、思想の内容もソフィーと一緒に新鮮に知ることができていたらどんなに楽しかっただろうかと思う。

それでもこの本は単なる哲学入門書なのではなくて、あくまでも小説だし、しかもミステリー仕立ての小説だ。ミステリーとしての仕掛けと、紹介している思想の内容を所々で交差させながら進めていく展開が非常に上手くて、ひさしぶりにドキドキしながら先を読み進めた素晴らしい小説だった。

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2020年06月22日

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素晴らしい本だなあと思いました。哲学入門書。こんな本に早く出会ってたら、と思ってしまいます。
哲学の歴史と、ストーリー。時代には思想があって、様々な意見が生まれ議論される。
過去の偉人から繋がれてきたバトンはついに今の時代へ、我が国日本もまた新たな思想が生まれるのかな?今はキルケゴール、サルトルがいう実存主義の時代を感じます、それにも亀裂が生じてきたというか。
僕はこの本のソフィーと、アルベルト、少佐の事をこれからもずっと覚えいたいです。

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2014年07月02日

Posted by ブクログ

下巻も上巻同様とても楽しく読むことができます
哲学や人類の歴史を振り返りながら飽きることなく学べます
簡単な言葉でとてもわかりやすく書かれているので、大人から子どもまで幅広く対象となる作品です
哲学に限らず精神分析学についても触れられている箇所があり、哲学と精神医学に繋がりを感じることができます
えないものを学問的に見ようとする部分は似ていますよね
終盤はものすごくファンタジーです
好みが分かれそうですが、私はとても好きな世界観です
とにかく哲学の歴史を知りたい!基礎的な知識を得たい!という人は、本作を手に取れば間違いないでしょう

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いま、ふたたび自分の存在を問い直すときがきた

14歳の少女ソフィーのもとに見知らぬ人物から届いた手紙。そこにはたった1行「あなたはだれ?」とだけ書かれていた……。
本書が発行された1995年、日本では阪神・淡路大震災と地下鉄サリン事件が相次いで発生し、人々は命の価値と自らの存在意義を模索した。そしていま、未曾有の災害が日本を襲った。「哲学」は私たちの生きる道を照らすためにある。
世界50か国1500万人超が読んだ名作が、著者の新たなメッセージを加えて再登場!

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2025年06月19日

Posted by ブクログ

自分が何者で、ここで何をして過ごすのか再考させるきっかけになった。
最終章では、小さな世界に生きているだけでなく、そこには宇宙にも及ぶことを想像することの重要性を感じさせられた。

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2023年03月12日

Posted by ブクログ

ネタバレ

ソフィーとヒルデが対話する辺りは、ミヒャエル・エンデの「はてしない物語」を連想する。あまりにソフィーとヒルデのキャラが被っているのも混乱の種だね。

最後にはソフィーもアルベルトも、クナーグ少佐(「ソフィーの世界」の作者であり、ヒルデの父)の物語世界から無事に飛び出して自由を得た(と僕は解釈した)のでした。

創造主(それは物語の作者かあるいは神か)のお作り給うた世界から飛び出すという発想は、マトリクスも連想したが、その領域に到達するために「あなたはだれ?」という問いから出発するのは、なるほどと思わせた。前編から打って変わって後編は単調だった物語のどんでん返しにフォーカスが当たる。

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2022年01月05日

Posted by ブクログ

哲学史がわかりやすく説明されていて、かつファンタジーの要素も入っていてとてもおもしろかったですが、哲学の部分はやはり難しかったです。

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2021年08月29日

Posted by ブクログ

哲学について少しでも知れたような気分になった。

元々が難しい学問だと思うので読んですぐ理解できるものではないが、かなり哲学をわかりやすく紹介できている本だと思った。

哲学の持つ、神秘的で人間の根本から考え直させられる、何だか触れてはいけないような雰囲気を知ることができます。

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2019年11月16日

Posted by ブクログ

ネタバレ

最後まで小説としてはいまいちだったが、上巻より下巻のほうがスリリングだった。それにもっともわかりやすい哲学講座っていうのもまんざらではないだろうし、哲学者のカタログとしてはなかなかよかったと思う。

カント
ヘーゲル
キルケゴール
マルクス
ダーウィン
フロイト
サルトル

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2012年08月15日

Posted by ブクログ

後編にあたる本書、面白いのはこれから。
哲学とは何ぞ?ということが理解出来るような仕掛けが圧巻。読み進めるうちに、この世の創造、宇宙の起源、存在とは、生と死について、等々が自らの頭で考えさせられるように物語が構成されている。哲学とはつまり、外部からのインプット情報による知識、ではなく自己による内部生成による思考では、と考えさせられる。この世がどのように作られ、またどこに向かっているのか、現代の科学では解明できないことを解明していくことが人類の進むべく道なのでは。。。 面白いです。

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2012年05月06日

Posted by ブクログ

ネタバレ

哲学史をざっと学ぶのに確かに良かった。まあ、読んでいるうちに誰が何を言ったかやっぱりこんがらがってくるんだけど、それは僕の脳みその所為なのでしょうがないw

全体としては、ディック的、イーガン的、はたまた「ループ」とか「アラビアの夜の種族」的なSF/ファンタジー風味のメタメタ構造で好きな人にはたまらん。

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2011年08月18日

Posted by ブクログ

あさイチで紹介されていて、気になって近くの本屋に行ったけどなくて、ネットで購入!

上巻と下巻で哲学難易度が変わっていて、下巻の方が難しくは感じた。

自分自体が存在するのか、実は夢の世界で、誰かから客観的にみられながらすすんでいるのが現実世界なのか、みたいな壮大なスケールで読み進めていった。

の自分が抱えてる悩みなんか、ちっぽけだなって思えるくらい壮大さを感じるが、共感や実感が伴わない部分もあるけどストーリー展開はおもしろかった!

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2025年02月27日

Posted by ブクログ

買った当初はまだ10代で、かなり難しかった…
また挑戦したいかどうか?
他に読むものが無くなったらという感じで優先順位は低いです。 読み解けたら面白いんだろなとは思うんだけど。

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2024年11月27日

Posted by ブクログ

ネタバレ

上に比べるとファンタジーの要素が強くなっている。

主役がソフィーからヒルデに変わるのも面白い。

上下巻を通して生きる事の意味を考える事が多く、読む前に比べると

現在の立ち居地を見直すきっかけになったと思います。

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2012年03月09日

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