【感想・ネタバレ】発達障害の子どもたちのレビュー

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Posted by ブクログ

発達障害の諸症状だけでなく、どのような場合にどの薬を用いるか、子どもの場合はどのような学校を選択するとよいのかなど、当事者の視点にたった説明に著者の人柄を感じる。当事者も支援者も、また一般社会でも、正確な知識や対処法についてまだまだ理解が不十分な分野だと思う。更に理解を深めたくなる。

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2023年04月30日

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臨床経験の豊富な医師が知見を盛り込んだ発達障害の良書。
自立とは何か。通級や支援学級の目安など具体的に書かれており、参考になることが多かった。

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2023年04月05日

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豊富な臨床経験のもと、目から鱗の話が多かった。巷にあるこの分野の本を読んでいると、本質を忘れやすい。時々読み返したい。

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2022年12月26日

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発達障害とは何か?が体系的に学べる良本。

本文の中にある、国語力が低いと自身の気持ちを表現できずストレスがたまり非行に走ってしまうというのは、
発達障害の方だけでなく、健常者にも当てはまると思ったし、不安な気持ち、嫌な気持ち、それらを言語化することで気持ちの整理ができると学んだ。

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2022年02月07日

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とにかく物凄い情報量で、読むのが大変でした。
ですが、それほど読む価値があるということ。
しっかりと理解しておきたい話が多かったのでじっくりと読みました。

発達障害に関しては研修も受けて自分なりに学んでいるつもりだったのですが、この本で語られる生の発達障害者の姿、事例、処置は、本当に貴重で、自分の理解の足りなかったこともスッキリとわかった。

発達障害と児童虐待の関わりは盲点でした。
たしかに虐待された子どもは、脳が萎縮すると聞いたことがありましたが、自閉症やADHDと似た症状が出るとは。
この本では被虐待児についても、事例を交えて詳しく語られています。

自閉症の話が個人的に興味深い。
感情面では普通の人と同じでも、感覚過敏になってしまったり、抽象的な概念が理解できなかったり、過去の記憶が現在と並存するという、想像し難い感覚。
筆者曰く〈文化〉だそうですが、以前『自閉症だったわたしへ』を読んだ時の不可思議な世界観の正体が明確に理解できました。

特別支援教育の意義も再確認させられた本。
発達障害者を子に持つ親はもちろん、発達障害者と関わるであろう職の人は、繰り返し読むべき本です。
無関係に思われる人にも是非読んでほしい。
それほどこの本には、発達障害者の理解や適切な対処を願う筆者の切実な思いがこもっています。

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2019年01月29日

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発達障害について事例を基に噛み砕いてかかれている。そのため、知識を得るにはうってつけだと感じた。

発達障害の概念がないと特別支援教育はできないと強く感じた。

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2016年05月07日

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発達障害の子を持つ親として、なかなか参考になる本がなかったが、本書は入門編としてとても優れている。
一番いけないのは親が世間体を気にして子どもに適した方法を取らないこと。

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2015年09月26日

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発達障害について網羅的に、かつ、それぞれのこどもにとって何が最良の選択であるのかを、臨床での例から教えてくれる。具体例を交えてあるので、実際にその障害を持つこどもと接した事がなくても、想像すること、自分が関わるこどもに当てはめることができ、勉強になった。

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2014年08月16日

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筆者は小児科医として、脳科学など科学的な見地から発達障がいがある子どもたちへの対応の仕方が詳細に記述されている。

「発達障害とは、子どもの発達の途上において、なんらかの理由により、発達の特定の領域に、社会的な適応上の問題を引き起こす可能性がある凹凸を生じたもの」とし、
自閉症、ADHD、アスペルガー症候群などそれぞれの認知の特徴に応じた働きかけの仕方によって、社会的な適応を向上させることができるとしている。

最悪の対応は「放置」であるとし、どのような療育、教育の選択肢があり、乳幼児から就業者、成人となるまでのスパンで解説されており、子どもの幸せで健康的な生き方のひとつの可能性として、教師や指導員、健常的な子どもをもつ親にとっても必読の価値ある内容だと感じる。

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2013年11月08日

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大学授業の指定で読んだ。
特別支援教育の幅広い問題点が概観されている、密度の高い本。
医者としての立場で真摯に発達障害の療育に取り組んでこられた筆者が、幼児期から成人期までを見通して提言されているため、
かなりしっかりした論調で、問題と提言が整理されている。
全面賛成できない面や、教育環境等で他の意見をぶつけてみたいと
思った点もあったが、教師の参考書としてはかなり勉強になる。

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2013年04月24日

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何となく発達障害について信じていたことが見事に打ち砕かれた。人生というスパンで見て実用的、実践的な内容である。発達障害は当然のこと、健常児の教育、育児についても益するところ大である。

・不妊が生じるにはそれなりの理由がある。
・非行のような、日本では環境因が決定的と思われている問題も、生物学的な素因と環境因を比較すると、前者の方が圧倒的に高い。
・強いトラウマ反応を生じる個人は、もともと扁桃体が小さい。小さい扁桃体は遺伝もあるが、被虐待体験が大きい。
・国語力の不足が内省力の不足に直結し、悩みを保持することができず、非行に走りやすい。
・逆転バイバイと疑問文による要求on自閉症児。
・自閉症は統合失調症とは逆に語ることは困難であるが、書かせると容易になる。
・自閉症は基本的な感情は同一。
・一度に複数の情報を提示しない。
・不登校外来を受診した5割になんらかの発達障害が認められ、その8割は高機能。
・高機能は広汎性発達障害は8割が深刻ないじめを受けていた。
・文脈から理解することが困難で、人の気持ちを読むことや人の気持ちにあわせて行動することができない。
・広汎性発達障害の子どもは迫害体験があるために、対人関係のあり方を被害的に読み誤ることを繰り返す。
・早期診断、虐待、いじめから守る。触法行為から守るために。
・中学生から仕事の練習の機会を持つことが必要。
・被虐待児は5才以下…反応性愛着障害、6才から…解離性障害、12才から非行の割合が増える。
・虐待的絆の考慮。その後の愛情だけでは困難。
・10才までに身についた言語や、非言語が一生の基本になる。
・完璧な親はしばしば重大な問題になる。親子関係よりも夫婦関係が重要。
・言語療法、作業療法はお稽古事同じ。
・日本の生徒は中退、不登校、非行、殺人どれも欧米の数分の一から十数分の一。

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2013年02月26日

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本書は、児童青年期精神医学の専門家である杉山登志郎氏が、発達障害とその治療について、その誤解と偏見を解くために書かれた本である。

本書は、著者が発達障害外来で出会った、発達障害とその治療に関する誤解や偏見、例えば:
・発達障害は一生治らないし、治療方法はない
・発達障害児も普通の教育を受けるほうが幸福であり、また発達にも良い影響がある
・養護学校卒業というキャリアは、就労に関しては著しく不利に働く
・発達障害は病気だから、医療機関に行かないと治療はできない
・なるべく早く集団に入れて普通の子どもに接するほうがよく発達する
などについて、それらが誤っていることを指摘する内容となっている。

第二章では発達障害の生物学的な要因について説明し、発達障害についてDSM-IVおよび、著者独自の分類に基づくグループ分けがなされている。後者の特徴は、子どもの虐待による発達障害症状が1つのグループとして提示されていることである。これについては著者の他著「発達障害のいま」に詳しい。

第三~七章ではそれぞれ精神遅滞、自閉症、アスペルガー症候群 (広汎性発達障害)、ADHD・学習障害、子ども虐待による発達障害、について実例とともに、それぞれの症状、成長に伴う推移、治療法について解りやすく述べられている。特に、成長に伴い症状がどう推移していくかについてはインターネットなどで断片的な知識や、個人の体験談をそれぞれ調べるより圧倒的に把握しやすい。

第八・九章では発達障害の早期療育および特別支援教育について述べられている。ここではまず両親が発達障害についての正しい知識、対処方法を学ぶこと、そして、日常の規則正しい生活が大切であることが強調されている。

本書は全体を通して平易な文章で書かれており、内容も簡潔でありながら、読者の知りたいことが適切に分類されていると感じた。特に、単に療育を受ければ効果があるというものではなく、正しい知識と対処に基づいた、家庭における日常の生活および親との関わり合い (愛着形成) が大切であることが理解できると思われる。
初学者にはとても参考になる文献と思われるので★5つとしたいと思う。

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2012年12月31日

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教育に携わる人にぜひ読んでほしい。
なんらかの障がいを持つ子供たちの人生を決める要因の一つに、
「教師」の存在があることを再認識しました。
※なお,本書では教育についてのみ書かれているわけでは有りません。

学習障害を抱える子供が、
学校教育〜就職におけるパスの選択違いによる不幸を避けられるように、留意しておくべきことが書かれていると思います。

私が教育の現場について無知であるので、あくまで感想として述べました。

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2012年08月19日

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発達障害児に関して具体的な事例を紹介しつつ概要をまとめた本。発達障害については本人や家族の体験談などでその困難な生活を見聞きするケースが多かったのだが、この本は精神科の先生による落ち着いた筆致なのが読みやすい。本人の困難、家族の苦悩に引きずられて感情的に受け止めるより、どう対処したらいいのかを考えさせてくれる。発達障害を抱えながら、いかに現代社会に適応して生きていくか、どういう生き方が本人に取って望ましいかを冷静に考えて寄り添い、必要がなくなったら離れる(あくまでも受診なので経過良好とみたらいったん診療は終了する)。場合に応じて薬も使うし、通常学級と特殊学級のどちらに通うべきかもケースバイケースだし、今は障害者雇用が会社の義務だから、十分配慮してもらいながらその枠で就職した方がよほど安心安全に生きていけるケースもある。学習障害は適切な対処をすれば後年に大きく困ることなく社会生活を送ることが出来るという分析は非常に興味深かった。

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2024年01月27日

Posted by ブクログ

発達障害は発達の凸凹
脳の機能不全によるもの。
出来るだけ早期に治療をすることで良い成果が得られる。
薬物による治療も有効。
成長につれておさまっていく症状もある。

周囲の人の理解と協力で生きやすくなる。
成功体験を積み重ねていくことで、社会人として生きていくこともできるようになる。


今は困っているのは周囲の大人ではなく子どもなのだと思う。

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2020年07月10日

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ネタバレ

約10年ぶりに再読。症例も交え、分かりやすく記載しており(約10年前の著作であり、DSM-5前のため、診断名の読み替えは必要であるが)、発達障害を理解するには入門書として最適かと思います。
「小学生、中学生年齢から親しい交流があるもの同士が共に青年に成長するという経緯が必要で、いきなり青年を集めてもこのような支え合いは困難であるようだ。」のところは、敢えて触れなくても良かったのでは。標題のとおり「子どもたち」としているのだから...。

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2019年02月02日

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ほどよく専門用語などが使われているので、なんとなく勉強をしている感があってちょうど良かった。
学校の先生を目指すような人は一読しておくとそれなりに知っているような話ができるのでは。

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2017年11月18日

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子どもの発達障害についての本で一番分かりやすかった。それでもまだ広範性発達障害は難しい。
今回は自閉症が幾分か理解できた。

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2017年11月17日

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シンプルかつわかりやすい内容で、具体的な事例も盛り込まれているので、これから深く学ぶというきっかけとしては、ほんと最適な1冊だと思う。

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2017年08月01日

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発達障害の明確な線引きは存在しない。
障害があれば療育、支援級へとか診断がついてなければ普通級とかではなく、「障害有無でなく、社会生活に困ってるなら何らかの支援が必要」という単純なロジックに納得した。

また、自閉傾向の世界観を表現した「知らないロシアの街に放り込まれ、日本語レストランを見つけたとき」という例えがわかりやすい。
処理しきれないあふれる情報に囲まれ、よりどころとなるところにこだわるそぶりや、情報を遮断しようとするそぶりがいわゆる自閉傾向といわれるものにあたる。

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2015年09月22日

Posted by ブクログ

人生の早期に子供に挫折経験を与えて良いことは一つもない。 p.22

この受精に始まる一連の過程は、それ自体、様々なリスクをはらんでいることに留意してほしい。一対の遺伝情報が二つに分かれ、その片割れ同士がくっついて新たな遺伝子の一対を組み上げるのであるから、その最初の作業自体がさまざまな困難をはらんだ仕事である。
そもそも何のために、このような危ないことを世代毎に行わなくてはならないのか。これについて、固定した遺伝子は状況の変化に対応できないから、という説明がなされている。少しずつ変化するためにこそ、このような危ない橋を渡るのである。言い換えると、この段階で、すでに様々な突発的な変異が起きることが前提となっている。 p.26

ちなみに現在、人工授精など生殖医療はどんどん進んできている。子供を望む夫婦の気持ちを慮ってか、生殖医療に対する積極的な批判はほとんど見あたらないが、不妊が生じるにはそれなりの理由があり、そこを強引に妊娠させる過程においてある程度のリスクがあがることは当然である。この本の中ではほとんど取り上げることはないが、実は生殖医療において発達障害も生じやすいし、また意外なことに、子供虐待のリスクが高まるのである。 p.27

ひとたびその家族に子どもが加わったときには、子育ての単位としての機能が、子どもが全面的な世話を必要とする時期、少なくとも三年間、できれば十二年間、は求められる。これは発達障害の有無を越えた事実である。
 特に生後三年間は、できるだけ親は子どものそばにいてほしいと思う。そばにいるといらいらして虐待してしまうという場合も、困ったことに今日少なくないので、例外はあるとしても、人間の子どもという存在は、子育ての早期には養育者の絶対奉仕を要求するのである。もちろんそこには大きな喜びもあるのであるが。
 筆者としては女性の自立は必然でありまた必要でもあると思うが、誰かが子育てを担わなくては被害を受けるのは子どもの側であり、それは社会全体に十数年後には跳ね返ってくる。子育ては集団よりも個人のほうがよい。特に生後早期から数年間において個別のそだちが必要であることは、乳児院で育った子どもたちが後年、心の発達の問題を抱えやすいことからも、さらにイスラエルのキブツをはじめとするさまざまな実験からもすでに証明済みのことである。 p.32

そだちの終着点

遺伝子に蓄えられた情報は、環境によって発現の仕方が異なることが示されたのである。遺伝情報の発現の過程は、遺伝子そのものであるDNAの情報が、メッセンジャーRNAによって転写され、タンパク質の合成が行われることによって生じる。この過程が実は問題で、ここで環境の影響を受ける。多くの状況依存的なスイッチが存在し、環境との相互作用の中で、合成されるタンパク質や酵素レベルで差異が生じることが徐々に明かとなってきた。 p.34

遺伝子の持つ情報は、学習、記憶、脳の発達、感情コントロールのレベルでどうやら環境との相互作用が生じるのである。つまり遺伝的素因の解明は、障害を決定づけるのではなく、高リスク児に対する早期療育の可能性を開くものとなる。 p.35

チックはドーパミン系の神経経路の過剰反応を原因とする明らかな生物学的な素因があり、それなくしては生じない。しかし臨床における経過は、ストレスや緊張などの情緒的な問題が要因となり、良くなったり悪くなったりを繰り返す。……中略……一過性で自然軽快をするものが大半を占めるが、大声の叫びの反復など周囲に迷惑を生じる重度の不適応や、そこから発展して強迫性障害(ばかばかしいと分かっていても手を洗うなどある動作を繰り返さざるを得なくなるという状態)などはっきりとした精神科疾患に至るものもまれにある。この重症度については、素因もあれば環境因も関与している。 p.39

「発達障害とは、子どもの発達の途上において、なんらかの理由により、発達の特定の領域に、社会的な適応場の問題を引き起こす可能性がある凹凸を生じたもの」 p.45

従来、発達障害を非常に限定的に捉えていたために、比較的軽微なものに関しては、子どもの高い代償性もあって、その存在に気づかれずに青年期、あるいは成人期を迎えることも生じてきた。特に知的障害を伴わない軽度発達障害は、軽微とは言いがたいさまざまな適応上の問題を生じていても、発達障害の存在に気づかれずに経過する場合がある。 p.47

知的障害を示す児童の89%までがIQ50-69の範疇に入る軽症の知的障害である。IQ50とは、成人に達したときの知的能力は健常発達の九歳前後と同等である。われわれの周りの小学校四年生を考えてみれば了解できるように、抽象概念操作や、複雑な知的作業は困難であるとしても、特別支援教育をきちんと積み上げてゆけば、このレベルの知的障害は社会的な自立を妨げることはない。一般的な単純作業であれば工場労働は可能であり、むしろ、就労の報告を見ると、単純作業においては就労継続率はむしろ高いことが報告されている。経済的な自立や結婚、子育てにおいても、必要な時のみ若干のサポートがあれば可能である。
全体の約九割の知的障害児がIQ50以上ということは、知的能力そのものによって自立を妨げられる可能性があるグループは0.2%に過ぎず、精神遅滞の実測値である1%前後というのは、その実に八割まで、回避可能であった適応障害が生じたものであると言うことだ。 p.52

このように適切な特別支援教育を受けて、知的障害を持っていてもきちんと就労し、ついに幸福な結婚と子育てが可能となった者と、その逆の道を辿った者とその道のりを見ると、発達障害の適応を決めるものは実は情緒的なこじれであるという事実がより鮮明に見えてくるのではないだろうか。 p.59

境界知能の重要性の一つは、その多さである。計算上は14%の子どもがこの境界知能の範疇に入る。このレベルの児童は、実は小学校教師の力量が最も反映される児童でもある。これまでの状況をあえて単純化すれば、小学校中学年のいわゆる9歳の壁の前後に、良い教師に当たった境界知能児はこの壁を突破し、知能自体も小学校高学年には正常知能になることが多かった。それに対し、そのような教師に恵まれなかった児童は、ここでハードルに捕まり、知能自体も小学校高学年には知的障害のレベルに下がっていたのである。 p.60

心因性視力障害はまさに学校の授業を受けることに困難があることを端的に示す救助信号である。 p.66

F君のような児童は、中学卒業後に良き職人、良き労働者として十分に適応していたはずである。今日の学歴社会、そして第三次産業が圧倒的な割合を占める社会的な構造の中で、F君のような事例において、成長した後の良好な社会的適応を必ずしも保証できない状況となっている。 p.68

成人の発達障害の方への対応のコツについても触れておきたい。今、あちらこちらから悲鳴が上がっているのを聞くからである。発達障害の治療においてもっとも必要なことは、障害に関する正確な知識を提供し、新たな自己認識を手助けすることであると思う。成人になって初めて診断を受けた事例を見ると、「よくここまで何もなく……」という不適応事例と、無駄に年を取っていないと実感させられる適応事例とに二分できる。
不適応事例はほとんどがうつ病など併発症を持ち、被害的な対人関係を抱える事例も多い。このような事例では、障害の診断に対する受け入れは速やかである者が多い。ほぼすべてが目から鱗という感じで自己のハンディキャップについて納得をされる。つまり自己自身との関係修復は比較的容易である。 p.121

認知の穴

愛着行動としては次の三つがある。これらの行動はすべて乳幼児が不安になったときに特に顕著に表れる行動であることに注目してほしい。愛着者にじっと視線を注ぐ「定位行動」、愛着者にしきりに泣き声を上げたり声をかけたりする「信号行動」、愛着者に後追いをしたり、しがみつこうとする「接近行動」の三つである。
愛着行動は、零歳代後半から始まり、二~三歳に第一反抗期をもって完成することが知られている。この時期になると目の前に愛着者がいなくとも、愛着者のイメージを想起するだけでそれほど不安に駆られることはなくなり、つまりしばらくの間であれば養育者から離れることができるようになってくる。この愛着行動は安定した対人関係の基礎とも言うべきものである。
さてこの愛着の形成に支障が生じた状況が、反応性愛着障害である。子ども虐待において、安心を与えてくれるはずの養育者から被害を受けるのであるから、重大な情緒の混乱を来すことはご理解いただけるであろう。この障害が、対人関係の重大な問題に至ることは当然として、重要なことは衝動や怒りのコントロールの障害を来すことである。愛着が、子どもが不安に駆られた時に見られる行動であることを思い起こして欲しい。愛着形成に決定的な問題が生じると、子どもは不安な時に自分を慰め、安心させる術を持たないままに成長するのである。 p.150-151
だから、依存症になりやすいんだ。
私はソリティアの画面をにらみつけながら泣いてたな。

母親の診断は、いずれも当科においてなされたものであり、子どもの問題で受診した際に、母親自身の問題が明らかになったものである。大多数の母親自身に障害についての告知を行ったが、自分自身の対人関係のあり方や社会的な能力に対して不全感をすでに覚えていた方が多く、受容は良好であった。この約八割に子ども虐待が認められたが、母子へ行こう治療によってその大半に改善が認められたのである。 p.153

彼が暴れ出すと夫のイメージと重なってしまい、K君の気持ちを受け止める気にはならないという。母親は明らかにうつ病の状態であった。 p.155

被虐待児が発達障害児のような行動をとることについて
解離とは、脳が器質的な傷を受けたわけではないのに、心身の統一が崩れ、記憶や体験がバラバラになる現象の総称である。心的外傷体験(トラウマ)のみで生じるものではないが、トラウマによって起きる精神症状のうちもっとも頻度が高いものの一つなので、トラウマ臨床とは不可分の関係にある。 p.157

しかし多動の生じ方は、ADHD様症状ではムラが目立ち、非常にハイテンションの時と、不機嫌にふさぎ込む状態とが交代で見られることが多い。特に夕方からハイテンションとなり、寝る前までそれが続く。これはおそらく、午前中は抑うつが強いからではないかと考えられる。それに比べて一般的なADHDは眠くなると多動がひどくなるが、一日の多動にそれほど大きな変化はない。対人関係のあり方は、ADHDは単純で率直であるが、ADHD様症状は逆説的で複雑である。そして何よりも、問題に直面した時に、解離反応が起きて朦朧としてしまったり記憶が飛んだりすることは、純然たるADHDには見られない症状であり、ADHD様症状の大きな特徴である。 p.160

幼児にとっていちばん必要なものは、障害の有無に関わりなく安心の提供である。子どもが最も安心して過ごせる家庭環境とは何だろう。これは逆の場合、つまり安心して過ごせない環境が何かを考えてみれば答えは容易に得られる。言うまでもなく虐待環境である。
これは直接的な虐待に限らない。夫婦の深刻な喧嘩が繰り返される状態は、安心できる環境の対極にあり、心理的虐待の一種である。実は親子関係の安定以前に、夫婦関係が安定していることがもっとも大きな要因となるのである。多人数のサンプルによる調査からは、親子関係よりも夫婦関係の方が子どもの心の問題に大きな影響を与えることが示されている。また両親は完璧な親である必要は全くない。小児科医であり高名な精神分析家でもあったウィニコットは、良い母親とはgood enough(ほどほどに良い)であることという有名な言葉を残している。子育てのような双方向の関わりの場合、完璧であることは、逆にしばしば重大な問題となることすらあるということは、小児科医であれば誰でも周知のことではないだろうか。 p.185

コミュニケーションの課題としては、発語よりも、まずは言葉の理解が課題となる。その前提となるのは模倣の能力である。園での指遊びが出来る、あるいはリズム体操の模倣ができるなどといった能力は表象機能に直結している。特に後模倣と呼ばれる、その場で即時に模倣するのではなく時間が経ってから思い出しながらの模倣が可能であれば、イメージを作る能力が備わった指標となる。さらに、たとえば園のスモックを見たら登園、買い物袋を見れば買い物の外出、タオルを見れば入浴と分かって次の行動ができるなど、状況判断ができることもまた、コミュニケーション能力の基盤となる。このように、遊びや身辺の課題は全て、表象機能の前提となる課題であり、それであるからこそ、コミュニケーションの課題よりも優先順位としては上位に位置するのである。
一般的に話し始めるためには、理解語彙は三十語から五十語は必要である。単語が出始めてしばらくすると、オウム返しが見られるようになる。発達障害の臨床においては、オウム返しが出現すれば、それからコミュニケーション可能な発語まではあと一歩であり、一安心ということになる。さらに発語語彙が100を越えたあたりで二語文が登場するようになり、言葉は急速な発達を見せるようになる。 p.187

おおむね著者の意見に同意だが、発達障害の親に虐待されて生きることに困難を抱えている子どもを発達障害児呼ばわりするのはやめて欲しい。
仕事に誠実に取り組んできた証拠なのだろうが、この人は発達障害の側に立ちすぎている。この人の立場を思うと大正解だけどね。

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2015年04月06日

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発達障害に関わらない人にも学べる内容が多くあり、一読の価値を感じた。
またもちろん、これから子育てをする人、子育ち中の方にも有用な内容であると感じる。

本書は、発達障害の子どもが、障害の度合いが軽くなるにはどういった条件が考えられるのかについて書かれているが、その内容は一般の人が自分をどのようにセルフコーチングしていくかにとても参考になる内容であると思った。

また、幸せな人生とは何かということも考えさせられた。

発達障害に関わらない人にも是非読んで欲しい。

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2013年09月04日

Posted by ブクログ

明解なフレームワークを得るまではいたらず。しかし概要はつかめた感じ。

「躾と思ってやった」
虐待で子供を殺めてしまった親のかなりの割合がこれを言う。もちろん子育てにおいて躾が要らないとかそういう話ではないが、どうしても適応が難しい子供もいる事。そういうのが明らかになってきたというのがこの発達障害というもののようだ。そしてしかるべき対応は、もちろん本人のためでもあるし、その家族、大きくは社会のためでもある。

本著終盤に出てくる市井三郎氏の一言は、まさにこの点をさしている。

「歴史の進歩とは、自らに責任のない問題で苦痛を受ける割合が減ることによって実現される」

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2013年07月09日

Posted by ブクログ

発達障害のこどもを持つ親って大変そう!というイメージしかなかったけれど、いろいろな対処法があることがわかった。早期の対応によって、かなり社会に適応できるようになる。
我が子が発達障害かもしれないという不安を抱える親は、適切な対応をするため、また、無駄な不安を抱えないために是非読んでみるべき本だと思う

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2013年07月07日

Posted by ブクログ

情報量が多くまとまっていない印象を受けるが,著者の主張ははっきりしている.それは発達障害児にどのような教育を受けさせるべきかということであり,その理由,親や学校関係者になかなか理解されない現状,実施(未実施)状況などについて記してある.
個別事例を交えつつ語る著者の言葉には説得力があり,それにもまして,現状を改善したいという思いが強く感じられる.

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2013年05月13日

Posted by ブクログ

この新書にしても、本当に必要とされているところに正しい情報を届けるには読んでもらうしかないんだよなー

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2013年01月29日

Posted by ブクログ

発達障害の外観がわかった。

発達障害は、自らの責任で受けたものではないので、きちんとサポートするシステムこそ歴史の進歩である。

人が「できない」と心の中で責めてしまう時もあったので、「できない」ことを責めずに人を個人として捉えようと思った。

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2020年02月27日

Posted by ブクログ

発達障害に対して自分が持っていた偏見がずいぶん解けたと思う。もし自分の子どもが発達障害だったら、悲観せず丁寧に関わり、適切に支援を行えば将来、自活できる可能性が高いと知ることができた。偏見や感情的な対応がその子の将来の自立を妨げることになるとわかった。

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2020年02月21日

Posted by ブクログ

子どもだけではなく、大人であっても、成功体験というのは大事なもので、失敗から学ぶとも言うけども、結局のところ成功を目指しているわけで、成功なくしては何が失敗かも分からないというか。成功ばかりで挫折を知らないのも問題だろうけど、発達障害を持つような子であれば、そんな心配もないだろう。子どもにとって一番実力を発揮できる環境を見つけられたら良いんだろうけども。
少々学術的なというか、論文的なところが多くて、良くも悪くも説得力はあるけども、少々読み通すのにしんどいところもあり。でも参考になるところもいっぱいあった。

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2015年06月17日

Posted by ブクログ

発達障害についての知識が必要になったため、最初に読んでみた。一部専門性が高い箇所がある。何回も読み返すことで、基礎は押さえられる。

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2012年09月18日

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