あらすじ
似ているが……ここは私の世界じゃない――
作品初出は、コロナ禍で行動制限中の日経新聞夕刊
主人公が迷い込んだ異世界が現実を先取り?
ある朝、通勤と反対方向の電車に、魔が差して乗ってしまった。山の中をさまよい、戻ってくると、誰もマスクをしていない!
今朝の会議はユーツ。こんな生活、いつまで続けるんだ……ぐだぐだ考えているうちに出てしまった下り電車は「急行」。次々と通過していく駅を見ながら40歳の野崎修作は「ろくでもない毎日からの脱出」とサボりを決める。スーツで山に登り、「日常」に戻ると……ん? 何かおかしい、街も家も会社も。どこかで聞いたような疫病が世界を分断していた。新宗教の持つ票があらゆる選挙を左右するらしい。「正義」に縛られた人たちはネット上で……ここは私のいるべき場所じゃない。私の世界へ帰るのだ。
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Posted by ブクログ
パラレルワールドものは個人的に大好きなので、どういう原理で時空を移動したのか気になりながら読み進めていました。
コロナがなかった世界だけなら良かったけど、自分の常識が通じなかったりして、あの世界には行きたくないかな。
ハッピーエンドなのかは分からないけど、頑張れ野崎。
世にも奇妙な物語とかで映像化したら面白そうです。
Posted by ブクログ
読書備忘録743号。
★★★★。
荻原さんの作品は、心に染み渡る作品が多い。
この作品は面白かったけど、個人的にはめっちゃ苦手分野。笑
私は、戻れる場所が普遍的に存在するということが、絶対的な安心感として必要とする性格。
なので、なんか知らんけど家に帰れないという嫌な夢を小さいころから良く見る。ほんとに嫌だった。笑
この作品。最初に言ってしまうと(ネタバレ)多次元世界のお話。
主人公はふとした事から、ちょっとだけ違う世界に紛れ込んでしまう。そしてもとの世界に戻るために頑張るのだが、多次元世界は無数にある。だから戻れない・・・。めちゃくちゃ嫌だ!エンディングが嫌だ!主人公が元の世界に戻れました!というエンディングにして欲しかった!
主人公はどこにでもいるうだつの上がらないサラリーマン、帝通プランニングという広告代理店に勤める野崎修作。40歳。
サラリーマンなら100人中100人が経験する「朝会社に行きたくない。下り電車に乗ってしまいたい症候群」に罹った。笑
そして、下り電車に乗ってしまった。笑 ただ、次の駅で降りて上り電車に乗るつもりだった。しかし乗った電車は急行。あれよあれよという間に終点の駅に。
もう会社に間に合わない。
開き直って、近くに見えたふたコブ山に登ってみようと、駅前にあった雑貨屋のような店で腰の曲がったおばあさんからサンドイッチとビールを買って登り始める。
そして、異世界へ・・・。
そこには、妻の美冬はいた。
コロナが流行っていなかった。
その代わりMCDウィルスとかいうウィルスの影響で牛が絶滅しており、牛丼が無かった。マトン丼があった。
そしてこの世界で野崎はヒット企画を連発していた出来るサラリーマンだった。
すぐに戻ろうかと思ったが、妻は子宮筋腫に罹っており、手術をする。夫としてそれを見届けなくて良いのか?
しかし、亡くなった親が生きている。やはりこの世界は自分の世界ではない。
野崎は再び下り電車に乗り、終着駅に。
そして再び雑貨屋のようなよろず屋に。再びおばあさんからサンドイッチを買って山に。
「良いところですね」と自分。おばあさんは「短いあいだしか居なかったのになにがわかる」。「えっ?」
もやもやを抱えつつ山に。そして下る。そこは更に全然違う世界だった・・・。
妻は美冬ではなく、会社の同僚でちょっとだけつき合ったことのあった女性。ちょっと抜けた部下の多田が専務になっていた。玉の輿?
そして思考警察なる、マスク警察の発展版みたいなとんでも警察がネットに蔓延っていた。
そして再び下り電車に。
次は日本が内戦状態の世界。
そして、多次元世界の交差ポイントに驚くべき事実が明かされる。そしてあるロジックに従い、いよいよ無数にある世界から元の世界へ戻ろうとする修作!
やった!戻れた!
そこには慣れ親しんだ世界が広がっていた!そして新聞には平成33年という日付が・・・。
が~ん。ハッピーエンドが良かった。涙
しかし流石は荻原さん。めちゃくちゃユーモアにあふれた文体は健在。楽しめました。
Posted by ブクログ
初出は日経新聞紙上での連載であり、単行本も日本経済新聞出版から刊行された、荻原浩さんの新刊である。カバーには、マスクを着用した会社員が描かれている。漠然と、コロナ禍がテーマなのかと想像し、読み始めたのだが…何故、日経???
平日の朝、会社に行きたくないと思うことは、誰でもあるだろう。それでも、大多数の勤め人は結局は会社に向かうのだが、40歳の主人公・野崎は、会社と逆方向の電車に乗ってしまう。そして山中を彷徨い、街に戻ってみると…。
コロナ禍のはずが、誰もマスクなど着けていない。むしろ気味悪がられる野崎。そして彼も徐々に気づく。ここは彼が元いた世界ではないことを。一言で言ってしまえば、本作はパラレル・ワールドもの。設定として決して目新しくはない。
マスク非着用以外にも、現実世界との違いに野崎は戸惑い、読者は苦笑する。笑えないネタもあるものの、基本的には荻原浩流のユーモア路線である。次第に適応し、興味津々の野崎だったが、晴れ舞台(?)を見届けることなく、脱出を図る…。
…が、2番目の異世界では、1番目より重い展開が待っていた。5文字と4文字のあるキーワード。現実社会も似たようなものだが。何より、野崎の家庭状況が辛い。こんな愛のない窮屈な家庭でも、野崎はある理由で脱出を躊躇する。気持ちはわかる。
それでも2度目の脱出を決意した野崎は、ようやく気づく。どこが異世界への扉なのか。そりゃ読者も気づかないよなあ。意図せず踏み入った3番目の異世界は、もはやコロナ禍は関係ねえし。似たような設定を読んだことがあるような。
コロナ禍を取り入れたことは本質ではなく、基本は荻原さんらしいエンタメ作品だ。感情が過剰に揺さぶられることもなく、誰にでも読みやすい。自分が荻原作品に求めるものを具現化したような作品だった。と、ほっとしていたのだが…。
最後の最後に、目が点になった。へ??? これはつまり、そういうこと??? うーむ、荻原浩をなめていたかもしれない。どうしようもないこの世界だが、自分はしがみつくしかない。そして今日も、会社に向かうのであった。
Posted by ブクログ
異世界(パラレルワールド)に行くという王道のストーリーでした。主人公のキャラクターが憎めない感じで好きでした。ストーリー性としては、意外性が乏しかった為、☆3にしました。
Posted by ブクログ
出社するときに魔が差して、先に来た反対方向行の列車に乗ったのが事の始まりだった。
似ているがどこか違う・・・
牛丼屋だったはずの店がアイスクリームの店に変わっているのはともかく、昨日までは皆がマスクをしていたはずなのに、誰もマスクをしていない。
ここは自分のいた世界ではない!
彼は記憶を手繰って、元の世界の戻るべくそこに来た道筋を逆にたどるが、次の世界も元に戻るどころか、二度目の世界でさえ無かった。
繰り返すたびに違う世界が現れる。
それは自分の選択の結果なのか。
Posted by ブクログ
コロナ下でのパラレルワールド物語。
パラレルワールドが社会風刺的になっていながらもユーモアにあふれているのは作者らしいです。
ラストがちょっと意地悪なところも完全なハッピーエンドより納得です。
Posted by ブクログ
感想
最初の印象は、見知らぬ森を抜けて自分の常識が全く通用しない世界に飛ぶって千と千尋じゃん!と思った。
登場人物は変わらないのに、立場やキャラが変わっていたり、今までの自分の常識が通じない世界に掘り込まれると恐ろしいだろう。
何気ない日常こそが一番良いのかもしれない。
あらすじ
四十歳になるサラリーマンの野崎はある朝、会社をサボってやろうと、電車に乗って見知らぬ駅まで出かける。そこで野原のようなところで過ごして帰ると、自分の常識が通じない異世界へと辿り着く。
最初の世界では、マスクをしていると奇異な目で見られ、牛はほとんどこの世からなくなり、牛頭を信仰する宗教が幅を利かせていた。妻もその熱心な信者であり、巫女に選ばれていた。スカイツリーは牛頭大菩薩に代わっていた。この世界を抜け出すべく、再び電車に乗った野崎は次の異世界へと辿り着く。
妻が別の女性になっていること、コロナが現世より猛威を振るっていること、部下だった多田が専務になっていたこと、ルッキズムやLGBTにかなりシビアで思想警察が蔓延る世の中になっていたことなど。
野崎は自分の世界へ帰ることを求めて時空を渡り歩く。