【感想・ネタバレ】国商 最後のフィクサー葛西敬之のレビュー

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森功氏、安定のルポルタージュ。
国鉄民営化を成し遂げた伝説的経営者、葛西敬之氏の評伝。

国鉄と言えば最悪の赤字体質と頑強で極左組織と繋がった労働組合の印象が強い。実際本書の前半は新幹線建設をきっかけに雪だるま式に借金が増えた過程と、盗聴スパイなんでもありの壮絶な組合の抵抗に紙幅が割かれる。

この経験から葛西が警察官僚を天下りで積極的に迎え入れ、そこから公安とのつながり強め、その保守的な政治思想から安倍政権との距離が縮まり、ついには外部の諮問委員でありながらNHKの人事にまで介入するフィクサーぶりへと話が広がっていく。

天下国家を語ること、マスコミの敵視、アジアの大国としてのプライド(リニアへの執着)。ある意味無敵の「昭和エリート」。
しかし決して体制側だけとは言えない。なにしろあの国鉄を民営化まで引っ張って行ったのだから。
著者も単なる権力の亡者でもなく、清廉な改革派経営者でもない、この独特の人物の全体像把握には相当苦労した様子が伝わる。

悲願のリニアの完成を待たずに本人は世を去る。そして安倍元首相が亡くなったのはその数ヶ月後。
あまりにも「ひとつの時代の終わり」感が強すぎる偶然の連鎖なのである。

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2024年04月01日

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「国商」葛西敬之を余すところなく描く。流石森功の面目躍如の一冊。上っ面を知っているつもりでいたが、知らなかったことばかりで滅茶苦茶面白かった。西岡研介氏の労作「マングローブ テロリストに乗っ取られたJR東日本の真実」で松崎明を知るともっと読書に深みが出るはず。

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2023年10月24日

購入済み

日本の病みというべきか

人と人を繋げる。そこには深い自らの理念がある。
それは時として社会に巣食う病巣となることも。
とても興味深い

#シュール

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2023年04月23日

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JR東海の葛西氏の入社から政治介入までの歴史
直接インタビューしていないのでどこまで事実かわからないがズブズブ

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2023年02月12日

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「国士」が妥当 葛西氏は「商」の感覚はない ひたすら日本国を想い捧げた。
どうして「国商」の署名にしたのか不思議。折角の価値を貶める。
森功氏の取材は見事。どうして聞き出してくるのか? しかもキーとなる情報を。
日本のリーダーは回顧録を残さないので、こうした取材の価値が残る。
1.国鉄の分割・民営化 日本国の在り方を変えた 中曽根総理の偉業
彼こそ国葬に相応しい 安倍総理の歴史的レガシーは何か?
2.3.4.5.

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2022年12月27日

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葛西敬之の人生の一部を知ることができるだけでなく、今目の前に起きているリニア静岡問題の片鱗にも触れることができる。一端の企業人ではなく国さえも動かしていく。それが国商なのだろう。

国鉄分割民営化、第2次安倍内閣、官僚やNHK人事などの背景を知りたい人におすすめ

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2024年01月07日

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日本の産業史を振り返るときに国鉄という巨大組織の民営化はその功罪も含めて語られる必要のある一大トピックであるが、その国鉄改革を率いた3人組の一人であり、JR東海の総帥、そして安倍晋三を支えた政界のフィクサーとしての顔を持ち合わせた葛西敬之の実像に迫ったルポルタージュ。

国鉄からJRへの民営化、即ち国鉄改革の本質とは極論すれば労働組合をいかに権謀術数を用いて弱体化させるかという闘争であった、というのが本件について記した優れた幾つかのルポルタージュから私が学んだ点である。葛西敬之がJR民営化以降にどのように政治権力の中枢に影響力を持つように至ったかというメカニズムにおいて、おそらくこの闘争での勝利は原体験として大きな意味を持ち、それこそが彼の主要な行動原理の一つであったというのは言い過ぎではないはずである。

私自身は葛西敬之という人間の政治思想には全く賛同するものではないが、そうした権力闘争の経験がどのように一人の人間に影響を与えるのか、というドキュメントとして、本書は非常に面白い読み物であった。

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2023年10月08日

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内容は面白かったけど、読み物としてはもう少しうまく書いて欲しかった。唐突だったり、くどかったりで読みにくい箇所がありました

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2023年09月01日

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葛西さんの著書に今まで惹き付けられたのは、やはり最後のフィクサーとあるように私利私欲ではなく、国士として日本の将来を追求したからなんですね。安倍さんとの関係、その他 記者である著者の目から見た裏の政治の世界が興味深い。

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2023年08月31日

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ネタバレ

葛西には、良くも悪くも臆面のなさやエリート意識を感じさせられる。膨大な現業職員と一握りのエリートという国鉄育ちゆえだろうか。また、そこで労働組合と戦い、そして勝利したということも、ますます助長したのだろうか

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2023年08月14日

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国商という言葉の持つおどろおどろしさは感じない。ほんとうにそんな力あるかなぁ?思ってしまった。スガさんはリアル。

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2023年07月21日

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JR東海の葛西敬之。安倍晋三首相とも懇意で、陰に陽に政権を支えていた。国士、政商ではなく国商、最後のフィクサーの生涯を追う。

国鉄改革から労組問題、NHK改革など政治の裏面を動かす人々。警察官僚とJRのつながり、労働運動等大変興味深い内容。

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2023年04月23日

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政・官・財で、どういう風に人脈が形成され、互いに同利用しあっているかについて、著者および取材チームは、かなり多くの当事者に会って取材をしているように見える。
安倍・菅政権下での、凄まじいまでのNHK攻撃・介入のあたりは、圧力を受けたNHK内部の人たちからの情報提供が豊富にあったようで、臨場感にあふれている。
国鉄末期から民営化に至るところで、官公労働法をめぐる司法への猛烈な圧力に全く触れていないところは物足りない。
全方向からの官公労働組合潰しに、本来独立した存在であるはずの最高裁まで引きずり込んでリベラル派を次々と追い出したのを書かなかったのは残念。
終盤に当時の運輸省の動きを次官であった黒野匡彦氏から多くを引き出している。
若い頃から次官を約束された大物官僚で、多分嘘は言っていないが、知るところをすねて話しているとも思えない。
何もかもが、ここで描かれたように葛西敬之の影響下で進んだとは思わないが、安倍・菅という方向を間違えて国士を装った政治家にすり寄って立身出世を果たしていく愚かな官僚物語でもある。

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2023年04月13日

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葛西敬之という元JR東海会長の話。
"国士""国商"と称された男。
国益を第一にかんがえる愛国者。

そのビジョンに基づき、戦後復興に寄与した国鉄の官僚として歩みを進めてきた。

その後、国労、鉄労などといった労働組合が権力振い危機感を感じた葛西ら3人(分社化された後のJR東、西、東海の代表)が中心となり分割民営化を推しはかった。
じつは労組問題はいまでもあるのだ。

2005.4に起きたJR西日本福知山脱線事故もそれが絡んでいる。その日は革マル派労組の運転手と会社寄り添い同盟系労組の車掌といった不幸な組み合わせであった。
運転士が駅の停車ミスを犯し、車掌に無線交信で嘘の報告をして欲しいと頼んだ。が、断られて本人が運転中にパニックになり、制限速度70キロのカーブを116キロのスピードで突入してあの事故が起きたわけである。国鉄改革の皮肉であり、運転士が組合に守られていた国鉄時代なら絶対に起こらなかった、民営化後の組合間の諍いがうんだ事故であるとの見方もある。いまでは葛西の判断がただしかったのか再検証されている。

葛西は国益を考え、資源にとぼしい日本の戦略として『日本の技術を輸出する』夢をかかげ事業運営に勤しんだ。

その過程で、警察官僚や政界の恩師である瀬島龍三らの伝手で自民党保守派安倍晋三と親交を深めていく。
葛西の葬儀の弔辞は、安倍元首相が読んだのである。
その数すぐ2022.7.8に安倍首相は凶弾にたおれた。
話は逸れるが、奇しくも私個人的にも娘の2歳の誕生日、友人の美容室オープン日とかさなり、速報に耳を疑ったことをいまでも鮮明に覚えている。

話を戻す。
葛西は国益を人一倍考えていた。
終盤はリニア計画をすすめていたが、その実現のため元安倍首相のバックにつき官邸人事にも影響を及ぼしていた。ビジョンに対する熱意を感じずにはいられない。
しかし、過去の国鉄時代の経験から国に融資を受けてリニア計画を進めることには反対していた。
とはいえ、自分の死期を感じ3兆円の財政投融資を受ける決断をした。

この本をとおして、その判断がただしいかどうかより、決断してものごとを前に進めていくことの重要性を感じた。どの時間軸でその事象をとらえるかによって、またどの視点からみるかによって正解、不正解は変わってくるし、その答えも主観でしかないのではと私は思った。

ただし、それを変わらない、動かないための理由にするのではなく、ビジョンをもって挑戦し続けていくことが最重要。そんなメンタリティを戦前生まれの葛西氏のような人物たちに感じる。(最近バブルの王様、森下安道-葛西の8つ歳上-について書を読んだ際も同様に感じた)

最後に著者である森功氏のテーマ選定、調査力には脱帽である。余談ではあるがおなじ福岡県民として誇りである。
日本で起こった事象も、合理的判断のみに基づいて起こったものではなく、さまざまな変数が絡んで起こったことであると、史実の文脈を感じることができた1冊だった。

さて、私もこれからの日本について真剣に向き合って生きていきたい。
この本では、権力、天下りといったことも出ていたが、今現状ではそれらが、実質賃金低下、物価高騰といったスタグフレーションが起こしている要因ではなかろうか。

そこにメスをいれ、既得権益を守るだけの規制を緩和し、生産性をあげ、あらたな産業をうみだし新陳代謝を活性化させていく。

そうしないと、かつての葛西氏が考えた『国益』を享受できないだろう。未来のニッポン。子孫のためによい方向に軌道修正していきたい。

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2023年03月10日

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立ちいかなくなっている北海道と四国の会社。福知山線の脱線事故。革マル系組合が歪ませた経営。国鉄分割民営化は成功だったとはいえない。国労が悪者になったがそもそもの赤字の元凶は政治が押し付けた無理な新幹線整備。抱かされていた幻想…水枯れ、残土処理、需要減...。立ち止まり再考すべきリニア計画。寧ろ後押しした安倍政権。その政権は葛西氏が影で操っていたといわれる。2人はもうこの世にはいない。その死がきっかけに何かが変わるのだったらそれはそれで虚しい。主権在民。生きていても変えるべきものは民の力で変わるべきである。

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2023年10月15日

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国鉄民営化3人組の一人で、国鉄民営化後はJR東海の経営の舵取りをしていた葛西敬之氏の評伝。政治にどっぷりというほどでもなく、国の方向性、行末を真剣に考えていたという側面もあって国商という表現が相応しいというのが筆者の評価。新幹線の車内に置いてあったwedgeに偏りがあったのはこの人の影響かなと思ったり。労組との闘いのくだりはもう少し詳しく知りたいので別の本を探してみたい。

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2023年09月14日

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「国鉄3人組」の1人として国鉄の分割民営化に大きな役割を果たし、JR東海の社長や会長を務めつつ、安倍元総理や官邸官僚との深い関係を背景に、「最後のフィクサー」と呼ばれるほど政界や政策に影響力を及ぼしてきたとされる「国商」としての葛西敬之氏の素顔に迫ったノンフィクション。
葛西敬之氏については、安倍元総理とつながりがあるということくらいは認識していたが、杉田和博氏等の官僚とも密接な関係を持ち、NHK会長人事等に介入していた可能性があるといったことは本書で初めて知った。また、労働組合の抗争とも絡んだ国鉄の分割民営化を巡る経緯も詳しく述べられていて興味深かった。
葛西氏が単なる「政商」ではなく、主観的な国益追及により政治に介入しようとしていたという点で「国商」というべき存在だというのは言い得て妙だと思ったが、本書を通読しても「国商」、「最後のフィクサー」としての葛西氏の人物像が明確に浮かび上がってきたかといえば、そうでもなかった。
リニア中央新幹線やNHKなどの特定分野以外に「最後のフィクサー」といえるほど政策形成に関わっていたようには思えなかったし、官邸人事やNHK会長人事への介入なども伝聞に基づく推定の部分が多いように感じた。
そして、そもそもどういう意図で官邸人事等に介入しようとしたのか、また、もともと関心が薄かったリニア中央新幹線に後年心血を注ぐようになったのはなぜなのかなど、本人の心持ちがあまり伝わってこなかった。安倍元総理や菅元総理、岸田現総理などが、なぜ葛西氏から影響を受けることになったのか(あるいは、受けざるを得なかったのか)という点ももう一つよくわからなかった。
鬼籍に入った本人に取材できていないといったハンディはあったとは思うが、より一層核心に迫ってほしかったと思う。

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2023年07月21日

Posted by ブクログ

政治の本を読んだことなかったので新鮮だった。
国鉄、jrと政治官邸の繋がりの強さがここまでとは知らなかったので驚いた。
最近のJR東海の変わり様といい、今後リニアも含めて大きく変わっていきそうだと思った。

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2023年06月18日

Posted by ブクログ

ネタバレ

JR東海の社長、会長として、名前は知っていたが、まさかここまで政治に絡んでいたとは。。

政財界のフィクサー、国士、国商というキーワードが一番似合う、最後の大物だったのかも知れない。

菅さんから安倍さんへの弔辞は、安倍さんから葛西さんへの弔辞だったというのは、合点がいった。

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2023年05月13日

Posted by ブクログ

政治絡みの部分は面白くスムーズに読み進められたが国鉄~JRでの労組関係は知識が乏しいうえ似た名称と聞きなれない人名の為か頭に入らなく眠気に誘われた
読む人毎に知識と興味がある部分が違えばまたこの本への評価のグラデーションも変わるだろう
この勢いで国鉄労組物を読みたい気もするが、知識不足ゆえついていけない気しかしないのが現実

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2023年01月19日

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