あらすじ
愛が消えるとき、歌が生まれた。
歌手、俳優、マジシャン、そして作家。多彩な才能を持つ荒木一郎が78歳にして四半世紀ぶりに送り出したのは、自らの代表曲「空に星があるように」を冠した大河青春小説である。60年代の映画・テレビ界を舞台に、荒木自身の彷徨する魂が躍動的な筆致で描かれる。
吉永小百合、岩下志麻、十朱幸代、大原麗子・・・同時代を輝いた女優たちとの美しい思い出の数々にはじまり、伝説のジャズバー「ありんこ」での不思議な交遊録、名曲「空に星があるように」誕生の秘密、「日本春歌考」ほか映画出演秘話など逸話が続々と披露される。
――他人を哀れむという感情とか、思い出の一部みたいなものではない。まるで自分が彼女自身を体験しているみたいな、頭や体の中に彼女の感情を痛みとして感じ取っているようだった――本文より
愛が消えるとき、歌が生まれた。
これは荒木一郎の新たなる代表作である。
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Posted by ブクログ
「不良、不良、不良っ、なんだお前は、不良のーっ、このーっ」。テレビ黎明期のNHKドラマ「あじさいの歌」の共演者、十朱幸代の妹役のステージパパにひとこと言ってキレられるエピソード。もうその親父を「カニをつぶしたような顔」と語るところから、荒木一郎ワールド炸裂です。爆笑。子供心に「いとしのマックス」がトラウマのように刻み込まれて、しかも突然なにか事件を起こしたのかテレビでは見れなくなった人、まさに「不良」としてぼんやり覚えていた人。有名女優のドラ息子、青山学院の不良少年、荒木一郎自身による「小説荒木一郎」は、60年代の東京と芸能界のタイムカプセルでした。先日読んだ「小説ユーミン」は荒井由美のクリエーションから生まれた小説でしたが、「小説荒木一郎」は本人の思い出なのか、意図的な創作なのか、とにかくカニ親父的ディテールが次から次へ。著者の脳内発酵としてノンフィクションは半世紀経つと小説になるのかな?と思って細かいエピソード、散りばめられる女優たちの名前、そして当時のテレビ局界隈、映画業界付近、レコード会社、あるいは当時のクライアント宣伝部、電通という業界人の空気感をめちゃくちゃ楽しめました。でも一番、すごいな、と思ったのは彼の創作。俳優であり、でも自分で作曲をし、歌詞を書き、歌い、そして他人のプロデュースもする。バントを作り、会社を作り、なんでも自分でやって行く。著作権の話もビートルズや矢沢永吉の話が有名ですが、アーティストが自分で出版社を設立したのは、日本では彼が初めてなのではないかな?(版権出版社としては50番目と書いてはありますが…)とにかく、はじめに荒木一郎ありき、なのです。
いや、一番スゲェと思ったのはモテっぷり。どんなフェロモンで出るんだ…出てくる女性の名前、覚えきれません。ということで、不良じゃないと、女にモテないと、イノベーターにはなれない?って感想書いてる時点で色気無しですね。