あらすじ
キェルケゴールがいなければ、ウィトゲンシュタインは『哲学探究』を書けなかった!
西洋哲学の地下水脈を探査する、渾身の思想ドラマ!
「実存」とは、不安や孤独、絶望のなかで、主体的に自己のあり方を自由に決断する人間のことだ。その概念の創始者キェルケゴールは、死後五〇年を経て、ハイデガー、ヤスパース、サルトルらに再発見された。しかし、ソクラテスに連なる〈実存哲学〉の真の後継者は、意外なことにウィトゲンシュタインだった――。
哲学者たちの著作や日記から、彼らの人生を丹念にたどり、キェルケゴールの真意がウィトゲンシュタインの哲学に昇華するまでの軌跡を鮮やかに描き出す。理論ではなく、生き方の根幹に関わる哲学がここにある!
【目次】
プロローグ
凡例
キェルケゴール著作年表
第1部 哲学史の中のキェルケゴール
第1章 実存哲学について
第2章 実存哲学とキェルケゴール
第2部 キェルケゴールの〈実存哲学〉
第1章 〈実存哲学〉遠望
第2章 キェルケゴールの〈実存哲学〉
第3章 著作家活動――〈実存哲学〉の具現
第4章 〈実存哲学〉とソクラテス――「誠実さ」の概念
第5章 〈実存哲学〉と実存哲学
第3部 〈実存哲学〉の系譜――キェルケゴールからウィトゲンシュタインへ
第1章 『論理哲学論考』期
第2章 中間期
第3章 『哲学探究』期
第4章 『哲学探究』とキェルケゴール――〈実存哲学〉の系譜
エピローグ
注
あとがき
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
キェルケゴールのイメージが一変した。
彼の著作と生き様が、ウィトゲンシュタインへ決定的な影響を与えたことも興味深い。
ハイデガー、サルトル、ヤスパースのいう実存とは違う〈実存主義〉の系譜。元はソクラテスの産婆術、無知の知だった。
Posted by ブクログ
良き良き。キェルケゴールについての解説も手厚くしてくれてるし、各哲学者における影響も考察してる。ウィトゲンシュタインとの〈実存哲学〉系譜に入るよねっていう主張は奥深い。
後は各哲学者の主張に対する理解が不足してるので、どんどん補強していこうというやる気が湧き上がった。
Posted by ブクログ
ハイデガー、ヤスパース、サルトルといった実存哲学の源として位置づけられることの多いキェルケゴールを、こうした解釈の枠組みから解放し、彼自身が追求した主体的思考とはなんだったのかという問題について考察をおこなうとともに、ウィトゲンシュタインの思想のうちにキェルケゴールの思想が継承されていることを明らかにする試みがなされています。
ハイデガーは、彼自身の存在論という構想のなかで、キェルケゴールの「不安」の概念などを用いて思索をおこないました。しかし著者は、存在論という枠組みはキェルケゴールそのひとの思想とは無縁だと指摘します。同様のことは、おなじく実存哲学というグループにまとめられるサルトルやヤスパースについてもいえます。
キェルケゴールは、みずからの主体的思考のありかたについて、「私の課題はソクラテス的な課題である」と語っていました。それは、「魂をできるだけすぐれたものに」するように人びとを向かわせることが神によってあたえられた使命であり、そうした活動として彼の思想的な営みが理解されなければならないということを意味しています。それゆえ、彼の思想のなかから概念を切り出してきて、みずからの哲学的な思想に利用することは、キェルケゴールの思想を正しく理解することからかけ離れているといわざるをえません。
こうした意味で、キェルケゴールの実存哲学を正しく継承していたのが、意外にもウィトゲンシュタインだったと著者は考えます。ウィトゲンシュタインは、倫理や美といった価値は「語りえないもの」であり、幸福な生を送ることはまさに「語りえないこと」として神によってもたらされていると考えました。しかし、その後彼はみずからの虚栄心に悩まされるようになり、キェルケゴールのいう「絶望」のなかにみずからが置かれていることを自覚します。著者はこうしたウィトゲンシュタインによるキェルケゴールの受容が、『哲学探究』における「理想」のあつかいかたに反映していると論じています。