【感想・ネタバレ】森と山と川でたどるドイツ史のレビュー

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Posted by ブクログ

ネタバレ

ドイツの歴史と国民性は、その自然にあり。

ドイツは、確かにイギリスやイタリアやフランスと違う。そのなんとなく思っていた気持ちに対する、ひとつの考え方を示してくれた本であった。

側にある森と川の積極的な利用。それは自然を愛でるのではなく、利用するもの。しかし、一方で自然の力に対する畏れや崇拝も、神話や妖精、民話や伝承として息づいていた。長く個々に別れてきたドイツの統一に、その自然への愛が危ない形で作用したというのも興味深い。

ロマンティックな自然崇拝、その土地の自然や民話・神話を題材とする音楽。ナチスに愛されたワーグナーを今も受け入れられないという考え方がある。「自然」を尊ぶが故の、行きすぎた潔癖、そして排除。環境大国の萌芽がナチスドイツにも見られたというのは衝撃的だった。アウトバーンがどういう考え方で、いつ建設計画が立てられたのかも知らなかった。

愛国心と結びつく故郷の自然への思い、と考えて思い出したのは、ミュージカル「I am from Austria」である。オーストリアのミュージカルだが、これを見たときの、故郷の自然を愛する者が同胞、ここが生まれて帰る場所という理想の歌い上げは、移民が増えて衝突が見え始めているこの時代で、どうしても座りの悪い気持ちになった経験を思い出した。

ドイツの人々にとって、自然は、大いなる力を信じると同時に、コントロールする対象でもある。その考え方は規則や秩序というドイツのイメージに合っている。これからのドイツはどうなっていくのか、この本は2015年の出版のためか、著者はポジティブにドイツの動きを捉えているが、5年経った今、あまり楽観的には見られないところがある。

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2020年03月21日

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